転生者
前書きのためのスペース
<俺TUEEE>
「いちねんせーいになったぁらー♪いっちねんせーいになったぁらー♪」
4月も早々、小学校・中学校・高等学校、高専や専門学校、様々な学校で入学式が開かれる。大人になっていくにつれ式は厳かなものになるのだが、小学校では明るい曲が流れる。子供たちがのびのびと好きなように歌うこの歌は友達100人を作ることに期待しているという何とも腑抜けたものである。友達なんて100人もいたら浅く広くで、付き合いの密度が薄くなってしまうもんだろ?卒業式とかで「私たち、違う学校行ってもずっ友達だよ」なんて言っていた1か月先、その事なんてどうでもよくなる。俺のかつての学生生活も友達なんて”少なかった”うえ、結局のところ俺は浪人して他の友人らも進路が異なって連絡を取らなくなった。そういうもんだよ、そうに決まっている。歌を歌い終わって席につく。そして校長先生の話とか担任の先生からの挨拶とかクソしょうもない話が始まる。要約すると「楽しくこの学校の一員として過ごしましょうね」だ。それをわざわざ回りくど~い話にするもんだから聞いてあきれる。
式に対して愚痴を頭の中で吐きまくった後、教室に入って担任の先生の名前呼びからのレクリエーションだ。この入学した学校、ちょっと珍しいもので1年X組というようにクラスが組で表されるのが当然だと思っていたんだが、1年3部というようにクラスを部で呼ぶ風習があるのだ。んで、担任紹介だが、遠藤公恵という尾田弘だった俺と同い年ぐらいの化粧くせぇババァだった。喋り方も詐欺師っぽくて胡散臭い。名前呼びでは恒例の「はい!元気です」だ。入学したてでみんな大声で言うもんで鼓膜がはち切れそうだ。俺は「はぃ、元気です」と少し大きめな声でぼそついただけだ。そういう声質の生徒なのかなとババァは素通りしたが、周りに座る子からは元気のない不思議な子なんだなぁというような目線で見られた。そしてレクリエーションはまず二人一組になってくださいだ。これはボッチ危険信号が出されるほど惨いものである。奇数クラスは言わずもがな先生とペアになりボッチが露呈する最凶イベントである。しかし、そんなことも意識しない小学1年生、あたふたとすることもなく俺は隣の席の女の子とペアになった。名前を「田島あかり」という三つ編みが特徴的な子だ。ババァから出されたお題について二人で仲良く喋ろうというもの。くだらない。ババァは「はーい、静かに!」と声をあげてお題を出す。「好きな動物は?」だ。
「あたしはね、インコが好き!あと、イヌも!」
あかりが先陣を切って答えた。非常によくあるような答えだな。
「そ、そう。俺はオットセイだね。」
迷いはない。これ一択だ。
「オットセイ?ってなに?」
マジかよ。オットセイ知らねぇのか。おいおい、勘弁してくれよぉ。
「アシカみたいな生き物だよ」
ま、音芽アリアちゃん勧誘のためにまずはオットセイを知ってもらいますか。
「へぇ~。すぐるくんってものしりなんだね!」
これでかよ。と、突っ込みそうになったのだが我慢。
ん?待てよ。こいつら1年生レベルで俺は大人の知識を持っていて...(ニヤリ)
今まで学校とかつまらんくて何回か仮病使って休んだりしたけど、俺知識で無双できんじゃね?ふっふっふ、これはこれはいよいよ俺の転生世界が始まったもんだな、、、ハハハハハ!顔にニヤケが出ないように注意するが我慢できねぇ。この世界、俺の勝ちだ。
「フフフ、そうでもないよ...、あかりちゃんは犬とかが好きなんだっけ?犬種はどんなのが好きなの?」
自身に満ち溢れる俺は滑舌で困ることは無く、マシンガンになる。引きこもりで得た能力として知ってる分野になると知識をひけらかそうと滑舌が良くなるというのがあることを確認できた。
「け、けんしゅ?うーん?なにそれ?」
「犬の種類だよ。チワワとかトイプードルとかゴールデンレトリバーとか」
「チワワ!きいたことある!」
これはもう...やめられねぇ。あぁ、知識のマウントをとるの気持ちいぜ。
~
小学1年生としての生活が始まるも俺は圧倒的な経験と知識で他の子たちを圧倒する。算数の問題なんて1番に終わって先生から大きな丸を貰う。小学1年生からしたら難しいような1桁+1桁が2桁になるような足し算や2桁+2桁の足し算もやすやすと解いてしまうので先生、周りの子ともに驚かせるのだ。国語の漢字も舐めてんのかってレベルで、字のきれいさも含めて褒められる。実は引きこもりをしていながらも字はきれいだとよく言われる。英語の授業も時々あるのだが、英語で先生と挨拶しただけで目が点状態になる。さらにさらに、図工で自分の似顔絵を描きましょう的な授業があったのだが、アリアちゃんのイラストを何回も書いていたこともあって、作画レベルが群を抜いていた。さすがに画材がクレヨンだったので色が混ざり合って変な色になる部分もあったが、自分自身を割とイケメンにかけたのではないか。そんな絵を見て「私も描いて!」「僕も!」とか言われて崇められるので気持ちいもんだ。しかし、全てが全てそうパーフェクトに行くようなものでもない。例えば、体育。引きニート時代の運動神経がそのままなので50m走はビリに近いわ、逆上がりはいつまでたってもできないわ、跳び箱3段もまともに跳べないわだった。いや、運動神経も良い方に転生しておけよなおい。そして、最近の子供のトレンドだ。有名配信者が大手ゲーム会社から発売された大人気コンテンツの実況がバズりにバズって、クラスメイトのほとんどが遊んでいるようだった。しかし、あの父親のせいでゲームは買ってもらえない、それに動画投稿サイトはあの件があって見るなと言われていて、トレンドに乗れない。クソが。「ゲームやるくらいなら子供用の伝記を読んで教養をつけなさい」だって。本当にこの問題は解決したいのだが、父親の前では緊張してうまく反論できない。マジで毒親。三者面談等々でも成績が良いこと、そして能力が高いことを話されているはずなのだが、父親はそれを当然のようにして勉強を押し付ける。そこに追い打ちをかけるように母親が言葉を添えるのだ。
「卓を塾に行かせて中学受験受けさせよう?」
すみません、まだ俺TUEEE続きます。