40.帝都に向かう(1) オブシディアン
アウル帝国へは、まずノルワルティ王国最北の街イルスを目指す。
居留守使われないよねぇ?
大丈夫でした。領主館に泊めてもらえました。
ここは帝国との国境にあり、強固な城塞都市で、強力な領軍を保持し有事の際に対応が出来るようになっている。国境近くの要所数か所に砦があり、領軍が駐在している。
国境と言っても塀は無く、トーネン川という大きな川が流れていて川の中心を国境としている。川の氾濫がしばしばあり、自ずと国境の位置は変化している。最近では治水対策も進み余り大きな変化はない事から川の近くまで農地が広がっており、水も豊富に得られることから王国の重要な穀倉地帯となっている。
川は結構流れが早く船での行き来は出来ないこともないが危険が伴う、それで交易の為に一つだけ大きな橋があり、イルスの街はその近くにある。
橋には検問所があり、積み荷の検査と通行税の支払い、危険人物が行き来しないかのチェックが行われている。我々は正式訪問であることから問題なく通行出来るはずだ。
領主はイスカ・イルス辺境伯だ。
アウル帝国訪問にあたっての注意事項を受けた。
1.領都付近は比較的治安は良い。公式訪問なので領都に滞在する場合は領主に挨拶を忘れないこと。
2.街道では盗賊が出ることが多い。自衛する事。盗賊の物は討伐者に権利があるのは同じ。
3.冬は厳しいので冬季になる前に戻ること。夜は冷えるので防寒着は必要。
4.人種間の差別は少ないが、亜人に対する差別はある。
5.亜人の里では逆に人種への差別が大きい。
6.魔獣は少ないが、強力なものがほとんど。
7.食べ物の種類は異なるので欲しいものがあれば持っていくこと。
などである。
冒険者ギルドや商業ギルドは共通ルールとの事。
想定内だな。
あと、エルフ自治区とドワーフ自治区があるらしい、お約束。
機会があったら行ってみたいが、あまり人の出入りは無いみたい。と言ってたら
ドラファが、大丈夫って。一度行ったことがあるらしい。
人脈って大切だなぁ
まず、橋をわたって帝都に向かうことにする。
検問を通って街道を進み、いざ帝都へ、と思ったら
盗賊? ではなさそう。
武器を置いて両手を上げている。
何もしていないのに。
護衛を向かわせて事情を聞くと。どうやらノルワルティ王国のもので、所謂始末屋と呼ばれる輩らしい
我々の暗殺を頼まれたが、不可能と判断。戦っても逃げても死あるのみ。
何もせずに素直に投降するのが最善と判断したらしい。
判断力の高い人みたい。
どうしよう、彼らを条件付きで密偵として雇おうかな。
「我々の仲間になるか? ただし信用できない、ティムさせてもらうが良いか?」
「従います、もとよりそれ以外に選択肢がないと判断しております。」
「正しい判断だ、ティム!」
「新たな名前を与える、『オブシディアン』
隠形の力を与える。俺達の密偵として仲間にいれる」
更に、
「ステルス機能を持った高速移動機『ステルスポッド』を与える。
これより帝都の内情調査を命ずる! いけっ!」
「ラジャー」
皆に、なんかいつもとノリが違うんじゃない? それに何時それ作ったの?
と言われた。すまん、悪乗りした。
工房で隠れて作っていました。
ーーーーーーーーーー オブシディアン(元ゴロッキー)視点
やはり私の判断は間違っていなかった。無事にギルドの元から離れ、新しい職を得た。
殺しも、戦闘もない。更に隠形の能力も得た。
仕事を頑張ろう。おー
あっ、活動資金もらうの忘れた。当面ギルドからの依頼料をパクったからなんとかなるか。
後で精算してもらおう。
さて、このステルスポッドっ何?
『ようこそ、ステルスポッドのナビシステムです』
乗り物が喋るそーんな馬鹿な。
「使い方の説明してくれ」
『本機は、ステルスつまり隠形機能を有した高速移動できる乗り物です。
直径約2mの球型の乗り物です。基本空中に浮いた状態です。出入り口は『オープン』、『クローズ』で
開閉できます。
一人乗りですが、100キロまで積載可能な荷物室がありますので最大二人乗りにもなります。
移動速度は最大時速約500Km
推進エネルギーは登場者の魔力と空間の魔素、緊急時のために魔石も使用できます。
オブシディアン殿の魔力で最大速度で1時間程度、空間魔素のみでは時速60Km程度で継続的に移動
出来ますが周囲の魔素濃度によって最高速度が変化します。
周囲に光学迷彩と遮断シールドを張って空中を移動しますので、バードストライクなどは
問題ありません。が、体当たりなどは推奨できません。
登場者・操縦者はオブシディアン様及び、許可されたものだけです。
操縦は完全ナビ任せと手動があります。ナビ任せでは目的地の設定と速度の設定のみで移動出来ますが
経路等は指定できません。
更に、
・自動お迎えモードがあります。
・攻撃を受けた場合は自動的に回避行動します。
・穴に埋まってしまった時など行動不能となった場合、エスケープ機能で同じ地点の
地表より上空1kmに位置に転移する機能があります。
・怪我をした時や毒に侵された時など簡易回復装置が働きます。なんとかポッドに戻って下さい。
・攻撃能力はありませんが、脱出用にパラライズ機能があります。
・水中も進めますが、空気の循環が止まるため、長時間は潜れません。
』
「えっと、やっぱ職場間違えたかな?
理解が追いつかない
とりあえずナビ任せ一択だな」
『主への連絡は従魔通信で可能です』
〈ぴろん! 主から従魔通信が入っています〉
〈
おっ元気? ちょっと説明不足だったな。
調査は王都までの街道の様子と途中の領の情報収集だ、
特に盗賊は大切な収入源なので漏らさず発見すること。
危ないと思ったら逃げろ、重要なのは情報を持ち帰ることだ。
逃げる判断のできるお前に適していると思う。
当面の活動資金はポッドの中だ、食料は自分で調達してね。
毎日一度は報告、報告がない場合は救助に向かう。
従魔の位置は把握出来るし、ステルスポッドの位置もわかる
では、帝都で合流しよう
〉
ホワイト職場だ。危険があっても即死しなければなんとかなりそうだ。前の職場とはえらい違いだ。
従魔通信って便利だな。
〈従魔には従魔通信、人間には対石を使ったトランシーバー、ドラゴンは念話。
で通信可能です〉
ドラゴンって?
〈ドラファ様が ドラゴンです〉
えっ、そうなの。なんか大変な所に来ちゃったみたい。




