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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第1章 運命の始まり
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第7話 波乱の幕開け

(何があったの? 走っていたら急に暗くなるし……なんでフェイが傷だらけなの?)


 待ち合わせ場所に着いたリーゼは、目の前に拡がる光景に言葉を失った。傷だらけになって怒り狂うフェイと全身から黒い魔力があふれ出している男の子が対峙していた。


(彼が冬夜くん? あの魔力はいったい? そんなことよりも今の状況よ! アイツ(フェイ)から早く引き離さないとまずいわね……)


 リーゼの脳裏に最悪のシナリオが浮かんだ時、冬夜を睨みつけながらフェイが叫んだ。


「この人間風情が……私に傷をつけた事を後悔するがいい!」


 フェイが冬夜を睨みつけながら両手を頭の上に掲げると激しく火花を散らす虹色の球体が出現する。さらに妖力を高めようとした時、水の壁が周囲を包み込むように出現した。


(この魔力は、彼女(リーゼ)の仕業ですか……いや、それ以外にもう一つ……まさか、アイツが出てきた?)


 ――水の大障壁(ウォーターフォール)―― リーゼの魔法による水の壁がフェイを取り囲む。


「フェイ、ずいぶんボロボロじゃない? 素直にひいてくれると嬉しいんだけど?」

「助太刀ですか……あなたごときに邪魔されるとは、癪に障りますね」


 フェイが深手をおっているからこそ、全力を出さずとも撃退可能である絶好のチャンス。しかし()()()()()()()()()()。意識があるのかわからない冬夜を庇いながら戦うのは少々厳しいため、フェイを刺激しないように冷静に言葉を選ぶリーゼ。


「あなたと遊んであげても良いのですが、今日はやめておきましょう。さすがにそちらのお相手は荷が重いのでね」


 フェイが誰のことを言っているのか理解するのに時間はかからなかった。すぐ背後から聞きなれた調子のいい声が聞こえてくる。


「あれ? もう見つかっちゃった? せっかく気配消して隠れていたのにさ、フェイちゃん?」


 リーゼが慌てて振り返ると学園長が腕を組み笑顔で立っていた。


(いつの間に学園長が? 気配なんて感じなかったのに、フェイは見抜いていた?)


 困惑するリーゼのそばに学園長がゆっくり歩み寄る。


「せっかくかわいい子からのお誘いが来ると思って隠れていたのに、あっさり見つけちゃうなんて。そんなに僕のことを探してたのかな? そのお誘い()()()()()()()()()()()()?」


(これはまずいですね……()()()()()()のは予定外です……彼女(リーゼ)一人なら返り討ちにできましたが、分が悪すぎますね……仕方がない、一旦引きましょうか)


 冬夜、リーゼ、学園長に囲まれ、傷を負ったフェイが無傷で切り抜ける望みは薄い。


「少し遊んであげただけですよ。いずれ今日の代償はキッチリ払っていただきます」

「逃げる気なの?」

「逃げる? この私が人間ごときに? ありえない!! これは戦略的撤退です」


 吐き捨てるように言い残すと、景色に溶け込むようにフェイの姿は消えていった。


「学園長、いつからそこに……って助けるならさっさと出てきてくださいよ!」

「まあまあ、リーゼちゃん。おや? どうやら彼も落ち着いたようだね」


 リーゼが学園長に詰め寄ろうとした時、暗闇がまたたく間に消え、冬夜を中心に青空が広がっていく。


「いったい何が……」


 リーゼが顔を見上げ、晴れ渡る青空に目を奪われていた時だった。何かが倒れるような音が聞こえ、慌てて周りを見渡すと、冬夜が地面に力なく倒れている。


「え……ちょっと大丈夫?」

「まずいな……リーゼちゃん、早く冬夜くんを学園へ運ぶよ。今の彼は危険な状態だ」


 何が起こったのかわからず慌てるリーゼに声をかけると、意識のない冬夜のもとに駆け寄り抱きかかえる学園長。


(実に面白いね。偶然とはいえその力を自ら引き出すとは……完全に覚醒するにはまだほど遠いけど、楽しみだ! さて、あちら(妖精たち)はどう動いてくるかな?)


 不敵な笑みを浮かべる学園長。

 冬夜の学園生活は波乱の幕開けとなった。

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― 新着の感想 ―
戦略的撤退は大事!!ʕ•ᴥ•ʔ
[良い点] 魔法物を書くときは、技が他作品とは被らないようにや、逆にかぶらない名前や技を考えたところで読者に伝わらないと意味がない...など技の負のループに陥りがちで結果的にありきたりな技と説明で妥協…
[良い点] 読ませて頂きました。エピソード8までは読みました。物語の雰囲気、状況やキャラの個性がしっかりと描かれていて印象的でした。 [気になる点]  無し。です。 [一言] 感想が下手な為、…
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