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エピソード_11

エレノアと呼ばれたその女性は、鋭い瞳でアイリーンを一瞥すると、ゆっくりと歩を進めた。

年齢は、アイリーンの母親と同じか、あるいは少し若いくらいだろうか。

栗色の髪はきっちりとまとめ上げられ、緑色のドレスを身にまとっている。

その姿は気品に満ちていたが、同時にどこか厳格な雰囲気を漂わせていた。


眼鏡の奥の緑の瞳は冷静でありながらも鋭い光を放ち、アイリーンをじっと見つめている。

何かを探るような厳しい視線に、アイリーンは思わず背筋を伸ばした。

「新しいメンバーを入れたいというから来てみたけど……。」

エレノアの声はよく通り、その響きには威圧感があった。

「彼女を入れるつもりなの、ヴェロニカ?」

アイリーンはその問いかけに思わず緊張した。怪訝な言い方に居心地の悪さを覚える。

「そのつもりよ。」

ヴェロニカは落ち着いた声で答えた。彼女の言葉は迷いがなく、はっきりとしている。

しかし、エレノアは不満げな顔のままだった。


「私は反対よ。」

拒絶の色を隠さないエレノアの言葉に、アイリーンは思わず身をすくめた。

彼女は腕を組み、冷たい瞳でアイリーンを見下ろしている。

その視線は鋭く、まるでアイリーンの心の奥を見透かすようだった。

「調べたけど、とんでもない借金を作って追い出されているそうじゃない。貴族の評判も最悪よ。」

アイリーンは言葉を失った。確かに噂ではそうなっている。だが、それは真実ではない。

「違います……!それは、誤解で……。」

アイリーンが思わず声を上げると、エレノアは眉をひそめ、腕を組んだ。

「誤解?そういうからには証拠はあるんでしょうね?」

「証拠は……」

反論しようと口を開いた瞬間、喉が詰まり、声が出なかった。

陥れられたことを言っても、それを証明する手段がない。

必死に訴えたところで、彼女が納得するはずもなかった。


押し黙るアイリーンを見て、ヴェロニカが間に入るように微笑む。

「あら、エレノア。それもまた彼女が陥れられていたという可能性は考えないの?」

厳しい視線から逃れ、アイリーンはホッとするが、それを見たエレノアはますます不機嫌そうな顔をした。

「あなたこそ、根拠があって言っているの?また自分の勘とかいうんじゃないでしょうね?」

ヴェロニカはその問いには答えず、ペロッと舌を出した。

「まったく……あなたって人は。」

エレノアは大きくため息をつき、腕を組んだ。


「エレノア、あなたの気持ちはわかるわ。でも、彼女にもチャンスを与えてみる価値はあると思わない?」

そんな様子を見て、ヴェロニカが場の空気を和ますように、大袈裟に肩をすくめ、微笑む。

エレノアは静かにヴェロニカを見やる。

しかし、その瞳には相変わらず不機嫌そうな色が浮かんでいた。

「私たちは慎重に動かなくてはならないのよ、ヴェロニカ。あなたもそれは分かっているでしょう?」

「もちろん。でも、彼女がここに来たのも何かの縁よ。」

エレノアはしばらく沈黙した後、再びアイリーンを見つめた。


「あなたは、本当にここでやっていく覚悟があるの?」

その問いに、アイリーンは強く頷いた。

「はい。私は……変わりたいんです。」

エレノアは鋭い視線を向けたまま、ゆっくりと息をついた。

「なら、証明しなさい。あなたがこの会にふさわしい人間だということを。」

エレノアは静かに立ち上がると、別の部屋へ向かった。

重厚な扉が低い音を立てて閉まり、緊張の糸が張り詰めたまま、アイリーンはその場に立ち尽くした。

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