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エピソード_15

そんなことを話していると、部屋の隅から低いうめき声が聞こえた。

「……うぅ……。」

アイリーンとエレノアは、二人でゆっくりと振り向く。

「ヴェロニカ様、大丈夫ですか?」

返事はない。ただ、微かに呻き声が聞こえてくる。

ヴェロニカは、二日酔いなのか、ずっと会合部屋で寝ていた。

ワインのほとんどを彼女一人で飲んでいたのだから、こうなるのも当然だった。

「昨夜あんなに楽しそうだったのに……。」

アイリーンは昨日のヴェロニカの様子を思い出して、ぽつりと呟く。

エレノアは深くため息をついた。

「ここに来た時からああなのよ。あなたは見習わないようにしてね。」

ヴェロニカの酒癖のことを言っているのだろうか。

アイリーンはエレノアの真剣な眼差しに、首を強く縦に振った。

「さて、私たちは休憩しましょうか。侍女に紅茶を淹れさせるわ。」

「……ありがとうございます。」


二人がお茶を飲んでひと休みしていると、その場にヴェロニカがフラフラと現れた。

「ヴェロニカ様、体調はいかがですか?」

心配そうに尋ねるアイリーンに、ヴェロニカは弱々しく微笑んだ。

「だいぶいいわ……でも、少し喉が渇いて……」

そう言いながらテーブルの上の紅茶に留まった瞬間、ヴェロニカの瞳が輝いた。

「あら、美味しそうな紅茶!私ものむわ!」

彼女はそう言うなり、余っていた紅茶をカップに注ぎ、一気に飲み干してしまった。

「ええ……?」

「ちょっと、ヴェロニカ……」

エレノアは紅茶を片手に、呆れたように溜息をついた。


「ふう、生き返った!」

ヴェロニカは満足げに息をつき、すっかり元気を取り戻していた。

「そうだ!今日は私とドレスを見に行きましょう、アイリーン!」

「ええ!?今からですか!?」

ヴェロニカの元気さに、アイリーンは驚愕した。

ほんの数時間前まで苦しそうにしていたというのに、まるで何事もなかったかのようだった。

「まったく……。」

エレノアは眉間に皺を寄せて目頭を押さえた。

「彼女とは、この後また経理の話をする予定なんだけど?」

「えー?いいじゃない。明日も明後日もその予定でしょう?」

エレノアの言葉にも、ヴェロニカは、軽く肩をすくめるだけだった。

「まったく、あなたという人は……。」

エレノアは諦めたように項垂れた。

「もういいわ…。アイリーン、続きは明日にしましょう。」

「わ、わかりました。」

深いため息をつくと、アイリーンの方を見て言った。


「あら、そういえば。」

エレノアが何かを思い出したように呟いた。

「さっきルチアの店の話をしていたのよ。アイリーン、ヴェロニカに連れて行ってもらったら。」

エレノアがそう切り出すと、ヴェロニカの目が輝いた。

「あら、それはいい考えだわ!舞踏会用の小物も揃えたかったし!」

その提案に、アイリーンの胸が高鳴った。

(ルチア様のお店……どんなところなのかしら。)

アイリーンは興味と期待に胸を膨らませた。

ヴェロニカはそんなアイリーンの様子を見て、満足そうに頷くと、部屋の外へ視線を移す。

「さて、馬車の準備をしてちょうだい!出かけるわよ!」

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