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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
幕間②

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閑話 ソフィーの一日(前編)

 朝日が昇り始める午前六時、机の上に置いてあるソフィーのタブレットが優しいアラーム音を告げる。


「ふぁー。今日も頑張らないとね!」


 ゆっくり起き上がって背筋を伸ばし、隣のベッドを見るとすやすやと幸せそうな顔をしてメイが寝息を立てている。


(昔、寝ているときはずっとうなされていた……本当にみんなに感謝しないと)


 ベッドから降りるとメイを起こさないようにそっとアラームを止め、静かに部屋の扉を開けて毎朝の日課をこなすために出かける。向かったのは学園の中庭にある一メートル四方の小さなソフィー専用の花壇だ。


 学園にきてしばらくたった日の午後、中庭を散歩していた時だった。


「う~ん。この一角どうしようかな?」

「学園長、どうされたんですか?」

「ああ、ここにお花を植えようと思ってね……そうだ! ソフィーちゃんがお花を育ててみるのはどうかな?」


 思いがけない学園長の提案に目を輝かせて笑みがこぼれるソフィー。


「いいんですか? メイもお花が好きだからきっと喜ぶと思います!」

「うんうん、ソフィーちゃんが植えたいお花を用意しよう。きっと綺麗な花壇ができると思うよ」


 あることがきっかけで知り合えた()()()()()()()()()()が、『春の時期はチューリップっていう花がすごくきれいだよ!』っと教えてくれた。そして、学園長にいろんな色の球根をそろえてもらい、毎日水やりをして花が咲くのを楽しみにしている。


「あら、ソフィーちゃん? 今日も朝早くから偉いわね」


 後ろからリーゼが声をかけてきた。ソフィーが毎朝、花壇に水やりをするときに優しく声をかけてくれ、時には草むしりなどのお手伝いをしてくれる優しい生徒会長さんだ。


「リーゼさん、おはようございます!」

「はあ、ソフィーちゃん今日も……あ、おはよう! もうつぼみもだいぶ大きくなってきたし、もうすぐ綺麗に咲きそうね」

「はい。早くみんなに見せてあげたいです!」


 水やりを終え、部屋に戻ろうとするソフィーの後ろから、叫び声のようなものがしたので振り返ると、そこにはニコニコと手を振るリーゼがいた。


(何か聞こえたと思ったけど、きっと気のせいよね。メイが起きる前に部屋に戻らなきゃ)


 パタパタと部屋へ急ぐソフィー。この後、花壇でガッツポーズをとり、緩み切った顔をしたリーゼが言乃花に雷を落とされるのは別のお話。



「ソフィー、おはよう」


 部屋に戻るとすでにメイが起きていた。眠そうな目を擦りながらソフィーを笑顔で迎えてくれる。


「メイ、おはよう。着替えはここに置いてあるよ」

「いつもありがとう。着替えたら朝ごはん食べにいかない?」


 メイが着替え終わるとソフィーの出番だ。紫色の長い髪をツインテールに結うのが日課。それが終わると真っ赤ないちごの形をしたショルダーバッグにタブレットを入れ、二人は手をつないで一緒に食堂に向かう。


「おはよう。メイ、ソフィー」


 食堂につくと寝癖でぼさぼさの頭をした冬夜が声を掛ける。リーゼと言乃花も合流し、五人で賑やかな朝食タイムのスタートである。こちらの食堂は特別棟の中にあるため、いつも決まったメンバーがここを利用している。


「レイスさんと芹澤さんは?」

「レイスはたぶん寝ているわよ。芹澤はまた実験室じゃない?」


 言乃花が呆れた様子で答える。レイスはめちゃくちゃ朝が弱く、ほとんど食堂には現れない。そうしているうちに楽しい時間は過ぎていき、メイたちは授業を受けるため教室へ、ソフィーはいつものお仕事をするために職員室へ向かう。


「おはようございます。今日もよろしくお願いします」


 職員室の扉をあけ、一生懸命挨拶をする姿に居合わせた教職員たちが、一斉に和やかな雰囲気に包まれる。朝のあわただしい中で唯一癒される時なのだ。


「ソフィーちゃん、今日はこの資料を教室まで運ぶのを手伝ってもらえるかしら?」

「はい! 頑張ります!」


 女性教師と一緒に教室へ向かう。

 こうしてソフィーの一日は幕を開けるのであった。

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