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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

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第21話 魔法を消去る者(ソーサリィ・ブレイカー)『アビー』

 息を切らしながら走ってきた冬夜を見つけ、笑みを浮かべる学園長。


「思ったよりも早かったな。僕としてはもう少し遊んであげても良かったけど……ここからは未来ある若者に譲るとしよう」

「おや、彼に譲ってしまってよろしいのですか? では……後程お相手をして頂きましょう」

「いやいや、アビーちゃん? 彼を甘く見ていると痛い目にあうよ」

「学園長、なぜ、()()()がいるんですか?」


 学園長と対峙していた人物に冬夜は混乱した。先ほどまで言乃花たちと戦闘を繰り広げていたはずのノルンそっくりな人物がいたからだ。


「冬夜くん、彼女はノルンくんではないよ」


 学園長の一言により冬夜はパニックになる。なぜならノルンは今も言乃花たちと交戦中のはずである。では、目の前にいる少女は一体誰なのか?


「自己紹介が遅れましたね。私はアビー。あなたが冬夜さんですか? さあ楽しませてくださいね」

 

 流れるような動作で一礼をするアビー。冬夜に向けられた視線は、新しいおもちゃを見つけた子供のように純粋な感情で溢れている。これが冬夜の判断を鈍らせた。今まで対峙してきた妖精たちとは明らかにまとう空気が違うのだ。善悪の判断がまるで無い、自分が楽しめるかどうかしか興味がない、そんな純粋な感情だけがその瞳を支配していた。


(明らかにヤバいやつだろ……こんなのどう対処すればいいんだよ)


 焦る冬夜を見透かしたように、クスリと笑うアビー。その姿が一瞬で目の前から消える。呆然と動けないでいる冬夜の前を、次の瞬間赤茶の髪が鋭くよぎった。現れた学園長が瞬時に結界を展開し、直後、金属がぶつかり合うような甲高い音が響き渡る。


「混乱する気持ちはわかるけど、敵を前に無防備な姿をさらすのは良くないよ。それに、アビーくんも不意打ちとは感心できないよね?」

「あら? 不意打ちではありませんよ。こちらからのご挨拶も必要でしょう?」


 表情は変わらず薄く笑みを浮かべているようにみえる。しかし、その目には悔しさがにじみ、いっそう殺気を強めていく。アビーが一歩後ろに下がったことを見届け、冬夜に声をかける。


「さて、僕が手出しを出来るのはここまでだ。彼女がここに来るということは、まだ何か裏がありそうだからね……」

「ありがとうございます。……わかりました。今は目の前の相手に集中します」


 冬夜はアビーを見据えるとスッと目を細め、力を集中させる。ロザリオの中心が光りはじめ、全身を闇の力が覆う。すると右手に漆黒の短刀(ダガー)が形成された。それをしっかりと握り込むと、ぐっと構える。


「闇の力ですか。たしかに私とは相性がよろしくないですね。しかし、付け焼刃程度の力では私には通用しないですよ」


 僅かの間のにらみ合いの後、先に動いたのはアビーであった。一瞬で間合いを詰められ、首筋にポイズニング・ダガーが襲い掛かる。しかし、冬夜はその動きを読んでいた。瞬時に身をひるがえし、がら空きになったアビーの背後を狙う。辺り一帯の霧をもつんざく甲高い音が響き渡る。


「ちっ、今度はうまく入れられたと思ったんだけどな」

「ふふふ……悪くないですよ、まだまだ甘いですね。この程度の攻撃は読んでいましたよ」


 間髪いれずにダガーによる突きが襲う。目で追うことは不可能なその一撃を、()()()()()()()()()()()()()。だが不意に魔力に違和感を感じる。その感覚を頼りに魔力の乱れをたどると、いつの間にか左腕の制服が切られている。驚いたことに、その部分だけ力が消失していた。


(そんなバカな……防護を貫通……いや、そこだけ魔力が消えている?)


 冬夜は闇の魔力を纏うことにより防御力が上がっている。普通の刃物であれば傷つくはずがない。


「あら? そんな不思議そうな顔をしてどうしたのでしょうか? 言い忘れていましたね。私の持つポイズニング・ダガーには()()()()()()があるのですよ」

「全く反則級の武器だな……だけど、それがわかれば対処も可能だ」


 冬夜は持っていた短剣(ダガー)をアビーに向かい投げつける。


「闇雲に投げるなど愚の骨頂ですわ。こんな物叩き落せば……なっ!」


 投げつけられた短剣(ダガー)に意識をとられ、戦闘慣れしているという慢心がわずかな隙を生む。その一瞬を冬夜は見逃さなかった。力を地面にたたきつけ、その反動を利用し、アビーの懐に入りこむ。最初になげた短剣(ダガー)は囮であり、最初から狙っていた通り右手に魔力を乗せ、みぞおち目がけて叩き込んだ。


「がはっ……」


 その威力は魔力により何倍も強化されており、アビーは数メートル吹き飛ばされたところでようやく止まった。


「ゲホゲホ……なかなかやりますね……しかし、この状況ならどうしますか?」


 冬夜は何を言っているのか全く理解できなかった。投げた短剣を回収、追撃のために魔力を込め始めた時、そこにいるはずのない人物が視界に入る。


「メ、メイ!? 何でここにいるんだ?」


 まるで何かに操られているかのように目は虚ろで、フラフラと歩いてくる。


「さあ、どうしますか? メイさんを巻き込むかもしれない状況で……あなたはさらに攻撃を放てますか?」


 不敵な笑みを浮かべるアビー。

 メイにいったい何が起こったのか……

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