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11/11

11温泉に入るのは疲労回復のためだ

疲れるわけじゃないんだけど、精神的に最近疲れが溜まっていたので地球の温泉に行くことにした。


やはり、疲れには湯がいい。


エルフなので好きに作れるけれど、生身の人間に囲まれて入った方が温泉がそれっぽくて、それ込みで温泉って感じだ。


銭湯も悪くないけど、今日は温泉という気分。


靴を脱いでロッカーに入れる。


温泉なんてわざわざ遠くに行かないといけない土地にいたので、入ったことなんてなかったけれど、今回が初温泉になるだろう。


「ふんふんふうーん」


「うふふふふ」


「あははは」


「ふふふふっ」


「まあ、ふふふ」


「ふー、ん?なっ」


やけに賑やかな笑い声だなと横を向くと長耳をさらした同種の者達が、アハハウフフと言いながらロッカーに靴を入れていた。


「なんでいるの?帰って欲しいんだけど。皆の一週間の滞在期間はもう終わってるんだけど」


「えー、リリシヤが面白そうな施設に行くみたいだから、ついて行きたかった」


「そうよっ!」


「僕はここが気になってるんだよ。人間達が幸せそうな顔になる液体があるみたいだし」


語弊を招く言い方するな、コイツ……。


「でも、滞在時間はもう使い切ってるよね。ダメったらダメ」


一つ許すと加減もなくなる。


ムッとなりながらダメ出し。


「ぶうぶう」


「そうだそうだ。ぶっぶっぶ」


下手くそ!


最後にブーイングしたエルフのやり方が酷すぎる。


「ゴホッ。ううん。だめなもんはだめ」


「じゃあ、来週の時間を前借りするはどう?」


「ふーん。日々進化してるねぇ」


いつか思いつくだろうとは思った。


あと、エルフらがズルしないようにエルフごとにタイムカードを作っており、時間をオーバーしたら強制移動とペナルティで次の週は、半分の滞在時間しかいられなくなる。


「次の週のタイムカードには自主的に増やしてね」


そう念押しすると、エルフ達はこくりと何度も頷く。


「わかったわ」


「言うこと聞く」


「やったわ!」


「言ってみるものね」


エルフ達が団欒となって、今も人々の注目を浴びている。


受付を済ませると、そのまま女湯に直行。


「なぁにあれ?」


行く最中にあるクレーンゲームや、食べるところを指さしたり。


クレーンゲームは初めて見るものだろう。


「あ!エルフだ!」


「エルフ?」


「本当だぁ」


遠巻きに見られる。


子供も多く、今にもエルフを囲みそうだ。


「なんなのここ!?可愛いわ。たくさんいるわね」


「どんどん人間が出たり入ったりして、ここも人間の遊び場かな?」


「娯楽施設だよ」


あまり行かなかったのか、人間のいる場所の中。


特にスーパーなどに赴くエルフたち。


幼稚園に言ったら帰ってこなさそう。


ここは大人も子供もいるし、温泉もある。


「娯楽施設?この間のキャンプ地みたいなものかしら?」


「人間が楽しそうに笑ってるわね」


「聞いてよ。わたしね人間が棒の中に入れられている場所があって。動けないから愛でに行ったの。そしたら、たくさんシャーシャーされたけど誰もダメだって言いにこなかったのよ」


「あはは。わたしもたくさん威嚇されたけど大人しく撫でさせてくれる場所を見つけたのよ」


撫でても許し続けられる施設は限られる。


おまけに許してもらえる肩書きの人も。


いずれ見つけ出したら永久的に構われるのはわかりきっていたので、放置することに決めていた。


「リリシヤいいの?」


「どうでもいい。すきにすれば」


投げやりに答えると黄色い声で喜ぶ面々。


それと、前にいた不良達で逃げ出した一部の、本物の肩書きを持つもの達も無事エルフ達に補足されたあと、可愛がられて色々諦めた目をして日々生きているらしい。


最初はめちゃくちゃ暴れたりしたけど、敵うわけがない。


優しくいい含められ、特になにも暴力的なことをされてないから余計に心が折れるのが早かった。


同じように反抗されれば相手の方は反発して、終わりがなかったろう。


多分、それを見ていたかもしれない組織も、身体を震わせて怯えているかもしれない。


その反対の組織も同じく。


暴力ではないのに、大人しくなる様は見ていて恐怖を染み渡らせるってものだ。


「ここで働きたいわ」


エルフらは最近バイトというものを覚えて、なにか買っていきこちら側にいる人間に渡すというものが流行り始めている。


「あなた、十六箇所で働いているでしょ?また増やすの?」


リリシヤは心配して聞いたのではない。


ただの疑問に思っての質問だ。


どうやって働けるのかと言うと、単に分裂したり増やしたりして働かせるからできること。


エルフならば人間レベルのスペックを持たせて分身に働かせるなんて、朝飯前。


「私だって全部の場所に働かせにいきたいわ」


「いつか、全てを制覇したいな」


「皆もきっと私たちに近寄りやすくなるわね」


エルフに見慣れたら絶対に近寄る。


エルフ達はお互いに話し始めたりして、一部はゲームコーナーに行く。


「どうやるのかしら」


「エルフの人、これはね」


困っていると親切な人側がレクチャーし始める。


レクチャーし終わって離れようとする人間に「待って。一緒に遊びましょ」とゲーム用コインを奢り誘う。


「こんなにもらえませんよ」


「いいじゃない。楽しいなら」


正論だ。


エルフが楽しいなら、もらっても。

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