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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第6話 回廊の先に見えたもの

 ゲートの出口から外に出た瞬間、太陽の光が全員の視界を遮る。メイとソフィーの後ろにいた冬夜はとっさに二人の前に出る。


「眩しい! ダメだ、何も見えない……メイたちは大丈夫か?」

「うん、びっくりしたけど大丈夫だよ」

「みんな落ち着いて! むやみに動かずにゆっくり目をあけて状況確認を!」


 警戒しながら冬夜たちはリーゼの指示に従った、一人を除いては。唯一ゲートを使用したことがあるソフィーが辺りを見回して首をかしげる。


()()()()()()()って間違っていませんか? 大きなくぼみと折れた木がたくさんありますが、お迎えの人ってどこにいるんでしょう?」

「え? ソフィーちゃん、詳しく教えてもらえないかな?」

「はい。地面に大きなくぼみがあって、木が変な方向にたくさん折れています。ここだけ大きな広場みたいになっています」


 徐々に目が慣れてきた冬夜とリーゼの視界に映るのは因縁の始まりになった見覚えのある景色。


「なあ、リーゼ。俺の記憶が確かなら、フェイと初めて戦った場所だよな?」

「間違いないわ。地面のえぐれ方、木の折れ曲がり方……ってどこが待ち合わせ場所なのよ!」


 森中にリーゼの絶叫が響く。


「全く……このくらい予測できたでしょう?」


 大きくため息をつきながら言乃花がリーゼに近づいていくと、優しく肩をたたくと諭すように話しかける。


「いい? 落ち着いて聞きなさい。ソフィーちゃんがゲートを使う時は学園長が一緒でしょ? 今回は待ち合わせ場所のあたりって言っていたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「あ……聞いていないわ……」

「それに誰が迎えに来るのか聞いてないでしょ?」

「あっ……忘れてた、ど、どうしよう言乃花……」


 冷や水を浴びたように血の気が引き、青い顔をして呆然とするリーゼ。そんな二人のやり取りを見ていた芹澤が口を開く。


「なんだ? そんなことで悩んでいるのか? 迎えの連絡ならしてあるぞ。森の中に来させるわけにはいかないからな」

「あんたね、わかっていたならもっと早く言いなさいよ!」


 もはやいつもの光景となった芹澤とリーゼの口論。騒ぐ二人を横目に言乃花がレイスに声をかける。


「レイス、あなたは知っていたんでしょう?」

「何のことっすか?」

「わざとこの場所(戦闘があった場所)に転移させられることよ。ゲートをくぐったのは最後だったわよね?」

「さあ、どうでしょう? たとえ知っていたとしても大した問題ではないっすよね?」


 言乃花の質問を笑顔でかわすレイス。だが、細められた目の奥は射抜くように見つめ返してくる。二人の張りつめた雰囲気に気圧され、どうすることも出来ないでいる冬夜。


「えっと、お取込み中の所すごく申し訳ないのですが……お迎えの人が近くまで来ているんですよね? そろそろ向かった方がよくないですか? あまりお待たせしてしまうと心配されるような気がして……」


 おずおずと申し訳なさそうな表情で話しかけるメイ。隣では右手をぎゅっと握るソフィーが心配そうな顔で見守っている。


「そうね、メイちゃんの言うとおりよ。私たちがあれこれ話していても仕方がないわよね。ごめんなさい」

「いえいえ、リーゼさんが謝るようなことは言っていないです」

「ほんとにメイちゃんの言うとおり。仲間内でもめていてもしょうがないわ」

「そうっすね。自分もちょっと気が立っていたかもしれないっす。メイさん、ありがとうっす」

「メイ、よく言ってくれたよ。ありがとう」


 次々と謝罪やお礼を言われ、顔を真っ赤にして照れるメイ。


「みんな仲良くしてください! 喧嘩したら『めっ』ですよ!」


 左手でメイの手を握ったまま、右手を前に突き出し怒るソフィー。その様子を見た全員が優しい笑顔になる。


「じゃあ、早く待ち合わせ場所に向かいましょう!」


 リーゼの掛け声で全員が森の中を歩き出す。先頭はリーゼと芹澤、真ん中にメイ、ソフィー、冬夜。最後尾には言乃花とレイスが続く。しばらく歩くと霧が薄くなり、森の出口が近づいてきたことがわかる。


「もうすぐ出口みたいね。誰か立っているわ」


 リーゼが視線を向けた先にうっすらと二つの人影が見えてくる。そのうちの一つが大きく手を振りながら叫んでいた。


「言乃花ちゃーん! 迎えに来たよ! さあ、僕の胸に飛び込んでおいで!」

「げっ……まさか……最悪だわ」


 大声で呼ぶ人物に対し、嫌悪感が全身からあふれ出す言乃花。

 現実世界における波乱の幕開けはすぐそこまで来ていた。

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