表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/219

第13話 驚くべき保養所

「佐々木、そろそろ皆さんを保養所にお連れしてくれ。私は次の会議に出なければならない」


 冬夜が父親の件について聞き返そうとすると椅子から立ちあがり、佐々木に指示を出す翔太朗。


「かしこまりました」

「それでは皆、後は佐々木に任せてあるから心身ともにゆっくり休めてくれ。健斗、お前はどうする?」

「俺は道場へ戻り、弥乃と修業内容の協議をせねばならぬ。言乃花、詳細は追って連絡する」

「はい、お父様」


 翔太朗に続き立ち上がると、即座に佐々木が出入り口の扉を開け、頭を下げる。二人が揃って会議室から出ていくと静かに扉を閉め、冬夜たちに話しかけた。


「皆様、お疲れさまでした。早速ですが、保養所へお送りしたいと思います」

「すまないな、佐々木。()()()()()()()は揃っているか?」

「はい、もちろんでございます。ですが玲士様もお疲れのご様子ですから、まずは体を休められた方がよろしいかと思います」

「しかしだな……」

「会長から『良い成果を出すには良い休息が必要だ。玲士をしっかり休ませるように』と言付けを承っております」

「……先手を打たれていたか、やはり親父には敵わないな」


 静かに息を吐くと全身の力が抜けたように椅子にもたれかかる芹澤。学園では見たことがない様子に驚く一同。


「芹澤でも疲れることあるのね」

「何を言っているんだ? 当たり前のことを聞くとはおかしなやつだな。リーゼこそソフィーくんのことばかりで、この間も……」

「ちょっと! な、何を言いだすのよ! 人が心配してあげているのに!」


 ソフィーがいる前で今までのことを暴露されそうになり、顔を真っ赤にして芹澤に噛みつくリーゼ。見慣れた光景に思わず笑みがこぼれる冬夜とメイ、口に手を当て必死に笑いをかみ殺すレイス。額に手を当てて大きなため息をつきながらうなだれる言乃花。


「リーゼさんたちどうしたのかな?」


 首をかしげながら不思議そうな顔をしているソフィーに対し、ゆっくり歩いて横に立つと優しく声をかける佐々木。


「皆様本当に楽しそうにされていますね。玲士様があのように笑われている姿を久しぶりに拝見しました」

「プロフェッサー芹澤さんはいつも優しく話しかけてくれますよ!」

「ソフィーさんたちのおかげかもしれませんね。これからも令士様をよろしくお願いいたします」


 顔を見合わせるとどちらからともなく笑みがこぼれる佐々木とソフィーだった。


 その後、言い争いの終わらないリーゼと芹澤にしびれを切らした言乃花が雷を落とすというルーティンがあり、皆が落ち着いたタイミングで佐々木が口を開く。


「ではヘリでお送りいたします。皆様、ヘリポートへの移動をよろしくお願いいたします」


 再び屋上のヘリポートに集合した一同は、慣れた様子でヘリに乗り込んでいく。助手席に芹澤、すぐ後ろに左側からソフィー、リーゼ、真ん中の列は冬夜とメイ、最後尾にレイスと、言乃花。


「出発致します」


 佐々木が声をかけると徐々にエンジン音が大きくなり、大空へ向かい機体が飛び立つ。


「大きな建物がどんどん小さくなっていくよ! 今度はいろんな色のお家がたくさん見える! すごい!」

「ソフィーちゃん、揺れると危ないから支えているね」


 どさくさに紛れてリーゼがソフィーを抱きしめるように支える。


「この景色を見ているとこっち(現実世界)に帰ってきたと実感するな」

「冬夜くんの育った世界なんだよね? 実家にも行くんだっけ?」

「ああ、じいちゃんとばあちゃんの所にも行けるから、メイたちのことも紹介するよ」

「すごく楽しみ! いろいろ案内してね」

「一布さんは大丈夫っすかね?」

「根性を叩き直すのにはいい機会だわ」

「相変わらず容赦ないっすね……ちょっとかわいそうに思えてきました」


 それぞれが楽しそう(?)に話していると佐々木から機内にアナウンスが入る。


「皆様、お楽しみのところ失礼いたします。保養所の上空に到着いたしました。これより着陸いたします。機体が揺れることがありますので座席からお立ちにならないようお願いいたします」


 大きな揺れもなく着陸すると佐々木が運転席から降り立ち、初めに芹澤の搭乗扉、次に後ろの搭乗口を開ける。ヘリポートは少し高い丘のようになっており、周囲は目隠しフェンスで囲われ、奥に小さいビルのような建物が見える。


「皆様、こちらへどうぞ」


 佐々木がヘリポートにある出口の扉を開けたときだった。


「玲士様、ご学友の皆様。ご到着をお待ちしておりました」


 冬夜達の目に飛び込んできたのは建物へ伸びる沿道にずらりと並ぶ人たちだ。佐々木と同じスーツに身を包んだ男性とメイド服を身に纏った女性が二十名ほど頭を下げている。佐々木が音もなく冬夜たちの前に進み出ると、左手を胸に当てながら右手を後ろに回し、頭を下げる。


「ようこそ、芹澤グループの保養所へ。使用人一同、誠心誠意おもてなしいたします」


 圧巻の光景に驚く冬夜たち。

 規格外の出来事が連続し、ゆっくり疲れを癒すことはできるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ