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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

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第18話 因縁の対決と忍び寄る脅威(中編)

 冬夜たちとフェイによる戦いの火蓋が切られたころ、もう一方の戦いも幕を開ける。

 立ち込める土煙を言乃花が吹き飛ばそうと右手に魔力を込め始めた時、背後から現れたレイスが声をかけた。


「魔法を使うのは止めたほうがいいっすよ。ちょっと()()()()()がするっすね」

「さすが場馴れしているわね。異様な感じ?」

「自分こう見えても危機管理能力だけは高いっすから。……おっと、あちらさん(ノルンさん)は準備万端みたいっすよ」


 レイスは正面を凝視したまま警戒を解かない。少しずつ薄れていく土煙の中からゆっくりと歩み寄る姿が明らかになる。


「ふふふ、そこまで警戒されなくてもよろしいのでは?」


 二人から数メートル離れた位置で立ち止まり、嘲笑うような笑みを浮かべるノルン。迷宮図書館で対峙した時に着ていた学園の制服姿ではなく、フェイと色違いの紺色のローブを身にまとっている。


「あなたの領域内にまんまと引き込まれてしまったということかしら?」

「さあ、どうでしょう? 以前のように魔法が使えないようにはしていないですよ。思う存分に全力を出して頂いて、楽しみましょう」

「あなたの言葉を信用するほどバカじゃないわ!」


 今にも飛び掛からんとする勢いで言乃花が前に出ようとしたが、レイスが左手で制止する。


「わざわざ相手の挑発に乗ることはないっすよ。自分がひきつけておきますから。まずは状況の把握をお願いしますよ」


 言乃花に告げると、スッと右手に懐刀を持ち、腰を低く落とし構える。そして、ノルンを見据えレイスが仕掛ける。


「いくっすよ!」


 瞬きをすることすら許さないほどの勢いで、間合いを詰める。ハッとした表情を浮かべたノルンだが、気が付いた時にはレイスの懐刀が正確に首元を横一線に切り裂いたはずだった。


「手ごたえは……ないっすね」

「もちろん予測済みですよ。先ほどのフェイとの戦闘を見ていましたからね」

「やっぱり一筋縄ではいかないっすか」


 レイスの頭上から声が響く。先ほど切り付けたのはノルンが作り出した幻影であり、本体は最初から上空に浮いていたのだ。


「まあ、確認ができたので良かったっす。高みの見物している余裕はないと思うっすけど……」

「なんのことを言っているのでしょう……チッ」


 話し終える前に、横に顔を逸らし直撃を逃れる。その刃の発射された方角に視線を向けた時、ノルンの目に驚愕の光景が目に入る。全方位を風の刃で囲まれていたのである。


「いつの間に……ちょっとよろしくない状況ですね」

「絶対に逃がすわけにはいかない! いけ、烈風なる(ゲイル)至高の爪(クロー)!」


 言乃花の声と同時に、風の刃が一斉に襲い掛かる。しかし、ノルンは余裕の表情を崩さない。


「風の特性を生かした『かまいたち』のようなものですか。まだまだ練度が足りてないのではないでしょうか。もう少し楽しめるかと思ったのですが……」


 小さく息を吐き呟くと、スッと右手を前にあげる。次の瞬間、一斉に襲い掛かる無数の風の刃がノルンに届く目前で霧散していく。


「お忘れでしたか? 私の力は音を操ります。少し空気の微振動を起こしてあげればこの通り、詰めが甘いですね」

「さて、()()()()()のはどちらでしょうか? 地上まで急降下するための覚悟はいいっすか?」


 上空からレイスが懐刀を構え、稲光のような勢いで急降下する姿が目に飛び込んでくる。

 そう、ノルンを取り囲んでいた風の刃は囮であり、レイスとの連携が目的だったのだ。


「今度は外さないっすよ。くらいやがれ! 断罪の(エルキエスド)業火(・ゼロ)

「なっ」


 レイスの刀身に青白く燃え上がる火柱が出現する。言乃花の風魔法により加速したそれは勢いよく襲いかかり、爆風とともにノルンは地面にたたきつけられた。その衝撃で辺り一帯に張り巡らされていた結界が一瞬で吹き飛び、周りの木々が根元から折れて吹き飛んでいく。


「ハアハア……これは、やったっすかね?」

「まだ油断はできないわよ」


 立ち込める熱気の中、ノルンの姿が見えない。一刻も早く状況を把握しようと、素早く周囲に視線を巡らせた言乃花の目に衝撃の光景が飛び込んできた。


「え? うそ? なんで?」


 信じられない状況に言葉を失い、薄い刃物で背中を撫でられるような戦慄が走る言乃花。

 彼女が目にした衝撃の光景とは……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすさそのままに、二対一の戦闘を駆け引きや動作ありで、くどくない分かりやすい文章で書けるの凄く尊敬です! 言乃花とレイスのコンビを相手に出来るノルンの魔法、まだまだ秘密が隠されていそ…
[一言] 終わらせ方が毎度とても気になるフレーズ!
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