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01エルフになった

リリシヤは常に思っていた。

朝起きたら生まれ変わって、ファンタジーに行きたいなーとか。

出来れば現代文明の近未来に生まれたいなーとか。


まあ、願いは叶うんだけど。


叶うは叶う。


うん。


でも、思った方向性と違って私は今、路頭に迷っていた。


エルフに似た姿に、老若男女、顔は整っている世界に来た。


文字通り生まれ変わった。


そして、魔法があるから食べ物とか食べたくなったように地球との繋がりを作った。


上位種に生まれ変われて最高だった。


周りにも恵まれ、圧倒的上位種達と過ごし、彼らは所謂優等生みたいな異世界人だった。


地球につなげた魔法陣を使っていると捨てられた赤ん坊がチラ見えしたから、ある程度育つまでこちらでどうにかするかと思った。


そんなバカな思考があるかと思うけど、上位種っていうのはすごい万能感を与えて、有り余る余裕を生む。


人間の赤ん坊を育てようといざミルクを作って持っていくと赤ん坊がワサっと同じ種族に囲まれていた。


全員美形だ。


迫力が違う。


それと、いつもと違い面構えも違う。


「リリシヤ!この子なに!?」


いつもと違う顔つきのもの達は質問責めにしてくる。


地球という星の人間だと説明する。


「可愛いんだけど!!ちょうだい!」


「私が先に見つけたのよ!」


エルフと呼ぶことにしよう。


彼らはそのエルフ顔を必死にさせて赤ん坊の争奪戦を始めようとする。


何を言ってんだこいつらという感想を抱くのはリリシヤだ。


なにを興奮しているんだと冷めていた。


「はあ?欲しいんなら良いけど。どうせ直ぐに地球に帰すから」


「返すなんてダメよ。捨て子なのでしょう?一生暮らすわ!一番幸せにするのよっ」


なにいっとんだこいつら。


人間の価値観は人以外になかったリリシヤにとってエルフ達の異常な対応は理解できなかった。


そう、彼らにとって人間はか弱く、尊い、可愛い存在ということに。


「はあ。好きにすれば。とりあえずこのミルクが主食ね」


引き取るのならば好きにすれば良い。


地球では今は冬なので死ぬと思い持ってきたのであって、ある程度育てて向こうの施設に置いていくと言う手順にしようとしていた。


引き取りたいというのなら引き取ればいいんじゃないかな。


一生分かり合えない価値観を持つ私と人間に対して、地球でいう愛犬家や愛猫家の価値観を持つエルフ達と、甘やかされる事に混乱する人間たちとのトライアングルなお話である。


***


赤ん坊を他の人たちが欲しがって早一ヶ月。


一人が貰い受けることを良しとしなかったエルフ達は全員で育てることにしたらしい。


いや、ハテナマークでいっぱい過ぎる。


赤ん坊にそんなに育てるやつ要らんやろ。


思ってもいない出来事にふらふらとなる。


まるで唯一の我が子のように見つめている。


私と彼らにはなにか決定的に違う価値観が存在していたらしい。


「リリシヤ、今日も鳴き声が可愛くて仕方ないの」


馴染みのエルフ(女)が自慢してきた。


その自慢は毎日あるのでうんざりである。


「可愛いわー、早く当番来ないかしらっ」


ハートマークでもついてそうな声色に目が据わる。


「一年以上は来ないでしょ」


「リリシヤってば、地球に人間っていう生物がたくさん居るって言ってたじゃない。連れてきてよ」


「嫌だけど??」


何のためにつれてくるんだ?


頭を殴りつけたくなるくらい聞かされていて、私は我慢している。


「じゃあ、人間ちゃんが住んでるところ、魔法で写しなさい。おねがーい」


ムスッとした気持ちで向こうの資料ように撮影した映像を流す。


そこには日本の首相が写り、色々話していた。


「えっ!なにこれ!!!」


人間の成長した姿に驚いたのかと思ったけど、次の瞬間。


「メガネかけてるー!きゃー!かわいーっ。おしゃべりできてるなんて偉いわっ」


空いた口が塞がらなかった。


それから女は映像をちゃっかりコピーして周りに自慢しまくり、至る所で首相の映像が流れる。


私はもう眠りたかった。


「人間欲しいな」


「野生の人間居ないのか?」


聞きにくる人がうざったい。


野生の人間って……。


居たとしても連れてくる気になれる訳がないだろう。


腹が立って家にこもって地球の映像を見ているとビルから落ちようとしている大人を見つけて、モヤッとなりながらもこちらへと引っ張った。


スーツを着た女性はきょとんした顔をしていて、私を見てから周りを見て唖然していた。


正直育てる気がなさすぎて他のエルフに丸投げした。


やることはこうだ。


外へ出て叫ぶ。


「野生の人間見つけたよ!」


見つけたくなったけど、居たもんは居た。


叫んだ瞬間ご近所中のエルフ達が弾丸みたいにやってきて人間に群がり、また取り合いした。


「今回は大人な人間だからきちんと説明してあげてね」


スーツを着た人間の女はその日から全肯定されることになる。


生きる事を褒められて、息をするだけで偉いと言われ、喋ると相手は悶える。


やがてスーツの女は固定されていた存在意義を全て剥ぎ取られ、立派な赤ちゃん扱いを受けることとなる。


いつでもどこでも全員からよちよちされる。


「地球に帰れるんですか!?」


5年以上経ってから気になり出して聞いてみたらシレッと教えられる真実にびっくりする人間。


「ええ。いつでも帰れるわよ。でも、私達と向こうの世界なら、私たちの方を選ぶわよね」


上位種ムーブ全開の発言に女はこくりと頷く。


毎日人格否定される日々など、もう昔のこと。


地獄に行きたいなど思わない。


それに、家族ともいつでも合わせてもらえると知り、じゃあ向こうに行かなくて良いわとエルフになでなでされるのを目を閉じて感受。


リリシヤといえば、またビルとか家の中でモヤモヤしてしまうことをしようとしている人間達を見つけて引っ張り込む。


それを繰り返して、野生の人間と叫べばすでに待っていたエルフ達に毟り取られる。


愛でられる存在が足りてないから、エルフ達の目が血走っている。


こわっ。


しかし、人間達をこっちに引っ張るのも、やめさせるのも、丸投げするのも後悔してない。


自分勝手な私は元人間らしくて、そして、エルフになったからこそ出来るやり方だと苦笑しながらも、半分だけ地球人だからこそ、中途半端で良いのだと言える。


誰も損はしてない。


遂に老人も引っ張り込んだ時なんて、老人を手厚く構うエルフなんてものが生まれてしまった。


地球側はそろそろ察しても良いかもしれないが、引っ張り込んでいる人間達が失踪しても可笑しくない状態だと調べられているせいで、あまり調べられずに捜査も打ち切られていた。


ま、いっか。


ふと見てみると人間達の顔が最初に見た時と違う。


リリシヤはそれを見て、人間を赤ちゃんみたいに可愛いとは思わないけど、エルフと人間の組み合わせは見ていて飽きないと気付いた。

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