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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第三章 幻想世界

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第5話 緊急招集と動き始めた思惑

 レイスが謎のメッセージを残してから数日、特に大きな動きもなく平穏な学園生活が続いていた。


(……いったい何を知っているんだ?)


 冬夜が窓の外を眺めていると隣の席にいたメイが話しかけてきた。


「どうしたの? すごく悩んでるみたいだけど……悩み事とか相談にのるよ?」

「ああ、大丈夫だよ。そんな顔してたか?」

「うん、見たことないくらい思いつめたような顔をしていたよ」

「メイにはお見通しか。実は……」


 冬夜がレイスとの一件を話そうとした時、緊急の校内放送が教室内に響き渡る。


「至急、生徒会役員及び天ケ瀬冬夜さん、メイさん、ソフィーさんは学園長室へお集まりください」


 突然の呼び出しに冬夜とメイが顔を見合わせていると、廊下が騒がしくなってくる。そして、教室の入り口から長い耳がぴょこんと姿を見せたかと思うと、少し慌てた様子で二人のもとに駆け寄ってきた。


「メイ、冬夜くん。急な呼び出しってどいしたんだろう?」

「俺にもよくわからない。全員を呼び出すなんて今までなかったからし……とにかく学園長室へ行こう」


 教室から学園長室へ向かう三人。冬夜たちがいる一年生の教室から学園長室がある校舎までは少し距離があるため、廊下を歩いていると様々な生徒たちとすれ違う。ソフィーが通るたびに悲鳴が上がったり、いそいそと声を掛けられたりする。

「ソフィーちゃんに今日も会えたわ! キャー! 手を振ってもらっちゃった!」

「ソフィーちゃん、珍しいお花を貰ったの。今度一緒に花壇に植えない?」

「ああ、今日も神々しいお姿を拝見できた……会長にご報告を!」


 なんだか変な言葉も聞こえたような気がするが、本人はいたってニコニコと、手を振ったり答えたりしながら歩いている。


「ソフィーってすごいよね! もうみんなと仲良くなっているよ」

「いや、なんかおかしな発言も聞こえたような気がするんだけど……」

「そう? 私はお友達が増えてすごくうれしいよ!」


 メイのキラキラした笑顔が眩しい。大切なソフィーに学園内でたくさんの友達ができたことが本当に嬉しそうだ。さらに、別の世界にも友達ができて、毎日タブレットを使って会話をしていると聞いていた。最近はお互いの顔を見ながら通話ができるようになったらしく、リーゼが学園長のところに怒鳴り込みに行ったとか……

 だが、この時はまだ誰も気が付いていなかった。すでに水面下で事件が進んでいることを……



 やがて重厚な扉を構える学園長室が現れる。何度来ても独特な雰囲気が漂い、入室することをためらうが意を決して扉をノックする。


「失礼します」

「急に呼び出してすまないね。他のメンバーは揃っているから入ってきてくれたまえ」


 学園長から入室を促され、扉を開けるとすでに生徒会役員は揃って一列に並んでいた。


「遅くなり申し訳ありません」

「気にすることはないよ、一年生の教室からは遠いからね。急に呼び出して申し訳なかった」


 左からリーゼ、芹澤、言乃花、レイス、冬夜、メイ、ソフィーの順で一列に並ぶ。そして、全員が揃ったことを確認するとスッと立ち上がる学園長。


「では、急に呼び出したのはほかでもない。君たちには夏休み期間を利用して()()()()()()()()を訪問してもらう。日程については調整中だが、まずは幻想世界から訪問してもらう。期間は一週間程度と言いたいところだが、久しぶりのご家族や友人との時間も大切にしてほしい。余裕を持った日程を考えているよ」


 いつも通りニコニコとした笑顔のまま話す学園長。ただの依頼の話に思えるが、眼鏡の奥にある瞳は真剣そのもので事の重大さを物語っている。


「幻想世界か、どんなところなのかワクワクするな」

「生活の中心に魔法があるってこと以外は現実世界と何ら変わりないわよ。私は実家に顔を出すのはちょっと気が重いわね」


 リーゼの発言がすごく気になった。生徒たちは寮で生活をしており、普段なかなか会うことができない家族や友人と過ごせる貴重な時間だと考える冬夜と反応が真逆である。だが、その疑問はすぐに解消した。


「リーゼちゃん、今の発言を聞いたらお父さんが悲しんじゃうよ? 毎週マメに連絡が入っているんでしょ?」

「だ・か・ら・気が重いんです! いい加減に子離れをしてほしいんです!」


 ムッとした様子で言い返すリーゼに対し、横から芹澤が割り込んでくる。


「素晴らしいお父様ではないか! 我が研究の成果のご報告に伺わねばならぬ。私は楽しみだぞ!」

「あんたが出てくると、ほんとに話がややこしくなるから!」


 お馴染みとなったやり取りが始まり、学園長室内が騒がしくなる。


「仲のいいことは素晴らしいが、続きは後でお願いしたいな。立ちっぱなしでそろそろ疲れてきただろう。ソフィーくんのお菓子をいただかないかい?」


 学園長の発言に目をキラキラさせるソフィー。お開きになりそうな雰囲気だが、冬夜は一つ疑問に思うことを聞いてみた。


「学園長、リーゼのお父さんと芹澤さんはどういったご関係なんでしょうか?」

「ああ、君たちに訪問してもらう予定の施設の所長さんだよ。詳しいことは追って説明しよう。今日はここまでだ」


 肝心なところでまた話をはぐらかされてしまった。

 芹澤の研究とリーゼの父親の関係とは?

 この時、もう一つの小さな嵐が学園に巻き起ころうとしていた。

コラボのほうもいよいよ学園突撃が始まります

時期的にはコラボ直前のお話になります。

今週更新のコラボ作品にて『小さな嵐』について明かされます。是非お楽しみください!


『しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!』まりんあくあさん著

https://ncode.syosetu.com/n0156hr/


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― 新着の感想 ―
[良い点] リーゼと芹沢が幼馴染とは!つまり今までの言い合いは痴話喧嘩では!?途端に興奮しました。ありがとうございます!(笑) お父様との関係気になりますね!
[良い点] とうとう幻想世界へ! リーゼさんのお父さんがどんな人なのか、ワクワクです! 施設というのがどういう場所なのか……色々と気になります(*'ω'*)
[良い点] リーゼのお父さん登場ですか。こういった物語は家族関係も見所ですよね。リーゼのと芹澤の発言から、親バカの変わり者なんだろうなぁ...と思います笑。 [気になる点] >特に大きな動きもなく平穏…
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