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人間が常に赤ちゃん扱いされるような上位種に生まれたら自分だけおいてけぼり〜エルフ達による人間溺愛一方通行〜  作者: リーシャ


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13スペースシャトルの飛行士たちは帰還の夢を見るか

ピッ、ピッ


無機質な音が密度のある中で響く。


そこは無の世界。


シューシューと息を吐き、吸う音が繰り返し耳に聞こえる。


しかし、それを気にする者はいない。


そこは暗い場所でもあり、暗くもない場所。


太陽が照らすおかげで光が通る。


「こちら、サム。管制室、管制室」


男がインカムで伝える。


その声を聞き、問い返すのは女の機械越しの声音。


「こちら管制室。オルよ。サム、具合はどうかしら?」


男は苦労してここまできた理由を思い出しながら、苦い顔をする。


「ダメだ。直そうとしてもうんともすんとも言わない。はぁ、まいったな」


ことの原因は、宇宙船が動かなくなったこと。


ここはスペースシャトル。


凡そ二年による、宇宙滞在からの帰還の帰路に着いている。


折角あと少しなのに。


サムは悔しさに歯噛み。


技術者として上位の腕を持つ自負を持つ男は、手を壁に打ちつけた。


諦めて中へ戻る。


止まったせいで船は宇宙をゆっくりとだが、浮遊したまま軌道を変えていた。


「くそ」


思わず悪態をつく。


ストレスのシミュレーションにも耐えたが、それでも絶望がなくなるわけではない。


中に入ると仲間たちがこちらへ来て気にするなと、慰めてくれる。


船が止まるほどの不具合を、一人の人間がどうこうできるわけがないのだ。


これをどうにかするには万全の装備や、万全の後方支援、万全の技術者が必要。


「そう自分を責めるなサム」


「そうよ」


女の全員であるオルが彼へ言葉をかける。


「くっ、皆すまない」


皆で集まって過ごして次の退路を考える。


今は補助電気が生きているが、やがて尽きるだろう。


「気にするなサム」


「アラカミ」


日本人のアラカミ。


彼はとても温厚で優秀な宇宙飛行士の一人だ。


ストレス値を一番低く過ごした男として、皆から一目置かれている。


どうやったらそうなるのだ?と聞いたがゲームとかしてたら慣れるよと笑った。


ジョークはイマイチなやつだ。


「はぁ」


トラブルが起きて十日。


食料もたくさんあるとも言いがたく、もって一カ月分があるかないか。


その間に助けが来るとは思えない。


暗い顔で外を見ていると、なにか浮遊しているのが見えた。


「ん?」


よく見てもよく見えた。


「人?」


そんなバカなと凝視していたら消えていたので、幻覚だとわかり眉間を手で揉む。


「サム!」


部屋に飛び込んできた女船員の一人は、慌てたように向こうを指差す。


「来て!すごいゲストが居たの!」


「ゲスト?宇宙人とか?」


「とにかく来て!」


無理矢理手を引かれて、リフティングルームへ連れて来られる。


皆が集まり円になっていた。


「サム!」


「船長」


一番の経験者であるキャプテンがにこやかに笑う。


「すごいお客さんが来たぞ」


「ええ。アラカミによると、今地球の日本に現れるようになったエルフという異世界人のことは知ってる?」


「ああ。新聞を読んだ」


電子で送られてきたデータにあった。


「エイプリル・フールだろ?」


「何言ってるんだ、本人を前にして君は」


ストレス値を下回った男が寝ぼけたことを肯定したので、目を丸くするサム。


アラカミ!と叫び肩を揺らす。


君が正気でなくなるというなら、ここにいる人達の精神は限界に達しているぞ。


「初めまして」


「……え?」


キャプテンの長身で見えなかった角度から、見えたのは耳。


「私はエルフ。リリシヤと申します」


「……だれだ?」


「今言ったじゃん。え?聞こえてたよね?」


と、エルフは日本人の方を向くとアラカミはうんと頷く。


「あなた達は地球の隕石騒動を知らなそうなので、簡単に済ますより説明しておかないと侵略だなんだと思っちゃいますし。ほら、二千二十五の旅みたいに。宇宙から帰ってきたらとか、シチュエーションばり被ってるし」


「名作知ってるの!?」


「見た見た!宇宙飛行士で知らんやつなんていないってな!なぁ?」


キャプテンが軽快に笑う。


「自分たちと肩書きそっくりだと、言い出しかねないなって。流石に頭を疑われるのは、かわいそう過ぎて」


リリシヤはエルフにしてはやけに、地球人のような思考をするのだな。


「宇宙人だろうと、異世界人だろうと常識くらい合わせますよ」


今にも舌打ちしそうな顔で吐き捨てる。


エルフという幻想がなくなるから、やめてほしいのだが。


「今ここでは宇宙船は停止している。合ってますね?」


「合ってます」


「うんうん!私達は所謂、迷子」


「遭難してます。まさに海と大して変わらないわ」


「そうだな。絶体絶命だな」


「そうですね」


エルフは頷く。


「エルフは魔法が使えるので皆さんをパッと一瞬で地球に帰せます」


「本当?」


「先ずは手始めに地球と連絡できるようにします」


言い終わるや否や、通信回線が復活したことを確認した通信技術者の糸目男船員が、涙目で繋がったと教えてきた。


皆でワッと盛り上がっていく。


次に何をするのかというと、この空間を地上と一緒にすると伝えられて皆は首を振る。


しかし、いざ戻された時からだは違和感を覚えないまま、普通に歩けた。


「身体にも回復魔法をかけておき、ここで過ごす前の体に合わせておきました。次は食べてください」


無重力ではなくなったあと、リリシヤと語る少女は次々に食べ物を出す。


和食、洋食、ジャンクフード。


ありとあらゆるものを出して、全員声を色めき立たせた。


もりもり食べて、満腹になったあと彼女は動かせるようにはしたがゆっくり戻るか、一瞬で戻るかを聞いてくる。


ゆっくりの意味は本来の戻り方。


時間をかけて戻るという意味だ。


キャプテンは時間をかけて戻りたいと、願う。


経験を若い者に積ませるためと言われ、反対しようとしていた船員はぐっと胸が熱くなる。


「映画で見るやつだぁ」


空気が読めないエルフの言葉に皆は笑った。


「ミス、リリシヤ……助けてくれてありがとう」


彼女はもう帰るというので、色々食べ物を置いて行き皆からのハグを拒否してさっさと消えた。


キャプテンの敬礼は届いたろうか。


船員たちはやがて、宇宙シャトルから帰還したあと、様々な関係者たちから熱いお帰りを受けた。


何が起こったか?ということについては、報告書と共にテレビ中継で国民たちへ知れる。


今回の救出劇、エルフの事について、さらに議論が走ることになる。


宇宙飛行士達は、エルフに感謝を述べ。


隕石も消滅させたと知ったことにより、自分たちの帰る場所がなくなっていたという可能性に、家族と抱擁しながら泣いた。

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