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08無駄に美味しかったけどやっぱり食べた感が欲しい

それは、一人のエルフがのほほんとした顔で口にしたもの。


「人間ちゃんに何か作ってあげたいわ」


と、言うのはそこら辺に住むエルフ。


どのエルフかいまいちわかってないまま、ご近所に住んでいる。


名前も横文字だから覚えにくくて自分が勝手に作った魔法で頭上に名前が出るようにしておいたから、なんとなくそっちを見ればわかる。


そして、なぜリリシヤに聞きにくるのだろうか。


勝手に作って、そこらにいる人にあげればいいと思うのだ。


「人間の好きなものはもう知ってるじゃん。勝手に開発すれば?」


こんなこと言わずとも勝手に作る彼らの筈。


少し前にビールを作ろうとして、違う飲み物を完成させていた。


どうやら前に、地球で会った男にあげたくて開発していたらしいけど。


「リリシヤは人間の第一人者でしょう?」


「……はあ?」


額にビキッと青筋が浮く。


どこのだれがなんだって!?


「そんなんじゃない!私を一緒にするな」


キツく否定。


「でね」


「続けんなし」


会話を聞かないようにしても相手が勝手にペラペラと、飛行機のプロペラのように回り続けた。


捻れてしまえ。


睨みつけたまま、聞き終えてしまう。


「万人に好かれる食べ物ぉ?」


それはなんとも夢にしかありそうにない万能食べ物だなと呆れる。


作ろうとしたら作れるだろう。


「食べる人によって味が変わるとかでいいんじゃないの」


適当に答えておけばいずれ居なくなるかと、答えてあげた。


「なんの形状がいいかしら」


「円の粒型でいーっしょ」


タブレット式ならば、歳に関係なく飲み込めるし。


我ながらいいアイデアかもしれない。


リリシヤは自画自賛しておいた。


「ああん、もお、リリシヤも手伝ってくれないかしら?」


説明しても伝わらない。


というより、この件に引き込みたいからフリだな。


「やだよ。私にはやることあるの」


「リリシヤは人間釣りうまいわよね。それかしら?」


どうやら、人間をこちらにひっぱる行為に名前を付けられてきたらしい。


「違う」


「ええ!そうなの?頻度増やしていいのよぉ?」


媚びた目で手を揉み揉みしている。


向こうで見た頼み方だ、確実に。


美人がやると違和感が半端ないな。


「それ、やめて。寒気がする」


「えっ!これって最上級の頼み方よねぇ?」


人間にされたらしいから、余計に記憶に残っちゃった系?


見せるなよ、そんな場面……。


今日も人間にひっそり失望しながら、息を吐く。


間違っていることを指摘して、今後やらぬように伝える。


「ねえ、おねがああい!ねっ!あっ、人間ちゃんと一緒にお願いってしたらやってくれるう?」


「逆効果」


「天邪鬼なんだから」


語尾にハートをつけて言うけれどガチな本音だ。


一体幾つの人に頼ませる予定だったのか。


何歳だろうとやる気が失せる可能性大だから、やられない方がまだ希望は残るぞ?


「はい、試供品!」


話している間に作ってみたらしいタブレット。


相変わらず訳がわからない程の上位種ぶり。


自分もなんだけどね。


「いらない。いない!!」


言い終える前にいなくなった。


渡し逃げされた。


エルフは食べなくてもいいのに。


リリシヤは舌が恋しいゆえに、たまに食べるけど。


試しに一口。


「あー、サーロインステーキ」


これは便利だ。


「でも、物理的に食べた感じしない……」


お腹は満たされてはいる。


「うわ……よく考えたら、開発しちゃだめなもの生まれたかも」


宇宙食ならばまだしも、地球へ持っていったら。


ありとあらゆる、経済が破綻してもおかしくない理由を秘めている。


「この世界限定でって言っとこ」


視界に雪山が写る。


生命の危機に瀕しているものを直感的に映し出すのに、なぜに雪山?


拡大するとぶるぶる震える子供と大人がいる。


「冬に登山……」


眉根を下げて、誰か派遣させようかと周りを見る。


今日は食べ物の開発のせいか全くエルフがいない。


ワイワイやっているのに水を差す気にもなれず、自前で行くことにした。


そのまま画面へ入るように一歩踏み出す。


視界がホワイトアウト。


そのまま目で雪を止ませた。


「雪、え?なに?」


学校の団体登山らしき集団が顔を上げる。


「は、晴れた?……えっ」


「え?」


「「エルフ!?」」


視界が良好になって、一番初めに見た異物に意識を持って行かれている子達。


会話がめんどすぎるので無言で押し付けられたタブレットを渡す。


一つ、付与をした。


「え、薬?」


「飲めってこと?」


ただ無言で差し出して、飲むか飲むまいかと見続ける。


「このまま待ってても、なにも改善しないから」


生徒の何人かは、我実験台であると言わんばかりに飲み込む。


「……な!」


「えっ、なになに!?」


驚きに叫ぶ飲んだ子は体を見回す。


「あったかい!あったかくなったよ!」


「えっ、本当!?」


「めちゃくちゃ美味しい!昔食べた高級おせちの味がした!」


「えー、なにそれ」


次々子供達が食べていく。


「チョコレート?」


「おれはケーキなんだけど」


「うなぎだった」


「パフェだったけど」


残るは担任っぽい大人。


「先生、飲みなよ。凍死するから」


生徒達に足されてもなかなか飲まない。


別に?


自主性を重んじるし?


無理に飲ませようとは思ってないから。


なかなか飲まないので取り上げて没収した。


その際(売れば金が)と聞こえてそんなこったろうと思った。


雪山のイエティにでも変化させてやろか?と眼光を光らせた。


「ひっ」


人にらみさせて、やれやれと次へ行く。


光でレールを敷いて全員ジェットコースターに乗せると山を下向。


それを見送ると再び一歩進んでエルフの住む世界へ戻った。


「リリシヤ!タブレットは人間ちゃん達に不評よ!」


「タブレットっていうか、食べた感がしないからだよ」


タブレットを押し付けたエルフが教えにきた。


そんなの与える前から、なんとなくそうなるよねと思っていた。


「味は好評なのよっ!あと少し!」


「地球へは流通させないでねその、ディストピア飯」


「なぁにそれ、リリシヤったら」


この言い方を少し前に聞いたけど?


「ビール味の飴を作ったの。はい!」


押し付けられたものを即座に相手に投げ返そうとしたら、いなくなっていた。








「いらんわー!!」

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