表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/61

エピソード_23

「まぁ!とっても似合っているわ!」

「本当ですか?」

アイリーンは舞踏会用のドレスを選びにきていた。

今日はルチアも一緒だ。

ヴェロニカは次々とドレスを選び、アイリーンに着せ替えを始める。

「まだまだよ!次はこっち!」

アイリーンは少し戸惑ったが、久しぶりにおしゃれをする機会に、次第に気持ちが浮き立っていった。

試着室に入り、渡されたドレスに袖を通す。

鏡に映った自分を見て、アイリーンは思わず息をのんだ。

「……こんなに素敵なドレス、久しぶり…。」

アイリーンが試着室のカーテンを開けると、ルチアが目を輝かせた。

「いいですね、可愛らしい!」

「うーん、悪くはないけれど、もう少し華やかでもいいかしら?」

そんな調子で何着も試着を繰り返し、アイリーンもいつの間にかドレス選びに夢中になっていた。


「いいですね、アイリーン様…。本当に可愛らしくて……。」

アイリーンが試着室から出てくると、ルチアは思わずため息をついた。

ルチアの視線の先には、淡いピンクのドレスを身にまとったアイリーンの姿がある。

ふんわりとしたスカートの裾が揺れ、繊細なレースが彼女の華奢な体を柔らかく包み込んでいた。

まるで絵本の中のお姫様のようだった。

「えっ……?」

言葉の意図が分からず、アイリーンは驚いてルチアを見つめた。

「…可愛らしいものが似合う方が羨ましいです。私は小さな頃から、可愛らしい服を着ても、どこか違和感があって…。」

ルチアは苦笑しながらそう言った。アイリーンはそれを聞いて眉を顰める。

「そんな……ルチアさんこそ、スタイルが良くて、何を着てもかっこいいし、美しいわ!」

アイリーンは心からそう思っていた。

ルチアの長い足、すらりとした姿勢、どんな装いでも映える洗練された雰囲気——どれも自分にはないものだった。

「それに、背が高いとどんなドレスも似合うじゃない?」

「そうでしょうか…。」

お互いの言葉を聞いた瞬間、二人はふっと顔を見合わせた。

そして、くすくすと笑い始める。まるで心が通じ合ったかのように。


「そういえば…前からお願いしようと思っていたことがあるの。」

アイリーンは少し真剣な表情になり、ルチアの目を見つめた。

「…私のことは、アイリーンと呼んで欲しいわ。もっと仲良くなりたいの。」

「え……?」

ルチアは戸惑った表情を浮かべた。

彼女はアイリーンが公爵家出身であることを気にしているのだろう。

「私たちは年が近いじゃない。それに、もう私は何の立場もない。ただのアイリーンよ。」

アイリーンは寂しげに微笑んだ。ルチアは、そんな彼女をしばらく見つめていた。


「ねえ、お願い、ルチア。」

「……わかりました、アイリーン。」

アイリーンは微笑んだ。ずっと彼女と距離を近づけたいと思っていたのだ。

そこへ、ドレスを選んでいたヴェロニカが突然勢いよく駆け込んできた。

「ちょっと! 私も混ぜて!」

そう言うや否や、ヴェロニカはアイリーンとルチアの肩に勢いよく抱きついた。

「ヴェロニカ様!」

「ちょっと、いきなりは危ないですよ!」

三人はその場でもみくちゃになりながら、笑い声を響かせた。

ドレスを選ぶ楽しさ、賑やかな笑い声。こんな気持ちを味わうのは、いつぶりだろう。


「……楽しいです。」

アイリーンがぽつりと呟くと、ヴェロニカが満足そうに微笑んだ。

「でしょ?」

結局、三人は笑い転げながら、まるで子供の頃のようにはしゃいでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ