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第22話 衝撃

「招待状の送付は女帝陛下が行う事になった。私の方が適任だろうって」


 形だけとはいえ婚約してから私とカーリアン様……いや、カーリアンは敬語ではなく砕けた口調で話すようになった。畏まるよりこちらの方が話しやすい気がする。


「確かに女帝陛下なら誰も逆らえないでしょうからね」

「そうだね。その通りだよ」


 招待状の送付が終わり、続々と送り先からは出席する旨が記された手紙が届き始めた。


(この返信の文面……さてはこの家の令嬢はカーリアンを好きだったな。虫除けになってるならいい事よね)


 その中にはリュシアン王国の王家のものに両親のものもあった。

 リュシアン王国からはレーン様が出席し、メイリアは欠席するとの事だった。あと私がアーネスト帝国にいるというのについては触れられていなかった。


(そろそろ、か。なら逆に来ない方がいいでしょうね。母体の負担になってもいけないから)


 勿論メイリアに私とカーリアンの姿を見せつけたいのもあった。けど見せつけた所で多分大したダメージは負わないだろうしそれに彼女は出産を控えている。それなら城内で静かに過ごしていた方が良いだろう。

 あと両親からの手紙もしっかりと届いていた。婚約破棄したならクロード家に早く戻ってこい。という文言もちゃんと記載されていたけど誰があんな所に戻るものか。


「メイリア妃は欠席するそうだね」


 書斎でリュシアン王国から届いた手紙を読んでいると、左横からカーリアンがいつものように後ろ手を組んで現れた。この後ろ手を組む動作はカーリアンらしいと言えばらしい動作としていつの間にか脳に刻まれていたくらいだ。


「出産が近いのでしょうね。それなら城でじっとしておくべきだわ」

「そうだろうね。レーン王太子殿下がどういう態度を取るかが気になるなあ」

「まあ、私の事はどうでも良いと思っているでしょう。今はアルティナさんにお熱なんじゃないかしら?」

「彼女からの報告を持った伝書鳩を待とう」

「あれ、そういや伝書鳩ようやく入手できたんですか?」

「レーン王太子殿下がアルティナにぞっこんだから、自分の時間が中々取れないんだろうな」


 なるほど。レーン様がアルティナを寵愛する事はすなわちアルティナが自由に過ごせる時間が取りづらい事を示している。それに伝書鳩に手紙をくくりつけて飛ばす作業は隙がありすぎるし、そもそも目的地に伝書鳩がいる保証もない。


「アルティナに何度か屋敷に戻って来てもらっているのは安否確認もある。危険がつきものな仕事だからね」

「そうよね。安否確認は大事だものね」

「さらに新人工作員への教育・指導も大事だ。今度戻って来る時は長い事アーネスト帝国に留まる予定だけど、レーン王太子殿下が許してくれるかどうか……」


 工作員への教育も大事な仕事だ。彼女が無事に戻ってこれるのを祈るばかりである。



ーーーーー



「ただいま帰還いたしました。そして婚約おめでとうございます」


 アルティナがルーンフォルド公爵家の屋敷に帰還した。前に見た時より少し痩せている気がする。

 伝書鳩が来る前に彼女の帰還となったが、彼女曰くほぼ毎日レーン様が会いに来るおかげで王家の警備対象になっているらしく、伝書鳩が使えないのだそうだ。


「どうやって警備を抜け出したの?」

「そこは企業秘密ってやつです。まあ、ざっくりと言うと変装などですね」


 そこはさすが工作員という所か。


「早速ですが、大変な事になっています。娼婦ひとりがレーン王太子殿下の子を宿した事が判明して、大騒ぎになっていますよ」


 アルティナが身振り手振りを交えて説明する姿が頭になかなか入って来ないくらいの衝撃と、いつかはこうなるだろうなという感情が浮かび上がった。


「面白い事になってきたじゃないですか」


 後ろ手を組んでいたカーリアンは顎に右手を乗せてにやにやとあくどい笑みを浮かべはじめた。

 

 アルティナから詳しい報告を受けたのでまとめてみる。

 娼婦の名前はリリア・スキニア。かつては子爵家令嬢だったが、数年前に起こした騒動により爵位を剥奪され、今は娼婦に身を落としている。


(あれか。メイゴット男爵家の令嬢の婚約者・リゴルディウス伯爵令息がリリアに寝取られた事件の……)


 数年前。リゴルディウス伯爵令息はメイゴット男爵家の令嬢と婚約していた。そこにリリアがつけ込んだ結果リリアがリゴルディウス伯爵令息との子供を身ごもったのだ。


(またやらかしたわけか)

 

 勿論メイゴット男爵令嬢は激怒し、リゴルディウス伯爵令息に婚約破棄をつきつけたのだが、リゴルディウス伯爵令息にとってリリアは単なる遊びだったのでその婚約破棄には応じず、更にリゴルディウス伯爵令息と結婚するというリリアの目論見も外れた事で泥沼に至り最終的には婚約破棄が成立した。

 しかもリリアらスキニア子爵家はリゴルディウス伯爵家に賄賂を持ち掛けようとしていた為、爵位を剥奪されたのである。


(それからリゴルディウス伯爵令息は跡継ぎの座を弟に奪われて国外追放。生まれた子は修道院に預けられたのよね)


 と、騒動についてはここまでとして。

 本題に入るとリリアの存在をメイリアとガラテナ王妃が知りメイリアは大激怒、ガラテナ王妃もかなりショックを受けているという事だった。しかもメイリアとガラテナ王妃はそれぞれ強引なやり方に打って出ようとしているそうだ。

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