第36話 溢れゆく難民
アーネスト帝国に次から次へとリュシアン王国からの民がなだれ込んできている。そう、難民だ。
なだれ込んでくるのはほとんどが平民。それも下層クラスの貧困民が非常に多い。皆職と衣食住を求めてこちらへとやってきている。
「もうじき革命軍が戦を起こす。だからはやく逃げてきたんだ」
「あの国はもうおしまいだ。新しい国王陛下は税を2倍に上げてきたんだ! これじゃあ生きていけない!」
「わかりました。あなた方への援助は十分に行うと約束します。何か困った事があればいつでも言ってくださいね」
「ジャンヌさんありがとう! 助かります!」
流れてきた民と話した所、レーン様は戴冠式後、国民が支払う税をこれまでの2倍引き上げたという。理由はメイリアの贅沢を賄う為らしいがただでさえ経済が大きく傾いているリュシアン王国の民からすれば大打撃である。
(それでもメイリアと離縁はしないのか)
離縁すれば穀潰しのメイリアを城から追い出す事は出来るけど、国王としてのプライドに傷がつく。これまで王妃と離縁した国王は確か2人だけでいずれも愚王のレッテルを貼られている人物だ。
(自分のプライドを優先してるってわけね。それとメイリアと身体の相性が良いんでしょう)
私とカーリアンは領地になだれこんでくるリュシアン王国の民への職業斡旋をはじめ、生活の保証など事務的な対応を強いられている。大変だが、彼らの為にもここは気を抜けない。
ルーンフォルド公爵領地外にも、リュシアン王国の民が流れ着いて来ている。しかも国境付近はルーンフォルド公爵領地よりも多くの人数が押し寄せているという話も聞いている。
(彼らには罪はない。なるべく多くの人達を救って……それでアーネスト帝国の民への対応もおろそかにしない)
これまで培ってきた事を生かして、出来る事をやるだけだ。
そんな中、革命軍の上層部である大商人が秘密裏に女帝陛下と謁見するという情報がもたらされた。
「そうなの? カーリアン」
「ああ、女帝陛下から君も来てほしいと言われている。ちなみにこれは秘密裏の会見だから公言はするなというお達し付きだ」
「わかったわ。2人だけの秘密って事ね」
「そういう事だ。会うのは明日。……一緒に行こう」
「うん。一緒ね」
私とカーリアンはぎゅっと互いの手を握りしめた。カーリアンがいると、ネガティブな感情が薄らいでいく。