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第13話 アーネスト帝国の強さ

「彼らは農民であり、兵士でもありますからね」

「えっ、兵士?!」

「有事の際には兵士として出兵が義務付けられています。というのもご存知かと思いますがアーネスト帝国には徴兵制がありますからね」


 そうだった。アーネスト帝国の男性は20歳になると1年間兵役につかなければならないという義務がある。そして兵役が終わればそのまま元居た勤務先に戻っても良し、兵士として引き続き頑張るのでも良しというルートとなっている。なお女性も希望があれば兵役に就く事は可能だ。


「この大農場では有事の際に兵士として戦う予備役の者が数多くいます。後は職を失った者も非常に多くこの大農場で働いています。勿論生粋の農民いますし他の国から流れ着いた難民も数多くいます」

「……様々な人がいるんですね」

「他の貴族が経営する農場や工場群もそうでしょうね。雇用を出来るだけ拡大させて、職を失って生活に困る人達を極力なくしていきたい。皆そうでしょう」


 せっかくなので大農場で働く彼らとちょっとだけ話してみた。


「公爵様はとても親切です。兵役を終えた後進路に困っていたおいらを温かく農場へ迎え入れてくださいました」

「勿論いずれ来るときの為に働きながら武術の鍛錬は欠かせないです」

「僕は実はリュシアン王国から来ました。王国の貴族共は皆腐敗していた者ばかり。うちがいた領地を支配する貴族だってそうだった。でもここは違う。最初はちょっと細かすぎるんじゃねえのって思ったけど……今はすごく心地が良いんです」

(この一番背が低い人、リュシアン王国の人だったんだ……)


 王国の貴族共は皆腐敗していた者ばかりというワードが頭の中にこだましていて消えようとしない。確かに両親とかメイリアはそうだけど……私はその中でも頑張って来たのだから。


「リュシアン王国の人はそんなにひどい人だらけだったんですか?」

「少なくとも僕がいた領地を支配していた貴族はそうでした。確か侯爵家だったかな。……あ、でもあのクロード公爵家のジャンヌ様は勤勉で領地経営にも精を出していたって噂聞いた事あります。一緒にアーネスト帝国に来た友人曰くさすがにルーンフォルド公爵様よりかはランクは落ちるけどそれでも頑張ってたって」


 実際どう考えても私よりカーリアン様の方が領地経営の手腕は上手だろう。それにリュシアン王国とアーネスト帝国とでは領土の大きさが違い過ぎる。もう、悔しさが湧いて来ないくらい唖然とするくらい差を見せつけられた気分になるのとやっぱりあの王国を見捨ててよかったという気持ちの2つが芽生えだす。


「そう……ですか」


 私の語彙力が急に低下し、それだけしか言えなかった。

 その後も馬車から彼らが働く姿を眺めながらとうとう離宮近くまでやって来た。


「離宮に到着したらすぐに昼食といたしましょう」

「わかりました」

「大農場で作っている野菜が提供されますから、ぜひお食事楽しんでくださいね」

「はい……!」


 そしてききっと馬車は停車した。降りる前に窓から外の景色を見るとそこには圧巻の景色が広がっていた。


「うわ……わ……」


 金色と白亜に彩られた広大な建造物。思わず口を開けてしまう位に見とれてしまう。


「ジャンヌ様、いかがなされました?」

「あ、その……すごい豪華だなって」

「そうでしょう。この離宮。私この離宮好きなんです」


 カーリアン様に促されて離宮の中へと入る。離宮の2階真正面には大きな半円形のバルコニーがある。ここからの眺めは格別だろう。

 玄関の扉が開かれ、両脇にいる武装した騎士2人がお辞儀をして出迎えてくれる。それにしても離宮の建物内のあちこちに目線が行ってしまう。離宮内の景色に心が奪われそうになるくらいだ。


「そんなに物珍しいのですか?」

「ああ、カーリアン様。とても美しい場所だと思って」

「そうでしょう。私のお気に入りの場所です。そして……ガラテナ王妃はこの離宮を模した建物を作っているとも聞きますね」

「え?」

「ご存じ無いのですか? 泉の離宮を」


 泉の離宮。そういえば改修工事が行われていて質素な造りから豪華な造りへと変貌した離宮。

 そうか。……ここの離宮を模して改修したというのか。


「知っています。改修工事をしているとも聞きました。それと前はそこまで派手な造りじゃなかった事も記憶しています」

「そう。ガラテナ王妃はどうやらこのアーネスト帝国に対して何やら対抗心をお持ちのようでございましてね。この離宮を模すように指示をしているそうですよ?」

「どこから……それを聞いたのですか?」

「アーネスト帝国の繁栄の為なら他国の情報をちゃんと仕入れて飲み込んで置く事は重要です」

(なんかはぐらかされた……)

「公爵様。速達でございます!」


 声がした方を振り返ると、馬に騎乗していた人が素早く降りて手紙をカーリアン様へと手渡した。手紙を受け取ったカーリアン様はばっと封を力任せに開けて中から便箋を取り出して読む。


「ふむ、私は欠席でお願いします。ジャンヌ様。取り急ぎあなたの妹君から結婚式のお誘いが届いております。ジャンヌ・クロードお姉様がもしそちらにいましたらぜひ出席するように。とね」


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