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エピソード_34

「でも、おかしいわ。」

ヴェロニカは鋭い視線をエドワードに向けた。

「私の最初の質問に答えなさいよ。あのお金はどこから出ているというの?」

エドワードは顔を引きつらせ、視線を逸らした。唇が震え、汗が額を伝う。


「それはレヴィです。……あの女には後ろ盾がいるんです。」

「後ろ盾ですって…?」

アイリーンは眉をひそめた。

レヴィに後ろ盾?そんな話は一度も聞いたことがない。

「俺は…あの女が部屋で誰かと話しているのを聞きました。」

エドワードは目を伏せ、言葉を選ぶように口を開いた。

「計画がどうとか…何かを企んでいるようでした。」

その瞬間、ヴェロニカが壮絶な笑みを浮かべたのを、アイリーンは見た。

唇の端が冷たく吊り上がり、目には鋭い光が宿っている。


「その相手は?」

エドワードは言葉を詰まらせた。目を泳がせ、口をパクパクと開閉する。

「相手までは…その…」

それを聞くと、ヴェロニカの目の輝きが消えた。

一気に興味をなくしてしまったようだった。

「使えない男だわ。」

ヴェロニカは肩をすくめ、吐き捨てるように言った。

「じゃあ、裁判所へ突き出そうかしら。」

その言葉にエドワードの顔が青ざめる。

ヴェロニカは冷笑を浮かべ、ルチアはじっと彼を見据えていた。

「そうですね。私の店で騒いだ件も罰して欲しいですし。」

ルチアも冷たい声で同意する。

「待ってくれ!」

エドワードは地面に頭を擦りつけるようにして、必死に叫んだ。

「何でもする!だから今回の件は…!」

「言ったわね?」

その言葉を聞いて、ヴェロニカが一歩、エドワードに近づいた。

彼女のヒールが床を打つ音が、部屋の静寂を切り裂く。


「何でもするのなら、あなた、私とアイリーンの犬になりなさいな。」

「!?」

エドワードは顔を上げ、驚愕の表情を浮かべた。

ヴェロニカは目を細めて笑った。

「あなたには情報を集めてもらうわ。あの屋敷で起こっていることを、私たちに報告しなさい。」

ヴェロニカは持っている扇をエドワードに突きつける。

「そして、レヴィとかいう侍女の後ろ盾も探りなさい。どこの誰で、何者なのか。その侍女とはどんな関係なのか。」

それを聞いたエドワードは唇を震わせ、目を見開いた。

「そんなこと…。」

「できないなんて言わせないわよ。」

ヴェロニカの声が、低く響いた。

「アイリーンから突き出されたくなかったら、言う事を聞きなさい。」

エドワードは押し黙った。震える唇を噛み締め、悔しげに目を伏せる。

反論の余地はなかった。

「そもそも、そんな侍女に加担するよりいいんじゃない?いつかはバレることよ。」

ヴェロニカはそう告げると、扇を広げて彼を見下ろした。

エドワードは、逃げ場のない檻の中に閉じ込められた獣のように、ただ震えていた。


「さて、お疲れ様。今日は疲れたわね。」

馬車を待つ途中で、ヴェロニカはアイリーンに声をかけた。

「ヴェロニカ様もお疲れ様でした。」

ヴェロニカはどこか誇らしげにアイリーンを見つめた。


「アイリーン、ありがとう。あなたは私の幸福の女神よ。」

言葉の意味が分からず、アイリーンは首を傾げた。

ヴェロニカの目が鋭く光る。

「やっとあの男の尻尾をつかめそうだわ。」

誰にも聞こえないほど小さな声で、ヴェロニカは呟く。


「首を洗って待っているのね、バーデミアス。」

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