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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第三章 幻想世界

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第8話 霧の森と迎えの人

 学園の裏門から森の中へ石畳で舗装された道が続いていた。


「裏門側も整備されているんだな」

「学園の近くはどちらも整備されていて霧が出ても迷うことはないわ、()()()()ね」


 リーゼが意味深な言い方をしたことが引っ掛かる。冬夜が学園に初めて向かう時も霧はかなり出ていたが、迷うことなくほぼ一本道のように続いていた。予想外の襲撃はあったが……


「どういう意味だ?」

「なぜかわからないけど、常に森は霧で覆われているのよ。私たちの持つ魔力の大きさが関係しているみたい。ある一定以上の魔力を持っていないと森の中で迷子になるか、いつのまにか最初にいた場所に戻されてしまうらしいわ」


 説明を聞いていると腑に落ちないことがでてくる。学園内で働く人たちや資材などを納入に来る業者が全員強力な魔力を有しているとは考えにくい。先生たちは問題ないだろうが、どうやって出入りしているのか想像できない。


「まだ納得がいっていない様子ね。職員や業者さんは学園が発行している入門カードを持っているから、魔力がなくても大丈夫なのよ。どういった仕組かはわからないけど、専用の搬入路みたいなものがあるらしいわ」

「さすがというべきなのかな。いったい誰が……」

「そんなに興味があるのか? 仕方がない、かわいい後輩のためにこのプロフェッサーが説明してやろう!」


 意気揚々と話に割って入る芹澤。あの悪夢の時間が始まると青い顔になる冬夜だが、心配は無用だった。


「副会長。このタイミングでお話は必要でしょうか? それにカードの構造は秘密厳守と聞いていましたが、違いますか?」


 メイやソフィーと一緒に後ろを歩いていた言乃花から圧倒的なプレッシャーが放たれる。


「ああ、そうだったな。すまない冬夜くん。研究の一部に関わらせてもらったが、この仕組みがばれてしまうと不届き者が学園に押し掛けるかもしれないのでな」

「わかっていただけたらいいのですよ、副会長」


 ニッコリとほほ笑む言乃花と対照的にだらだらと冷や汗を流す芹澤。ソフィーとメイが不思議そうな顔をして二人を見つめている。

 そんなやり取りをしながら進んでいるとだんだん霧が濃くなり、視界を奪い、行く手を阻み始めた。


「だいぶ霧が濃いけど大丈夫なのか?」

「問題ないわよ。あ、ソフィーちゃんがはぐれないようにメイちゃんと私で手をつないでいきましょうね」

「はい! リーゼさんありがとうございます!」


 いそいそとソフィーの横に駆け寄るリーゼだが、すれ違いざまに言乃花よりチクリと小言をもらう。


「うまくやったわね……だけど表情が緩みすぎないように」

「うっ……善処します……」


 顔を引きつらせながらもソフィーと手をつなぎニコニコになるリーゼ。言乃花は大きなため息をつくが森の霧に紛れ、誰にも気が付かれることはなかった。

 しばらく霧の中を進んでいくと次第に太陽の光が強くなり、視界が徐々に戻り始める。


「いよいよ幻想世界か。どんな世界が広がっているのかワクワクするな」

「そうだね。学園の外に行くのは初めてだから楽しみだね!」


 期待に胸を膨らませる冬夜とメイ。改めてリーゼが念を押すように話す。


「申し訳ないけど、そんなに珍しい景色ではないわよ。森を抜けたら研究所の人が来ているはずだから」


 徐々に霧も晴れ、景色が鮮明になってくると、冬夜の目を疑うような光景が広がり始める。学園に行く途中、フェイと初めて対峙した場所と()()()()が広がっていた。


「なあ、リーゼ。方角を間違えていないか?」

「何を言っているの? ちゃんと合っているわよ」

「いや、どう見ても学園に来たときに通った景色と同じなんだけど……ここが本当に幻想世界なのか?」

「そのことについてなら言ったでしょ? 鏡合わせの世界だって。唯一違うのは魔法を中心にしていることよ」


 全く言っていることが理解できずにいると、森の出口が見えてくる。そこには一人の男性が待っていた。スーツを着た、背の高い細身の男性がこちらに歩み寄り、話しかけてくる。


「お待ちしておりました、リーゼお嬢様と学園のご学友様。皆様のお迎えに上がりましたアル・マクマホンと申します。お気軽にアルとお呼びください」


 流れるような動作で一礼をする。


(リーゼお嬢様? いったいどういうことだ? 迎えの人はアルさんだっけ? この人は何者なんだ……)


 ついに足を踏み入れた幻想世界。

 迎えに来たアル、リーゼ、芹澤の三人を繋ぐ研究所の存在とは?

 二つの世界を繋ぐパズルのピースは少しずつはまり始めていた。

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