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第38話 革命前夜

 夜。アルティナが戻って来たと聞き、私とカーリアンはすぐさま玄関へと駆けつけた。するとそこにはずたぼろの状態のアルティナが馬と共に立っていた。


「アルティナさん?!」

「はあ……た、ただいま戻りました……! すみません、水と食料を、頂けますか?」

「わかったわ、皆、すぐに用意して頂けませんか? 出来れば消化に良いものが良いかも……!」


 メイドへ食事を用意するようにと伝えた後カーリアンが車椅子を持ってくるように使用人に手配し、そこにふらふらのアルティナを乗せて食堂へと連れていく。


(これはまずは食事をしてから、シャワーを浴びた方が良いわね……体力が落ちている)


 アルティナの服は所々裾が破けていた。それに髪もぼさぼさである。

 食堂へと到着するとすぐにコックが野菜スープを用意してくれた。野菜だけでなく、小さな丸いパスタも入っている。


「リゾットは今用意している所です。まずはこちらで胃を温めてください」

「ありがとうございます……助かります」


 すっとスープを飲むアルティナ。1口ごくりと飲み干しはあ……と大きく息を吐いた。


「美味しいです、身に染みる……」

「アルティナ、何かありましたか?」

「新たな国王陛下の身柄を革命軍へと引き渡してきました」

「そうなの?!」


 レーン様の身柄を革命軍へと引き渡した?! ど、どうやって……。いや、そうなるまでに一体何があったと言うのか?!


「ですがその後移動中に革命軍と王家の兵士との衝突に巻き込まれたりしていたので……大変でした」

「そうですか、ゆっくり休んでください」

「ジャンヌ様、お気遣い……あ、ありがとうございます」

(結構疲労感が溜まっている状態……しんどそうだ)


 アルティナは出来たチーズリゾットとスープをばくばくと食べながら、レーン様の身柄が引き渡された経緯を説明してくれた。

 

 メイリアは側室となったアルティナとお茶会しようと招いたそうだが、アルティナに何かしようとしている! とメイリアを疑ったレーン様がアルティナと共にやって来た。メイリアとレーン様が口論し始めたのでここでアルティナは自ら身を引く。側室を辞めると告げて城を出て革命軍の拠点へと走っていた所、レーン様が単身追いかけてきたので腹部に蹴りを入れ、眠り薬を飲ませたうえで身柄を革命軍の人へと引き渡したそうだ。


「す、すごい……」

「国王の身柄が革命軍に引き渡された。これはとても重要な事ですよ。間違いなくリュシアン王国が変わる」


 力強く言い切ったカーリアンの目を私はじっと見ていた。



ーーーーー




「は、放してくれ!」


 レーンは縄で両手を捕縛された状態で革命軍の拠点の一室で軟禁されていた。狭苦しく暗い部屋。灰色の壁に木造りの粗末な机と椅子、簡易ベッドがあるだけの部屋だ。


「おい! 誰か! 放してくれ!」


 眠り薬はレーンにはあまり効果が無かったらしく、アルティナにより身柄が引き渡されて3時間くらいで目覚めてしまった。まあ、それでも革命軍からすれば十分な時間と言えるが。


「陛下、静かにしていてください」

「なっ……お前は何者だ?!」


 レーンの元へやって来たのは、平民の1人。レーンへの飲み水を持って彼の元へとやって来たのだった。


「俺達は革命を志している者です。もうこの国には未来が無い。王妃に陛下と王家の者はぜいたくばかり。そして俺達は苦しい暮らしを強いられている」

「はあ……? そんなの俺が知るかよ」

「知るかよじゃねえんだよ! てめえそれでも国王かよふざけんな! 俺達はお前が即位する前からずっとしんどい暮らしをし続けてきたんだぞ!」

「俺には関係ないだろ! お前らがきちんと働かないからこうなってるんだろ?! それにぜいたくならメイリアに言ってくれ!」

「そういうわがまま妃をめとったお前にも罪がある! もういい、お前とは話しても分かり合えない」


 平民の男は飲み水を置いてそのまま立ち去った。そして酒場のバックヤードに向かうとそこには革命軍の上層部である大商人達が集っていた。


「国王陛下の様子はいかがかな?」

「あいつ、俺達の事は知るかよって。俺達の暮らしがどうなってもいいんだ……」

「……やれやれ、愚王極みですな。さて、決行日はどうしますかな?」

「明日でいいでしょう。異論は?」

「無いです」

「ありませんなあ」

「わしも」


 ……革命前夜の出来事である。

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