表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/43

第18話 結婚式の話

 それから現地で色々見聞きしてきたアルティナからリュシアン王国で行われたレーン様とメイリアの結婚式がどのようなものだったかをルーンフォルド公爵家の屋敷内に複数ある応接室の1つで聞いた。

 まず、結婚式はなんと非公開で行われたそうだ。理由はフミール族の戦闘に巻き込まれないようにする為だそうだが、シスターに成りすまして教会に潜り込んでいたアルティナ曰く、リュシアン王国外の人間は数人しかおらず外国の要人はアーネスト帝国も含めてほとんど欠席……ボイコットしたと言う。


「例えばローラン国は当初使者を送る予定でしたが、予定を変更し使者を送るのを取りやめたと聞いています」

「そうですか、アルティナさん……さぞや静かな結婚式だった事でしょう」

「ええ、とても静かでした。讃美歌もとても静かでしたね」

「うちの妹は何かやらかしたりしてませんでした?」

「いいえ、とてもおとなしくしていました。結婚式で少し浮かれているようでしたけど。反対にレーン王太子殿下は終始口を閉ざして不機嫌な態度でした。神父様からの誓いの言葉に最初は無反応だったものですからガラテナ王妃に後ろから背中を叩かれておいででした」


 メイリアへの愛はもうかなり冷めているようだ。そんな女と後先考えずに関係を持つからそうなる。


「レーン様は後悔しておいででしょうね。なんだか気味が良いわ」

「彼はメイリア嬢とこのような事になったのはかなり後悔しているようです。実際わたしを抱く時も避妊に気を付けているのが分かります」

(そ、そうなんだ……)

「ふと思ったのですが、レーン様はありとあらゆる女に手を出しているのですよね、だったらメイリア以外にも懐妊の話があってもおかしくはないと思うのですが。まあ、王家と結婚できるのは4大公爵家の娘だけと言うルールがあの国にはありますけど」


 確かにそうだ。リュシアン王国王家の男子は4大公爵家の娘としか結婚できない。メイリアは私の妹すなわち4大公爵家の1つであるクロード公爵家の娘だから結婚できている訳で。じゃあ他の貴族令嬢や娼婦がレーン様の子を身ごもったらどうするのだろうか。

 まあ、ろくな考えは浮かんでこないけど。


「何人かレーン王太子殿下との子を身ごもった方がいるという噂は聞きました。まだ噂なので確証は得ていませんが1人はローラン国から交易に来た大商人の娘。もう1人は某伯爵家の令嬢である事は聞いています。勿論月のものの遅れによる勘違いや想像妊娠によるものという可能性は捨てきれませんが」


 ローラン国の大商人の娘なら、結婚相手にはなりえない。せいぜい公妾になれるかどうかだが大がつくとはいえ商人の娘となるとそれは厳しい。もう1人の伯爵家の令嬢なら家柄によっては側室になれるチャンスはおそらくある。しかしメイリアがそれを許すとは思えない。

 まあ、噂は噂だ。確証がない以上これ以上気にする問題でもない。


「結婚式の後はどうだったんですか?」

「初夜の儀はメイリア嬢……メイリア王太子妃が妊娠しているのでありませんでした。そしてレーン王太子殿下はわたしと一夜を過ごしました。さも当たり前のように」

「その状態でよく過ごせましたね……」

「わたしは工作員ですから。任務の為ならそれくらい惜しみません。レーン王太子殿下はわたしを公妾にお迎えしたいと言ってくださいましたが、わたしは拒否しました」

「なぜ?」

「まずはメイリア王太子妃を大事にすべきだと言ったのです。その方がわたしからすれば都合が良いと思ったのです。相手想いで自己犠牲が出来るけなげな女性を演じる事は、工作員としては基本中の基本ですから」


 すごい正論であるのと同時にアルティナという女性は身体の隅から隅まで工作員の精神で染まっているのがよく理解できた。それだけ彼女はプロフェッショナルなのだ。


「すごいですね。己の身体を犠牲にしてまで……私にはできないです」

「それとわたしは毎日毒を飲んでいるんです。子を産めないようにするために」

「そこまでしてるんですか?!」

「だって子が出来たら、レーン王太子殿下は他の女性をあてがうでしょう? 我が家に伝わる秘伝の毒薬を飲み、避妊しているのです。勿論この毒薬は相手の身体も徐々にむしばんでいく代物。レーン王太子殿下は少ししんどいと仰っていましたから効き目が出始めているものと思われます」


 アルティナからの報告はこれで終わったが、彼女の自身の命を投げ打ってまで工作員としての任務に没頭する姿は恐怖感をも感じてしまう程だ。そして逆を言えばそれだけカーリアン様とアーネスト帝国に忠誠を誓っているとも言えるだろう。リュシアン王国の騎士団なんかよりも忠誠心は高いんじゃないか?


(それにしてもアーネスト帝国は違うや。皆幸せそうで真面目で今の所悪人もいないし)


 応接室を出た直後、私は廊下でカーリアン様と再会した。


「ジャンヌ様。もしよろしければ女帝陛下の主催するお茶会に出席なさいませんか?」


アルティナの実家に伝わる秘伝の毒薬には数種類あり、アルティナが服用しているものは避妊用になります

もちろんこの薬をずっと飲めば不妊の体質になってしまう上に、普通の人が飲めば徐々に死に至る危険な代物です

ただアルティナは幼い頃から毒を少し飲む事で耐性を得ているので不妊体質になるだけで済んでます

このような面がある事からアルティナの実家の当主となる男性(現当主はアルティナの実兄)は妻を最低でも3人娶らなければならないというルールがあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ