表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/43

第41話 顛末と意外な要請

 革命軍とフミール族の合同軍に捕縛された王家の者達は、キャンプに連行された。そしてすぐさま革命軍及び一般民も参加しての裁判が開かれた。

 だが、裁判はメイリアの愚かさをより多くの者へと知らしめる事となる。


「私はただ好きなようにしていただけだわ。民の事なんか知らないわよ。私が満足できないなんて嫌よ!」


 反省の弁は微塵もない。それでいて自分の行いを正当化して語るメイリアに多くの者達は怒りを向けるも、当の本人はなぜ怒っているのかを理解する事はなかった。

 またレーンへも同様の追及が向けられた。レーンははあ? と最初口にしていたが、時間を経ると確かに申し訳なかった事をしたかもしれない。と後悔の言葉を口にした。


「申し訳ありませんでした」


 意外にもガラテナは裁判で謝罪の意志と態度を示した。裁判長らがぎょっと目を見開いて驚きの表情を見せた。


「私は……不倫してました。国王陛下が病になり、性的に満足できなかったので手を出してしまいました。それをメイリアさんに知られ弱みを握られていたのです。もちろん言い訳にはならないと思っています。もっとメイリアさんとレーンに対して厳しく接し、民の心にもっと耳を傾けるべきでした」


 彼女の言葉を静かに聞いた裁判長はこくこくと頷くだけだった。


 そして裁判の結果、国家を傾かせ多くの民を犠牲にしたメイリアと同じく国家を傾かせグラン王子親子の殺害を命じたレーンは死罪。ガラテナは遠い島に流刑となった。ガラテナも処刑すべきだと言う声が上がったが、結果としては彼女の命は救われた形となった。

 

「死罪となった2人を連れていけ」


 裁判長の指示の元、メイリアとレーンがそれぞれ罪人用の馬車に乗せられて連れてこられたのはリュシアン王国城内にある建物に囲まれた芝に覆われた狭苦しい中庭。


「あ……」


 メイリアは以前、この景色を夢で見た事があった。その夢と唯一違っていたのは喪服を着たジャンヌがいない事。


(良かった、お姉様がいなくて)


 馬車から乱雑に降ろされ、中庭の芝に直に座らされたメイリアはその場で自身の髪を処刑人の持つ剣でバッサリと切られた。メイリアは心の中では抵抗したかったが、もはやその気力は残されていなかった。中庭の真ん中にはギロチンが既に設置されてある。


「陛下、こちらへ」


 先に選ばれたのはレーンだった。処刑人に最期の言葉は? と問われた時。レーンの脳裏にはメイリアでもマーサでもなくジャンヌがよぎる。


(もしかしてこいつとうまくやっていけばこうはならなかったんじゃないか?)

「ジャンヌとうまくやっていけば、こんな事には……」

「民へのお言葉はありませんか?」

(民、か……これまで眼中にも無かった。そんなもの今聞かれても何にも出てこない)

「申し訳ない」


 彼の次はメイリア。メイリアへもレーンと同じように最期の言葉は無いか? と尋ねられた。


「……幸せになりたかった。お姉様よりもすべてが上でなくちゃいけないの。なのになんでこうなってしまったのかしら。王妃だからお姉様よりずっと偉いのにね」


 お姉様より私の方が上でなくちゃいけないの。最後にもう一度そう恨みがましくつぶやいた後、メイリアのうなじには冷たいギロチンの刃が容赦なく降ろされた。



ーーーーー



「そうですか。教えてくださりありがとうございました」


 屋敷にいた私とカーリアンは女帝陛下から急に呼び出しを受け、応接室にて女帝陛下からリュシアン王国の王宮がある城が革命軍とフミール族の合同軍により陥落し、レーン様とメイリアがギロチンで処刑された事を聞いた。

 それにガラテナ妃が船に乗り、島へと流刑された事も聞いた。両親はどうなったのか分からないけど……。


「葬儀もあちらが全部やってくださるって話よ。だからその辺は心配いらないわ」

「ありがとうございます……」

「とりあえず、処刑人から最期の言葉についても聞いているけど……聞く?」


 聞きたいと言う気持ちと、どうせ聞いたらより気分が悪くなるんだろうなという気持ちの2つが胸の奥から同時に湧いて出て来る。

 すると紅茶を飲んだカーリアンがこちらを見た。


「無理に聞かなくてもいいんじゃないかな」

「……そうよね。陛下。聞かないでおく事に致します」

「そう。わかったわ」


 女帝陛下はごくりと紅茶を飲む。そしてふうと目を閉じて大きく息を吐いた。


「自業自得、よね。それも彼女はどうして処刑されたのかわかっていないまま死んだのかもしれないわね」

「……」

「そうでしょうね。愚かな事だ」


 私がした事は、欲しがりなメイリアに未来の王太子妃の座も含めて全部をあげた事と、アーネスト帝国の押し寄せて来る難民への対応だけ。彼らを直接攻めた事はしていない。自分の欲しかったものを手に入れて、それでいながら崩壊し、ギロチンにかけられていった。

 でも自分の欲しかったものを手に入れた半面、それらはすべてすべて幼くてバカなメイリアには過ぎたるものだったのも事実だ。

 

(ここまでメイリアが堕ちていくだなんて、予想だにしていなかった。王妃であったのに)


 でも、これでもう彼女とレーンとは関わらなくてすむのも事実だ。私を裏切った2人には情はわかないが、安らかに眠っていてほしい。

 女帝陛下から彼女達の顛末を聞いた1週間後。私達は再び女帝陛下からの呼び出しを受ける。


「カーリアン。あなたにリュシアン共和国の総督にならないかというオファーが届いているの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ