表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》魔女は秘密を抱えながら弟子と最強タッグを組む  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/63

22 母さんの死とオレのはじまり【レオニダス編】

今年も、七月七日がやってきた。


……で、気づいたんだけど。

俺、つい最近まで知らなかったんだよね。


彦さんと織さんが「夫婦」で、「黄泉界から来た存在」で、

しかも「あの有名な七夕伝説の二人」だったなんて。


マジかよってなるでしょ?


たった一日、デートで仕事サボっただけで――

「一年に一度しか会わせない」とか言い出す織さんの父、天帝。

どんだけ心狭いんだよ。絶対、彦さんに嫉妬しただけだろ。

……いやまあ、知らんけどさ。


絶対アイラ、グッジョブだろう


今年も、二人はニコニコしながら黄泉界に帰っていった。

言われてみれば――確かに、普段あの二人が触れ合ってるとこ、見たことない。

依代の身体だから当然なんだけど……

今日だけは違うんだろうな、って思った瞬間――


……あんなことや、こんなことや……


妄想が暴走して、俺、顔面真っ赤。


ダメだダメだダメだ!

オレ思春期です!!!!!


しかも最近、もっとやばい。


……アイラが、可愛いんですけど。


弟の師匠に恋するとか、絶対ない。ないんだけど!

同じ家に住んでて、同じダンジョンの下で寝てて、

一緒にダンジョン突破を教えてもらって、

料理食べさせてもらって、

何なら最近、優しく頭撫でられたりして――


おかしい。これは絶対おかしい。


この前、つい「アイラって……綺麗だよな」ってギャランに言ったら、あいつ、ゴキブリ見るみたいな目で睨んできた。


いや!事実述べただけだし!!


でも正直、気になる。

……気になりすぎる。


それに最近、もっと気になってることがある。


――アイラが、絶対に、玄関のドアから外に出ないこと。


ドアを開けたら、すぐそこに神殿があるんだ。

かつて「賢者の石」があった場所。


俺、こっそり見に行ったことがある。

中には、でっかい台座があるだけ。

別に変な気配もない。ただ、妙に……懐かしい空気がした。


あの空気、なんだろうな。

オレ、父親は「闇夜神」っていう神様で、母さんは雷獣。

雷獣の母さんは、そりゃもう、乱暴で強くて……でも、ちゃんと俺もギャランも可愛がってくれた。


父親には会ったことない。

どんな姿なのかも知らない。

けど……この妖力の量を考えると、まあ、相当ヤバい存在なんだろうってことはわかる。


もしかして――あの神殿の空気が懐かしく感じたのは、父親が神のせいなのかもしれない。


……母さん。


あの日のこと、今も忘れられない。


バーベラが咲き始めてから、灯霞の妖たちは次々倒れた。

俺と母さんは毎日走り回ってた。


妖力を燃やして、

雷を落として、

バーベラを切り落として……

なのに、やればやるほど、体がしんどくなっていった。


あの時は知らなかった。

俺たちの妖力が、あのバーベラに“吸われてる”なんて。


しかも、それだけじゃない。


――あの日。


家に帰ったら、母さんが血を吐いて倒れてた。


息をしてなかった。


振り返ろうとした瞬間、背後に――視線。


誰かがいた。

黒い、深い、穴みたいな――“目”。


でも……そのまま俺も、意識が途切れた。


あれは――父さんなのか?

それとも、別の何者か。


母さんは、どうして別れなかったんだろう。

違う女との間にできたギャランのことも、ちゃんと育ててくれた。

あんなに優しくて、強くて……誇り高い人だったのに。


わからない。

わからないことだらけだ。


でも、ひとつだけ確かなのは――


「オレは……いつか全部、知りたい」


そのためにも、もっと強くならなきゃ。


……そんなことを、窓の外を見ながら考えていたときだった。


不意に、背中にふわりとやわらかい気配。


「……レオ」


肩越しに、優しい声。


振り返れば、そこに――

いつもの、けれど、どこかほんの少しだけ柔らかい表情のアイラがいた。


「なんか悩んでるの?ちゃんと、ごはん食べなさい」


そう言って、笑う。


その笑顔があんまり優しくて――

胸の奥が、きゅっと鳴った。


「あ、ああ……わかってるって」


視線をそらして、慌てて立ち上がる。


……なんだこれ。

心臓、バカみたいに速い。


さっきまで、母さんのこととか、バーベラのこととか、いろいろ考えてたのに。


なのに今はただ――

この魔女の笑顔で頭がいっぱいになってる






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ