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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

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第24話 世界の命運を託されし少年と少女

 例えようのない光景に目を奪われていた冬夜だったが、すぐに(アビー)へ向き直った。


「まだです……こんなところで……私は」

「アビー、今は引きなさい!」


 片膝をつき何とか立ち上がろうとするアビーを一喝した声に戸惑いを隠せない冬夜。歪みの生じた空間から姿を現したのは、見覚えのある人物。


「なぜお前がいるんだ? ノルン!」

「あら、誰かと思えば……おや? 少し雰囲気が変わりました?」


 姿を現したのは黒いローブを身にまとったノルン。汚れや傷は一つもなく、言乃花たちと戦闘していた事など微塵も感じさせない。冬夜を興味なさげに見ると、アビーのすぐ横にふわりと降り立つ。そして、今までの戦闘をすべて見ていたかのように優しく声をかけた。


「あれほど無茶をしないようにと言っておきましたのに……あなたは本当に頑張りました」

「申し訳ありません、お姉様。少ししくじってしまいました……」

「十分ですよ。あなたはきちんと役目を果たしました」


 ノルンの言っている意味が全く理解できない冬夜。メイは結界の中にソフィーとともに保護されている。戦力的にはこちらに分があるはずなのに、どうしても妙な違和感がぬぐえない。


「ふふふ……まだご理解いただけていないようですね。あの方がお見えになられます」

「ノルン、アビー。大儀であった」


 天空からから響き渡る声、さらに全身を押さえつける圧倒的プレッシャー。一瞬にして深く刻まれた苦い記憶がフラッシュバックしてくる。歪んだ空間から姿を現したのは、ローブを身にまとった因縁の相手。彼は冬夜を一瞥すると口元を吊り上げる。表情が読めない相手に不気味さが加速する。


「お、お前は……」

「ふん、いい顔つきになっておる。期待どおりに成長してくれなくては意味がないからな。我が計画は順調である。学園長、お前がいかに無力か思い知るがいい」

「全く……気が早い男は嫌われるよ」

「ふん。減らず口は相変わらずだな。まあいい。見ているがよい、二つの世界が終焉に向かう時を……ノルン、アビー。遅れるな」

「はい、承知いたしました」


 そう言い残し、ノルンとアビーの身体が歪みだす。そのまま空間に吸い込まれるように姿が消えていった。その様子を唖然とした顔で見ていた冬夜。慌てて二人を追いかけようとしたが、すでに跡形もなく消え去った後だった。


「クソッ! 肝心なことを聞き出せなかった……二つの世界が終焉に向かう?」


 冬夜が悔しそうに表情を歪ませていると、複数の人影がこちらに向かい走ってくるのが見えると同事に賑やかな声が森の奥から響いてきた。


「全く信じられないわ! あんたは何がしたかったのよ!」

「言っている意味がわからないな! 無傷で帰還し、サンプルデータも取れてこれ以上の収穫はないだろう!」

「こっちはビックリっすよ。全力でぶつけた相手が跡形もなく消えちゃっているんすから……」

「私たちが罠にはめられたとしか思えないわ。そんなことより冬夜くんを助けに行くのが先決よ」


 霧の中からリーゼ、言乃花、芹澤、レイスの四人が姿を現す。四人とも激闘を終えたばかりで、制服はところどころ破れ、擦り傷がそこら中についている。


「四人とも無事だったのか?」


 冬夜の顔に心から安堵した表情が広がる。全員無事にこの場で合流できたことが心から嬉しかった。


「冬夜くん、無事だった?」

「さすが、私が託した男だけはある!」

「ちょっと副会長は黙っていてくれないっすかね」

「みんな無事でよかったわ」


 四人の元気な顔を見てほっとした時だった。冬夜達の背後からソフィーの悲痛な叫びが響いた。


「メイ、メイ! どうしたの? しっかりして!」


 ハッと振り返るとソフィーにもたれかかるように倒れこむメイの姿があった。即座に学園長が駆け寄り、状態を確認する。


「急激な魔力消費と疲労だね。少し休めば大丈夫だと思うが……リーゼちゃん、大至急常勤医に連絡を。言乃花くんと冬夜くんはソフィーちゃんと一緒に医務室まで付き添ってあげてくれたまえ」


 手際よく指示を出す学園長。リーゼは常勤医に連絡するために校内に走っていき、冬夜たちはメイを支えながら医務室へ向かい歩いて行った。


「あまりの手際の良さにビックリっすね。まさかここまで読んでいました?」

「さすがにそれはないな。でも、少し早かったけど()()()()は確認できたよ。ところで芹澤くん、例の件のサンプルデータはうまくいったのかい?」

「おかげ様で。すべてとまではいきませんが、検証に必要なものは揃えることができました」


 不敵に笑い合う三人。


「いよいよ、創造主(ワイズマン)サイドとは戦いが激化していくだろう。ヤツの計画を止められるのは彼らしかいない。それでは次のステージに進むとしよう」

「ついに幻想世界と現実世界に彼らを送り込むということですか? 非常に面白い!」


 高笑いしながら去っていく芹澤。レイスのもとに歩みよると真剣な表情で耳打ちをする学園長。


「レイス、(ファースト)の動向を注視し、必要とあれば()()()()()()処理しろ。未だ表に出てこないあたり何かあるはずだ」

「御意。引き続き動向を探ります。不穏な動きがあれば報告するっすよ」


 スッと目を細めると、おどけた様子で芹澤の後を追いかける。


「陰と陽が交わり、覚醒の時が訪れたか……冬夜くん、メイくん。君たちの手に両世界の命運は託された! さあ、我々の予想を超える結末を見せてもらおう!」


 去り行くレイスたちを眺め、混沌とする状況に心踊らせる学園長。

 謎の空間で出会った彼女とメイの関係は謎に包まれたまま……

 いまだ世界の命運を託されたことを知らぬ、少年と少女。

 幻想世界と現実世界、二つの世界は終焉に向かうのか、それとも違う結末がまつのか?

 事態は大きく動きはじめた、予測のつかない未来へと……


 第二章 ――完――

連載開始から約一年、二章完結することができました!

ここまで本当に皆様に支えていただきましてありがとうございます。

ここから冬夜たちは学園を飛び出し、幻想世界・現実世界という並行する二つの世界の真実へ迫っていきます。

まだまだ先は長いですが、これからもお楽しみいただけるように頑張ります!


今後の予定ですが、この後は閑話3~4話を予定しております。

ソフィーちゃんがメインのお話です!

普段の日常をソフィーちゃん目線で描いたお話となります。


閑話の後は満を持して第三章「幻想世界」編がスタートです!

今後とも頑張ってまいります。よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
 第二章完結まで読ませて頂きました。  毎回文末の『引き』に、続きどうなるの? と悶えながら読ませて頂いております。これ、最新話に追いついたら、次が楽しみすぎて困るやつですね。  少しずつ明かされてい…
Xの戦闘シーン募集から来ました。 いいですね!優勢からの劣勢、二転三転する戦いからの、学園長の策略に、主人公の覚醒でケリをつける。 いろんな展開が詰まってて面白かったです!
Xからきました。作品紹介有難うございました! こちらの作品は一章を拝読(応援済)していましたので、今回は二章を読ませていただきました。 学園長先生と創造主の因縁および対立が浮き彫りになった感じですね。…
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