空中都市の名匠
投稿がだいぶ遅くなりました。なかなかストーリーが思い浮かばず横道に逸れてしまいました。
「ふーここもいつぶりか。」
グラディウスからの転送時間はほぼ一瞬、その風景は、中世のレンガの町並みから一転、一面白い街が目に入る。天空都市『クラウド』それがここの名前である。阿修羅たちが転送されたのは町の中心。そこには広い広場になっており、人通りも多い。向かって正面には、クエストの受注所があり、グラディウスほどではないが多くのプレイヤーがたむろしていた。受注所の左右には道がのびており、そのはるか前方にはちょっとした丘の上にたつ立派な神殿が見える。その建物こそ今回の目的である『セント=グランツ大聖堂』である。遠めに見ても存在感が圧倒的で、城にも見えるその建物には、巫女や神官のNPCがいる。この聖堂は天空竜『グローリアス』を鎮めるため建てられ、天空神『エアル』を祭っている。この世界には各地にそういった神殿や聖堂が存在している。クラウドのやや南にはまた廃墟と化した遺跡がある。空中大陸のダンジョン『セント=ソーマ跡地』推奨LV40~が存在している。まだ阿修羅が名を馳せる前によくお世話になったダンジョンである。今では『スノーウィン』の巨大ダンジョン『雪の森』推奨LV40~が狩場としては一般的であったが当時はまだグラディウス以北の地域は実装されていなかった。しかし、今でもグラディウスから直通で来られるという交通の便のよさによって一部のプレイヤーには人気の狩場である。
「よくここのダンジョンにこもったわー。」
メシルは伸びをしながら言う。当時は親交のなかったメシルであるが、やはり阿修羅の世代のどのプレイヤーもお世話になったようだ。
阿修羅たちは久しぶりのクラウドを楽しみつつ、セント=グランツ大聖堂へ向かった。ややいそうでいながらもその道中のたくさんの露天にめぼしいものがないかを確認してしまうのはトッププレイヤーの性であった。
露天に座る女『灯』(あかり)はうんざりしていた。本当であれば宿に篭っていたい気分である。しかしさすがにずっと部屋に篭って作業をしていたため、さすがに在庫が増えすぎ、素材がきれてしまったため露店を開かざる負えなくなってしまった。別に何もせずに過ごしていてもなんの問題もないわけだが、何もせずにいると落ち着かない自分は職業病ではないかと思う。つい最近までは、そこらにいる鍛冶プレイヤーとなんら変わりのないものを作り、売って生計を立てていたわけである。さすがに個人では資金が足りなくなり、ギルドへの加入の面接を何度も受けた。しかし結果は失格の連続であった。自分がお金に困っている鍛冶プレイヤーであると知るやいなや、その場で失格と知らされる。そしてソロでやっていこうと覚悟を決め、中堅のプレイヤーで一般的なミスリル装備を作っていると、
プレイヤー、鍛冶の子『灯』は二つ名『名匠』を手に入れました。
そんなログが全プレイヤーにながれた。名匠といえばクロムが取得していることで有名な鍛冶系の二つ名で知られている。クロムは鍛冶プレイヤーでは群を抜いた実力の持ち主であり鍛冶プレイヤーのみならず一般プレイヤーでも知らないものがいないほどの有名プレイヤーである。やや興奮が隠し切れず、にやけながら新しい力を実感しながら作ったミスリルソードは取得以前のものとは比べ物にならないほどの性能であった。それから数分後、数人のプレイヤーが灯のいる鍛冶スペースになだれ込んだ。灯はそれらのプレイヤーに見覚えがあった。ギルドの面接に行ったときに見たことのあるプレイヤーばかりだった。用事は想像通りだった。
資金提供するからギルドに入れだとか、優先的に鉱石をまわすからギルド専属の鍛冶屋になってくれだとかそういうものであった。
もちろんすべての誘い蹴った。そして名匠を手に入れたことによって手の平をひっくり返すように態度を変えてきたギルドにあきれた。もちろん頭では理解できないわけではない。名匠を取得する以前の自分は無力であったため面接に落ちた。名匠を手に入れたから鍛冶プレイヤーとして有益と判断されたと。しかし頭で理解していても割り切ることが出来なかった。そして誘いを断って数日、鍛冶スペースだけでなく、露天にまでスカウトが頻繁にくるようになった。名匠を取得してからというもの顧客が大量に増え、武器の値段を上げたにもかかわらず武具が飛ぶように売れたので鍛冶セットを買い、前もって買っておいた宿の一室に設置し、武具作りに専念するようにした。
そういうわけで現在露天を開いている灯だが、露天においてあるは最高傑作というわけではない。むしろ灯の目には駄作と映るような品の数々である。しかしギルドのスカウトたちは誘いに来るたびに何本も買っていく。馬鹿ではないかと思いさらに駄作を補充する。駄作を露天に並べていると地面に4人、いや6人の影が映る。またスカウトかと思い。顔を上げる。
「スカウトはお断りだよ。とっとと商品を買って帰ってくれ。」
そういって6人の客を見る。彼女の目に映ったのは互いに名が馳せてない頃に自分の作品を好んで使っていた黒のローブを羽織った大鎌使いであった。