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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第三章 幻想世界

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第12話 研究所の様子と動き出した影

「研究所ってもっと殺伐としているのかと思ったけど、かなりイメージと違うな。こんなに自然があふれているなんて……」


 オリエンテーションの後、冬夜たちはハワードの計らいで所内の見学に出かけていた。研究所の敷地は広大で多くの建物が左右に建ち並ぶ。施設の中に入ることは機密保持のため許可が下りず、中庭を散策することになった。タイルが貼られた沿道を歩いていると、敷地の中心に清んだ小川が流れている。周囲に研究員たちが座り、楽しそうに談笑している姿も見える。近くには色とりどりの草花が咲き誇っていた。


「いろんなお花が咲いている!」

「本当! 学園では見たことないお花ばかりだね」

「うん! ここのお花を学園の花壇にも植えてみたいな」

「驚いたかい? 研究所では様々な実験を行っているからね。植物の品種改良の一環としていろいろな草花を育てているんだよ」


 目をキラキラさせ、咲き誇る花を見つめるソフィー。耳がピンと伸び、小刻みに震えている。メイが優しい笑顔で隣に立ち、その様子を見守っている。


「そんなに気に入ってくれると嬉しいな。でも、残念ながら改良中や試験中の植物もたくさんあるから分けてあげることは難しいんだ。そうだ、学園に帰る時に何種類か珍しい花の種を用意しよう」

「いいんですか? ありがとうございます!」

「気にすることはないよ。大切に育てればすごくきれいな花が咲くからね」


 とびっきりの笑顔で何度もお礼を言うソフィーの様子に場の雰囲気が一気に暖かくなる。()()()()を除いて……


「ところで、みんなの泊まる建物はまだなの?」

「我が愛しの娘よ。いったいどうした? 何かイライラするようなことがあったかい?」

「みんな疲れているんだから早く案内したほうがいいでしょ? ……もう、美味しいところ持っていかれちゃった……私が提案しようと思っていたのに」

「ん? 何をそんなに怒っているんだ?」

「なんでもありません。いいから早く案内して!」


 明らかに不機嫌なリーゼ。すぐ隣を歩いていた言乃花は頭を抱え、メイたちと後ろを歩いていた冬夜は必死に笑いをこらえている。対照的な三人の様子を不思議そうな顔で見比べているメイとソフィー。こんなやり取りを繰り返しながら一行は小川沿いに建つ洋風な建物の前に到着した。


「ここが君たちに用意した建物だよ。中は一階に食堂と洗濯室。みんなで歓談できるリビングスペースがある。階段を上って二階は各自の部屋になっているよ。どこでも好きな部屋を選んでもらって構わない。ベッドは各部屋二人分用意してあるから、部屋割りは自分達で相談して決めてくれたまえ」


 中に入るとリビングスペースが広がっている。座り心地のよさそうなソファーが半円に配置され、その先には大きな窓がある。広がるのは先ほどの小川と広大な中庭の景色。ここが研究所であることを忘れてしまう。


「この施設は自由に使ってもらって構わない。荷物を置いてゆっくりくつろいでくれたまえ。リーゼはどうするんだ?」

「そうね。せっかく帰ってきたんだから夜には家に帰るわよ」

「そうかそうか! パパはうれしいぞ!」

「やっぱりやめようかしら……」


 その後、各自の部屋をくじ引きで決めた。廊下を挟んで左右に三室ずつあり、左側の手前から芹澤、レイス、言乃花。右側の手前から冬夜、メイとソフィーの順に決まった。研究所内のレストランで歓迎会が開かれる時間までは各自のんびりと過ごすことになった。芹澤はアルと打ち合わせに出かけ、レイスは姿が見えず。冬夜はメイとソフィー、言乃花、リーゼと共に中庭の散策に出かけた。



 冬夜たちが出掛けてしばらく後、研究所内の一室。薄暗い部屋のソファーに座るハワードの前に音もなく姿を現したのはレイスだった。


「急に呼びだしてすまない」

「構わないっすよ。()()()()()()も予想がついていますので」

「話が早くて助かるよ。君の実家であるイノセント家に二人を連れていくこと、例の調査についての二点を確認したい。彼は課される試練を乗り越えることはできそうかな?」

「どうっすかね。今の状態では五分五分かギリギリ大丈夫といったとこですね。ただ、聞いている報告によるともう一段階上の覚醒まであと一歩のところだと」

「それならば問題ないか。私たちも若いころに挑んで何とか乗り越えることができたからな、響にかなり助けられたよ……さて、こちらが本題になる。君が追っている人物(ファースト)についてだ」

「とても興味深いですね。こちらも調査が難航しているんですよ」

「ああ、こちらの世界(幻想世界)に入り込んでいるのは間違いない。我々の監視網にちらちら引っ掛かっている。どうやら()()()()()()()()()行動していると思われる」

「なるほど。近いうちに接触する可能性が?」

「ああ、極めて高い。一人の反応がアイツに似ているんだ。そこで、イノセント家の力を借りたい。そのために呼びだしているわけなのだが……」

「そこまで情報を頂いて、協力しないなんてことはないっすよ。一刻も早く冬夜さんには試練をクリアーしてもらう必要がありますね。あまり長居をすると怪しまれるっすから……さて、自分は戻ります」


 闇に吸い込まれるように音もなく姿を消すレイス。部屋の中に再び静寂が訪れる。


「頼んだぞ。イノセント家の次期筆頭……」

 

 冬夜に待ち受ける試練とは?

 レイスが追っている人物とハワードの指すアイツとは……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冬夜くんの一段階上の覚醒を促すための試練……ということでしょうか( ゜Д゜)気になる! レイスくんが、家柄とか気になるし諜報部員のような立ち回りとか……隠密行動みたいな部分もすごくカッコよ…
[一言] 覚醒!醍醐味ですね!
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