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エピソード_21

「次の仮面舞踏会にヴィクトールを呼びましょう!」


ヴェロニカの明るく響く声が、静かな馬車の中に満ちた。

「ええっ……!?」

アイリーンは思いもしない言葉に、目を見開いたまま固まった。

ヴェロニカはそんな彼女の様子を見てクスクスと笑う。

「アイリーン、あなたに、彼の相手をして欲しいの。」

驚きと困惑が混じったまま、彼女はヴェロニカの顔を見つめる。

ヴェロニカの言葉は真剣そのもので、冗談を言っている様子はまるでなかった。

アイリーンは先ほどまでの勢いがウソのように縮こまる。

「わ、私が……ヴィクトールの相手を……?」

あの日のことが鮮明に思い出された。彼女の心臓は激しく打ち始める。

「そうよ。あなたが話を引きつけている間に、私はエドワードに接触するわ。」

ヴェロニカの瞳には鋭い光が宿っていた。

その眼差しはまるで獲物を逃さぬ猛禽のようだった。

ヴェロニカの決意の強さを目の当たりにし、アイリーンは息を飲む。

(そうよ…こんなふうに怯えるばかりでは何も変わらないわ!)

アイリーンは、自分の気の弱さを少しだけ恥ずかしく感じた。


「はい。ヴェロニカ様がそう言われるのであれば、私も覚悟を決めます。」

彼女は深く息を吸い、意を決して言葉を発した。

「でも…、ヴィクトールは仮面舞踏会に来るでしょうか。」

彼女は不安げに呟いた。しかし、ヴェロニカはふっと微笑む。

「来ざるを得ない相手の名前で招待状を送るわ。言ってなかったけど、舞踏会の主催は私なのよ。」

「ええ?そうだったんですか!?」

アイリーンは驚いて声を上げた。

「ええ。名義は色んなの貴族の名前を借りているんだけど。」

ヴェロニカの人脈の広さに、アイリーンはただ驚くばかりだった。

彼女はどれほどの力を持っているのだろうか。

しかし、そんなヴェロニカの確信に満ちた言葉に、心は少しだけ軽くなった思いがした。

「……わかりました。私、頑張ります。」

アイリーンは震える唇で、小さく頷く。それを見たヴェロニカは満足げに微笑んだ。

「では、早速計画を進めましょう。」

ヴェロニカはアイリーンにウインクをした。

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