第17話 祝福されぬ結婚
こちらリュシアン王国side同様三人称の視点となります
カーリアンはアルティナからレーンとメイリアの結婚について聞いたのち、帝都の宮廷にいる女帝陛下や他の高位貴族達に使いを向けた。もちろんメイリアとレーンの結婚式をボイコットする為である。
「私は勿論この結婚式には出席しません。この結婚を素直に祝う事が出来ません」
カーリアンの脳内には無邪気に笑うジャンヌや、穏やかな表情を浮かべているジャンヌ、そして視察先の農場を興味深く見ているジャンヌが次々に浮かんでは消えていく。
(ジャンヌ様を不幸にさせた者達。恥を知るが良い)
そして使いを差し向けた結果。女帝陛下及びその家族や皇族全員、そして招待状が届いていたアーネスト帝国の貴族全員がボイコットする意志を示したのである。
もちろんこのうち半分は自らの意志によるものだが、もう半分はカーリアンの説得によるものだった。
これによりカーリアンの目論見通り、アーネスト帝国からの出席者は一人もいないという事態となった。
そしてカーリアンとアルティナは更に狡猾な行動をしていた。それはレーンとメイリアの情報をフミール族及びローラン国にも流していた。無論ローラン国にも結婚式の招待状は届いていたのだが、アルティナが流したレーンの女遊びの激しさにレーンとメイリアの不貞、かわいそうなジャンヌの話を見事に信じたローラン国は使者を出さない事を決めた。更にこの余波は他の国々にも及んだ結果、なんとリュシアン王国以外の国の出席者は僅か数名という事態になった。
「なんでみんな欠席するのぅ?!」
その事態を知ったメイリアは早速癇癪を起こした。ガラテナも頭を抱えどうしたものかとうなだれる。
「ほとんど欠席だなんて……! しかもメイリアさんとレーンの不貞が公になるなんて!」
(やっぱり結婚式はメイリアさんの出産が終わってからの方が良かった! ああ、あの時メイリアさんを止められていたら……! いいや、無理だわ。弱みを握られている私では無理……)
ガラテナは非公開で結婚式を挙げようとメイリアに進言した。フミール族が怖いからという理由なら非公開でも皆納得するだろうという判断だった。
「フミール族が暗殺に来れば大変よ。だから非公開で式を進めましょう」
「嫌よ! たくさんの人が来ないと嫌!」
当然の如くメイリアは嫌がった。ガラテナは肩で息を吐きながらメイリアを説得する。最終的にはメイリアは己の命が危ない事を理解し納得したのだが、ガラテナのため息は尽きる事無く続いたのだった。
そしてカーリアンは次なる手に打って出ようとしていた。