表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/219

第14話 温泉とリーゼの失態

 建物まで二十メートルほど続く沿道を挟むように等間隔で並び、頭を下げている使用人たちの間を気に留めることなく歩いていく芹澤。


「どうした? 中に入って休まないのか?」


 驚いて固まっている冬夜たちを不思議そうな顔で振り返る芹澤。


「皆さん、ビックリして動けないっすよ。さすがに自分もちょっとヒビッたっすから」

「何を言ってるのか分からないな。早く中に入らないといろいろ大変だろう? 先に行くぞ」


 レイスの言葉を気に留めず、建物の自動扉が開くと何事もなかったかのように中へ入っていく芹澤。


あの人(副会長)は相変わらずっすね……さあ、自分たちも中に入るっすよ」

「いろいろツッコみたいところはあるけど、当の本人はもういないものね」


 呆れ気味のレイスの隣で大きなため息をつくリーゼ。その側で小さく息をつくと言乃花が佐々木に声をかける。


「それでは佐々木さん、よろしくお願いします」

「承知しました。皆様、保養所の中をご案内いたしますね」


 佐々木を先頭にレイス、リーゼ、言乃花、冬夜、メイとソフィーの順で並んで建物に向かい歩き始める。


「すごいね、ずっと同じ姿勢でいるよ」

「こんな出迎えは初めてだからどうしていいのかわからないな」


 すぐ前を歩く冬夜に小声で話しかけるメイ。隣を歩くソフィーは歩きながら一人一人に頭を下げてまわっている。表情は見えないが、並んでいる使用人たちの雰囲気が柔らかくなっていく。そして、全員が建物の入り口に着くと佐々木がガラスの扉の前に立ちカードをかざすと扉が青く発光し、左右に自動で開いた。建物に入った冬夜が何の気なしに後ろを振り向くといつの間にか使用人の姿が見えなくなっていた。


「え? もういない?」

「冬夜くん、どうしたの? 見て見て! 部屋の中に噴水があるよ!」


 興奮した様子でメイが冬夜に声をかけてくる。中を見ると中央に大きな池があり、真ん中には小さな噴水が設置されている。魚が泳いでいるのか勢いよく飛び跳ねる。右側にはソファーが並んでおり、左側には上の階に行くためのエレベーター乗り場がある。


「すごい! 建物の中に池がある! メイ、見た? 魚が飛び跳ねていたよ」


 興奮した様子でソフィーもぴょんぴょん飛び跳ねる。その様子をニコニコと見守っているメイ。


「ソフィー様、気に入っていただけたようで何よりです。今からご利用にあたっての簡単な説明を致しますので、少しだけお待ちください」

「はい!」


 ソフィーが笑顔で返事をする様子に優しく頷く佐々木。冬夜たちに向き直ると説明を始める。


「皆様、お疲れさまでした。館内のご案内をさせていただきます。七階建てになっており、ご宿泊いただくお部屋は左手のエレベーターで上がって頂いた五階になります。お部屋の番号は今からお渡しするカードキーに記載されております。セキュリティーカードを兼ねておりますので失くさないようにお願いいたします。会長よりお話がありました温泉施設ですが、最上階の七階にございます。露天風呂をはじめ、様々なお風呂をご準備させていただいております。お食事は二階のレストランでビュッフェ形式となり、いつお越しいただいても暖かいお食事をお召し上がりいただけます。各部屋にタブレットをご準備させていただいており、画面をタップしていただければ私につながりますので、何なりとお申し付けください。ではカードをお渡しいたしますね」


 佐々木は五枚のカードを取り出し、リーゼから順に配り始める。青色はリーゼ、緑色は言乃花、赤色はレイス、黄色は冬夜、ピンク色はメイとソフィーとなっている。


「カードの色は何か意味があるのかしら?」


 リーゼが不思議そうに佐々木に問いかける。


「玲士様がそれぞれに合わせた色を手配されておりましたから、何か関係があるのかもしれませんね。それではごゆっくりおくつろぎください」


 流れるような動作で一礼し、ロビーの奥へ歩いていこうとした佐々木がふと立ち止まると冬夜たちに向き直る。


「皆様、昼食はまだかと思います。後程、使用人が各部屋に軽食をお届けするように手配してございます」

「何から何まですいません」

「とんでもございません、それでは失礼いたします」


 笑顔で会釈すると再びロビーの奥へ歩きだす佐々木。


「じゃあ、自分はそれ(軽食)を食べたら少し昼寝させてもらうっすよ」

「私も少しお腹も空いたし、部屋でゆっくりしてくるわ」


 レイスがあくびをしながらエレベーターに向かうと言乃花も続いた。


「メイたちはどうする? 俺はさっそく温泉に行ってみようと思う」

「私も温泉に行ってみたいけど、ソフィーも一緒に行く?」

「行きたい! 大きなお風呂が楽しみだもん!」


 聞き耳を立てていたリーゼが口元を吊り上げる。


(これは()()()()()()ソフィーちゃんと一緒に入るチャンス!)

「あー、急いでやらなきゃいけないことを思い出したわ! ソフィーちゃん、またあとでね!」


 光の速さで走り去るリーゼに対し、何が起こったのか理解できず呆然とする冬夜とメイ。



 一時間後、浴場にソフィーの声が響いた。


「リーゼさん! しっかりしてください!」


 メイと一緒に温泉に向かったソフィーが露天風呂で真っ赤にのぼせたリーゼを発見し、騒動が起こるのはまた別のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ