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第35話 動けぬアルティナ

「戴冠式への出席ですか?」 

「そう。私は出ないつもりよ。あなた方はどうする?」


 朝イチで女帝陛下からの呼び出しを受けた私とカーリアンは、応接室で女帝陛下からレーン様の戴冠式の案内状が届いた事を聞いた。

 ご丁寧に私宛の招待状も届いているらしい。


「いや、行きません」


 私はきっぱりとそう告げた。行く意味も無いし、リュシアン王国にはもう戻る気は一切ない。


「では私も欠席でお願いします」

「カーリアンもジャンヌさんも欠席と伝えておくわ。朝から呼び出してごめんなさいね?」

「いえ、女帝陛下。私は夜中だろうが夜明けだろうがすぐに駆けつけますとも」


 カーリアンの女帝陛下への忠誠心はさすがのものだ。女帝陛下はあらまあ。と言うとニッコリ笑って嬉しいわと言ったのだった。


「おそらくアーネスト帝国からはだれも出席しないでしょうね。もしそうなったら結婚式の時とおんなじだわ」

「寂しい戴冠式になるでしょうね」

「ジャンヌさん、よく言うわね。でもあのようなクズの戴冠式だなんて普通の人なら行かないでしょうね」


 うん、はっきりとクズと言った。私の耳は聞き逃さなかった。


 その後。戴冠式に関してアルティナとは別の工作員から様子を聞いた。アルティナはずっとレーン様の寵愛を受け続けているせいか、レーン様付きの監視の目が厳しくなり身動きがほぼ取れないのに近い状態だそうだ。それはそれでかわいそうな気がする。


「戴冠式に出席した人は少なかったです。ガラテナ王妃もいなかった。それにアルティナさんがメイリア妃と共に戴冠式に出席してました。今は城内にいるそうです」

「え?!」


 ガラテナ王妃がいないのは先代国王陛下の喪に服しているからか?

 それにアルティナがメイリアと共に戴冠式に同伴していたとなると、メイリアから狙われるんじゃ……。いや、アルティナは工作員だから武術にも優れているしよほどの事が無い限り大丈夫だとは思うけど……。


「アルティナさんは大丈夫なの?」

「現時点では健在と伺っています。しかし国王となられたレーン陛下はアルティナさんを高位貴族へ養子入りさせて自分の側室にしようとしているそうです。公妾ではなく側室なので王妃となられたメイリア妃とは対立する可能性が浮上しています」

「うそでしょ、カーリアンどうなるの……?」

「彼女が国王の側室となっては困る。どうにかしてリュシアン王国から脱出してもらいたい所だが……監視の目が厳しいとなると難しいだろうな。……待てよ」


 カーリアンが何かを思いついたようだ。彼へ真剣にまなざしを向ける。


「革命軍だよ。彼らが城近くで騒ぎを起こせば場合によっては王家は城から脱出する。その時にどさくさに紛れてアルティナが脱出できれば……」

「な、なるほど」

「あくまで騒ぎを起こす程度、だ。それか工作員複数が城内に忍び込んでアルティナを盗むようにして奪還するとか……?」


 カーリアンの思案の様子を私はじっと見つめるだけしかできない。





ーーーーーー




 その頃。戴冠式が終わり国王となったレーンは閨にアルティナを招いていた。アルティナと養子縁組をする貴族はなんと4大公爵家が1つ、リュシアンダリア家となった。レーンは王妃となったメイリアの台頭を防ぐ為にメイリアと同じ4大公爵家の1つと養子縁組させるようにごり押したのだった。

 

 リュシアンダリア公爵家はカーリアンのルーツでもある名家。奇遇な事にカーリアンに仕えるアルティナがその名家と養子縁組する事になったのだった。

 アルティナは閨にてレーンに押し倒され、身体中に浅いキスを受けながら自身が城に招かれた時の出来事を思い返していた。


「マーサ様。お迎えにあがりました」

「は、はい……」

(葬式もまだなのに、なぜ?)


 マーサ……アルティナは自身の活動拠点のひとつにしているアパルトマンの一室へ来たレーンの配下達を呆然と見ていた。


(お迎え……まさか城で暮らせと?)


 城で暮らすとなれば今まで以上に諜報活動が難しくなるのは明白。更にアルティナはますますレーンからの寵愛を受けるようになった事で他の工作員達の負担が増えてしまう事に罪悪感を感じていた。


(だけど断る事はできない。不審がられてしまう)


 アルティナは城内に入り、そこからレーンの元へと案内された。


「まっていたよ、マーサ」

「国王陛下……」

「レーンでいい。俺は君が好きだ。ずっとそばにいてほしいんだ」

「……メイリア様ではなく、私でよろしいのですか?」


 アルティナからの問いにレーンは一瞬顔を曇らせた。マーサは優しい女だ。だからメイリアを優先してしまう。そんなマーサが好きだから、手元に置いておきたい。と、レーンは考えたのだ。


「優しい君だから、好きなんだ」

「レーン様……うれしゅうございます」


 それからレーンは戴冠式を予定よりも大幅に早く執り行う事に決める。

 父親の葬式を手早く済ませすぐに戴冠式を。それがレーンの意向。メイリアは特に反論しなかったが、ガラテナ王妃はもっと時間を置くべきだ! と反論したがガラテナ王妃は葬式後即座に城内にある西塔内に隔離された。


「ちょっと! 出してちょうだい!」


 母上にこれ以上出しゃばってもらっては困る。レーンは自らの母親を幽閉したのである。


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