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意図

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<さて章が変わって小学生編です>

 若い夫婦の会話が聞こえる。


(すぐる)のランドセルどの色が良いかなぁ」

「無難に黒で良いんじゃない?」

「でも、時代が多様性の時代じゃない?茶色とかシックでいいし、青色はかっこいいし、水色は可愛らしいじゃん。難しいなぁ」

「6年間を共にするんだ。高学年になって後悔なんてことがあったらいけないよなぁ」

「そうなんだよねぇ」


 なるほど。確かにSNSでランドセルを何色にするのか、男の子が赤色ランドセルを身につけても良いのか論争が巻き起こっているのを見たことがある。大事な時期だ。俺は問答無用で黒色であったが、いま問われたなら音芽アリアちゃんの水色に近い青色を真っ先に選択する。


「卓はどう思う?」


 一人の女性がこちらに話しかけてきた。


「え?俺?」


 声が溢れてしまった。その女性はしゃがんで視線を合わせて注意をする。


「もう、俺って言っちゃダメでしょ?僕でしょ?」


 あ、そうか。俺は転生したんだ。何者かよく分からない男らに無理やり運ばれて、意識を失って、でランドセルを選ぶ子供に...。は?子供?転生って普通に中学生とか高校生ぐらいの年齢になって異世界で魔王とかドラゴンとか倒して、あと女の子のピンチとかも全部助けて、みんなからヒューヒューって賞賛されるもんなんじゃないの?なにこれ?え?しかも何でランドセル?どうしてこうも現実味の溢れる世界なんだ?え?待て待て、今の時代は...ってスマホ持ってないじゃん。でもさっき多様性がどうだとか言ってたから割と最近?なのか?


 あまりに急な出来事に弘ならぬ卓は頭が真っ白になっていた。


「おーい、卓さーん、聞こえてますかー」


 後ろ側から男性の声がする。いかにもまじめでシゴデキそうな男の人だ。恐らくだ、目の前の女性は俺の転生先の母親で後ろの男性は父親なんだろう。


「え、あ、あ...」


 父親の返事に答えようとしたが、初対面で馴れ馴れしく話しても良いのか分からず変な声が出てしまった。


「卓もきっと悩んでいるんでしょう、とりあえず男の子っぽい色から何色か選んで卓の好きな色に...」


 母親なる人がそう話した時、俺は指をさす。


「あ、あ、あ、あの、青っぽいやつ...」


 緊張してうまく喋れない。父親なる人は卓の指さした隣の紺色のランドセルを指さして"これ?"と聞く。俺は大きく首を振った。父親は渋々俺の指さしたランドセルを指さし"こ、これ?"と聞いた。もちろん、頷く。


「え、あ、いや、卓がこの色が良いって言うんならいいよ。」


 母親がフォローならぬコメントを発する。父親が前かがみになって俺と目線をあわせてくる。


「どうしてその色が良いと思ったの?」


 そう問われVTuberの音芽アリアと同じ配色だから...とはっきりと答えられたんならどれだけ良かっただろうか。


「えと、その、ア、アリ...いろ、...がかわいぃ...から...」


 どうしてこんなに言葉にできないんだろうか。いや、言葉にしてるんだから俺の意図読み取ってさっさと買えよボケ。


「かわいいのは分かるんだけどね。卓、本当に買って後悔しない?」


 父親がどんどん圧をかけてくる。


「ほら、黒とか紺とかかっこいいと思わないかい?」


 父親がどんどん言葉で攻めてくるのに対し、母親は父親の背中をベシンと叩く。


「もう、それじゃ黒か紺からか選べって言ってるようなもんじゃない。卓が好きな色にしよって言ってるんだから、その薄っぽい青色のランドセルが良いって言うならその色にしようよ。色を強制されて後悔するなんてざらにあるくらいよ」

「で、でもぉ」

「もう!黙ってて!で、卓、このランドセルが良いのね」

「あ、うん」


 母親のフォローがあって俺はアリアちゃん配色のランドセルを手に入れることができた。父親の方は腑に落ちていなかったが、ざまぁ見ろって。いや、てか、父親がちょっと毒親なんじゃないか?これ親ガチャはずれじゃね?待てよ、俺の転生失敗してるんだけども。おい、俺はいつみんなから賞賛されるんだよ。


 俺はどうやら転生して今年度で小学校に入学する清宮(せいみや)卓になった。時系列的には転生前の世界と連続している様子である。父・清宮涼輔(りょうすけ)はコンサルティング会社社員10年目で給料はなかなか良いらしい。母・清宮夏凛(かりん)は大手メーカーの営業職8年目の社員で、家事全般を担当している。転生の場所は横浜であり利便性はかなりあるため、総評して転生はうまくいったように見える。だが、それはこの過労死大国へのトートロジー転生の方であり、正直異世界転生の方が良かった。異世界に行けばチート能力付きだったのになんだよ、何の能力もつかずに小学生かい。ふざけるなカス。

 とにもかくにも俺はスマホかパソコンが欲しい。本当はジジィ、ババァとか暴言含めて呼びたいところだがそうすると色々と制限つけられて満足に子供時代を過ごせなくなるので我慢だ。とりあえず見込みのありそうな”お母さん”の方に聞いてみようか。


「お、お母...さん?」

「何?卓?」

「ス、スマホとパ、パ、パソコンが欲しい...です」

「うーん、まだ、早いかなぁ。でも、何で急に?」

「...何となく」

「そ、そう。まぁ、スマホで遊びたかったら私の使えばいいし、パソコンとかは家族用のであるからそれ触ればいいと思うよ」

「あ、ありがとう...」(ちげぇよ、俺専用のスマホとパソコンをくれってカス!)


 お母さんとの会話を聞いていたのかお父さんが割り込んでくる。


「卓?スマホとかパソコンとかが欲しいのかい?それはどうしてなのかい?」

「そ、それは...」

「ゲームをするだけじゃだめだよ。小学生にもあがるんだからしっかりお勉強もしないと。ていうか、まだキーボードの打ち方とか知らないんだから家ので練習しないとだめだよ」

「うぅ...」(知ってるが?ハゲ)

「ま、まぁお家でね、お母さんが一緒に練習してあげるよ」


 やはり、この父親を好きになれそうにない。会社でのストレスを俺とかお母さんとかにぶちまけてモラハラとかDVするタイプだぞこれ。で、でも、何か弱そうだし天才だった尾田弘なのだから口喧嘩じゃ負ける気がしないね、どうせ生きてる年数俺のが上なんだから。


 ~

 ランドセルを購入しファストフード店で昼ご飯を済ませた後、帰宅した。家は横浜の中央のショッピングモールから電車で3分、そこから徒歩10分ぐらいの場所にある一軒家だ。2階建て構造で小学校に入学したら2階に俺の部屋ができるらしい。いや、もう俺の部屋を使わせてくれよ。お母さんは箪笥からノートパソコンを引っ張り出す。なんだよ、デスクトップじゃないのか。当然CPUは持っていたゲーミングPCよりも悪く、GPUもないようなもん。正直文鎮パソコンである。お母さんはPCを立ち上げ文書入力ソフトを開くと、俺にパソコンの使い方を教え始めた。


「それじゃあ、パソコンの使い方講座ですー。幼稚園で平仮名カタカナは書けるようになったから、じゃあパソコンに打ち込んでみよう!ほら、このマウスパッドの下に平仮名とアルファベットが書いてあるでしょう?これを使って入力するんだよね。『すぐる』って自分の名前を打ち込みたかったら『SUGURU』って打てばOK。アルファベットを打ち込んだら右のEnterを押す!これでほら打てたでしょ?簡単でしょ?じゃあ、さっそく卓も自分の名前を打ってみよう!」


 は?舐めてんの?俺は子供か?あ、しっかり子供だった。正直、このお母さんとお父さんに振り回されそうなところあるから一旦、「分からせる」か。


【清宮卓】


「はい、こんなんでどう?」


 引きニート生活25年で得たものの1つにタイピングのスピードがある。某タイピングWebサイトで実力をはかってみたら1秒あたりに5.7文字打てているとのことだ。同じくらいのスピードで5歳の子供がパソコンを入力しているのだ。しかも漢字入力で。お母さんもお父さんもその様子にびっくりしているようだ。


「卓、タイプするの早いね。あれ?もう慣れちゃったの?」

「うん、よ、余裕だよ」


 お母さんがすごぉいと小さくパチパチしているところにお父さんが介入する。


「卓、どこでそのタイピングをお勉強したのかい?もしかしてこっそりこのパソコンで練習してた?」

「...わ、わから、ないです...」

「分からないことは無いでしょ。しどろもどろしてるし。本当のことを言いなさい。」

「わからない」(うるせぇよ、俺よりタイピング遅い癖に、知らんけど絶対そうに決まっている)

「ま、まぁ、卓もパソコンが使えるから今日はこのパソコンで好きに遊んでみようか」


 お母さんがそう言ったおかげもあって涼輔(クソジジィ)からの質問攻めから逃れることができた。さて、まずはタスクマネージャーを開いてスペックチェックじゃ!ふむふむ、文鎮だな。よし、動画投稿サイトでアリアちゃんの配信のアーカイブでも見よう。配信6つもすっ飛ばしてるじゃん。確認しないと。


 俺がパソコンでアリアちゃんを見ている間、夏凛と涼輔は裏で話し合っているようだった。


「なぁ、夏凛。卓にこっそりパソコンの使い方を教えてたか?」

「そんなことはないよ。今日初めて教えたの。」

「じゃあなんであんなに使いこなせるんだよ。幼稚園とかではパソコンの授業ないはずだろ?しかも、アイツ今、音芽アリアとかいうVTuberの配信を見出したぞ?」

「うーん、分からないけど才能だと思わない?」

「才能かどうか知らないけどあんまりパソコン触らせるのもちょっと。あんな痛い動画は教育に悪いだろ。ちょ、止めてくる」

「あ、待っ」


 配信を見ている途中だったにもかかわらず、パソコンをシャットダウンされ回収されてしまった。そんな痛い動画見るんじゃないと諭され、パソコンを使用できる日を勝手に決めやがった。もうここまで来たら分かるだろう。父親はまさしく毒親を絵にかいたようなものだった。内心ものすごくキレ散らかしていたが、それを言葉にできなかった。

出来る事ならあと4エピソードくらいで小学生編を終わらせたい

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