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第39話 幸せの終わり①

 革命軍が城に向けて進軍を開始し、城を包囲したという情報を得た時には既に昼を過ぎていた。その情報を受け取ったのは宮廷から戻って来たカーリアンと書斎で書類作成をしていた時だ。


「城が包囲されたって事?!」

「ああ、レーンがいないしどうもガラテナ王妃は幽閉されてるみたいだから指揮を取るべき人間がいないのも同然の状況らしい……!」

「そうなの?!」


 レーン様がいない、ガラテナ王妃も幽閉されているとなると指揮を取れる権限があるのはメイリアだけ。でもメイリアに戦闘関連は無理に決まってる。私もさすがに戦術のあれこれを指揮するのは無理だけど!


「あと革命軍にフミール族が支援を行っているとも聞いた。兵力を考えれば陥落はすぐだと思う」

「そう……」


 ざまあみろ。という思いと想定よりも大変な事になってしまってないか?! という思いで身体が挟まれそうになるが、すぐさま後者の考えを切って捨てようとする。私はアーネスト帝国の者。メイリアやレーン様は許せないしあちらも痛い目に遭ってもらわないとこれまで私が受けてきた仕打ちを考えたらフェアじゃないのだ。これは何回も自分に言い聞かせているけど……そう。


「ご当主様!」


 メイドがカーリアンへ向けて急いで走って来る。


「ジャンヌ様のご両親が、またこちらへ……!」

「革命軍から逃げてきたのだろう。屋敷にはいれない。女帝陛下の元へ向かうようにと伝えなさい。ジャンヌもこれでいいね?」

「はい、もちろん」

「かしこまりました」


 この期に及んでまた両親が……しかもこの後4大公爵家全てがリュシアン王国から脱出してアーネスト帝国に亡命してきたという事を知る。しかも4大公爵家以外にも多くの貴族達がアーネスト帝国に来ているそうだ。


「革命軍に捕らわれるのが嫌で逃げてきたんだろう」

「そうよね……はあ」


 彼らが革命軍から逃れたくてこの国に来たのは明白だ。その中には勿論善良な貴族もいるかもしれない。でも私の両親をはじめ腐った貴族達も数多くいる事も知っている。

 彼らが一体どうなるのか、見ものではある。


「ジャンヌ様のご両親は宮廷へと向かいました」


 と、メイドからの報告を受け、少しほっとした。あなた達の処遇は私が決める事ではない。本音を言えば処遇を決めてやりたい所だがそれをするのは私ではなく女帝陛下だ。両親がこれまで私へしてきた扱いを全て知っている女帝陛下の事だから寛大な措置に……にはならないだろうから、覚悟しておいてください。と思う。


 

ーーーーー



 リュシアン王国では夜明けとともに革命軍が本格的な侵攻を開始した。そこには革命軍の者だけでなくフミール族の者もいる。革命軍がフミール族を味方に付けられたのはひとえに大商人達の交渉の賜物と言っていいだろう。大商人は商いのベテラン。交渉術は王家貴族以上に長けている者達ばかりだ。


「攻撃し、城を包囲せよ。一般民は攻撃しないように。一般民で戦いに加わりたいと志願する者がいれば寛大に相手するように」


 戦闘の指示はわざわざリュシアン王国まで赴いたフミール族の族長やその幹部達が担い、大商人らと会議を重ねつつ進行させている。商人達は救護や武器の仕入れなども担うなどそれぞれ役割分担している。


「革命軍には族長のようなリーダーはいないのですね。それでも素晴らしく統率が取れている」


 そうフミール族の幹部達はうなっていた。


「俺達はそもそも王政ではなく、会議により政治を行っていく事を目指しています。この国で王政ではろくな政治はもう取れないでしょうから」

「そうですか。長年の腐敗がこのような事態を招いてしまったという事なのですか」

「先代の国王陛下はマシだったんですけどね。病に倒れてガラテナ妃が代わりに政治を行うようになってからはもうどんどんダメになっていきました。税はどんどん上がっていくし、お金を湯水のように使いまくるし、国家事業で人を呼び寄せて働かせる割には福利厚生はきちんとしていない。他にもいろいろありますけど日が暮れていしまいそうなのでここまでにしておきます」


 フミール族は改めてリュシアン王国の惨状を理解し、同情し、嘆いたのだった。


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