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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第七章 破滅の協奏曲(ペリシュ・コンチェルト)

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第24話 激突の余波と冬夜の行方

 フェイと謎の女性の魔法が激突したことにより、墓地全体が煙に包まれてしまう。とっさに地に伏せたことで、影響を最小限に抑えることに成功した芹澤がゆっくり立ち上がる。


「凄まじい爆発だったな……あの女性はいったい誰なんだ?」


 煙が充満して絶望的な視界の中、右手を顎に当てると先ほどの戦いを思い返す。


(実に興味深い魔法の応酬であったが……あの女性の()()()()()()()()。冬夜くんと同じ属性を感じるのだが……)


 思考の沼に沈みかけたそのとき、すぐ近くで何かが動いた気配を感じ取る。


「ん? 誰かいる……あ! メイくんは大丈夫なのか?」


 爆発が起こる直前、近くにいたメイのことを思い出すと周辺を慌てて見渡す。しかし、一メートル先すら確認できないため、立っている位置から動くのは危険すぎる状況だった。


(チッ……これだけ絶望的な視界では、むやみに動くのは逆に悪手だ……)

「メイくん、無事か? もし聞こえていたら返事をしてくれ!」


 何も見えない空間に向かって芹澤が大声で叫ぶが、一向に返事は返ってこない。


「いたら返事をしてくれ! 声を出せないのなら、近くの石でも何でもいいから投げて音を出してくれ! こちらから探し当てる!」


 再び声を張り上げて訴えると、かすかに右手の方向から石がぶつかるような音が聞こえた。


「右だな! いいか? 今いる場所から動くんじゃないぞ! できることなら近くの石を投げ続けてくれ!」


 右手の方向を向いた芹澤が大声で問いかけると、呼応するように石が連続して投げられる音が響いた。


(すぐ近くにいるのは間違いないが、メイくんとは限らない……いざというときに備えて警戒は解かないでおくか)


 小さく息を吐き、両手に魔力を込める芹澤。一歩ずつ慎重に音の方向へ歩みを進める。響く音は次第に大きくなり、やがて薄っすらと地面に座り込む人影が見えてきた。


「む? 誰かいるのか?」

「プロフェッサーさんですか? 私です!」

「メイくん、そこにいるのか? 今行くぞ!」


 聞き覚えのある声に、芹澤の足取りが一気に軽くなる。人影へ駆け寄ると、地面に座り込むメイの姿があった。


「メイくん、大丈夫か?」

「はい! ビックリして動けなくなっちゃいまして……」

「そうか。あれだけの爆発だから無理もない。それより怪我や体の不調はないか?」

「プロフェッサーさんに言われて地面に伏せるとき、転んで膝を擦りむいたくらいです」


()()()()()()()()()()程度……? 爆心地にはメイくんのほうが近かったはずなのに、服はほとんど汚れていない……それどころか膝の傷ですら、もう治りかけているように見える……)


 芹澤はメイを見て表情を険しくする。彼女の言葉通り両膝は赤くなっていたが、あれだけの爆発にもかかわらず服に擦れた痕跡は皆無だった。


(どういうことだ? 俺の位置ですら小石や砂が飛んできて、多少の擦り傷はあるというのに……理解不能な事象だ……だが、面白いじゃないか! このプロフェッサーへの挑戦状と受け取ったぞ!)


「プロフェッサーさん? どうされたんですか?」

「ん? 何を言っているんだ? 別に普通にしているだろう」

「いえ……険しい顔をされて考え込んでいたと思ったら、急に笑い始められたので……」

「そんなことは……」


 メイの指摘に顔へ手を当てると、自然と口角が上がっていることに気づく。


「なんということだ……無意識のうちに表情に出ていたとはな」

「ふふ、すごく楽しそうな顔をされていましたよ。そんなに嬉しいことがあったんですか?」

「ああ、非常に興味深い現象を発見したのでな。様々な検証を行ってきたプロフェッサーだが、まだ未知の領域が存在するとは……本当に面白い!」


 芹澤の高笑いが空間に響き渡り、メイはその姿を笑顔で見つめていた。


「本当に楽しそうですね。プロフェッサーさんなら、できないこともできるようにしちゃいそうです」

「何を言っている? このプロフェッサーに“不可能”という言葉はない!」

「そうですね!」


 顔を見合わせた二人が声を出して笑っていた時、メイが思い出したように問いかける。


「あ! そういえば冬夜くんを見かけていませんか?」

「残念ながら……視界に映った範囲では彼の姿は確認できなかった」

「そうですか……あんな爆発に巻き込まれてしまって……無事だといいんですが……」

「ふむ、たしかに一番近くにいたからな。何もなければよいのだが……」


 二人が心配そうに語り合う中、頭上から聞き覚えのない声が降ってきた。


「心配ありませんよ。この程度のことでどうにかなるほど弱くはありませんから」

「え?」

「だ、誰だ?」


 二人が慌てて顔を上げると真っ白な着物をまとい、狐のお面を付けた女性が空中に浮かんでいた。


「あ、冬夜くんが!」


 声を上げたメイが指を差した先にいたのは、力なく手足を垂らして肩に担がれた冬夜の姿だった。


 気を失っているように見える冬夜は無事なのか?

 突然現れたこの女性は味方なのか、それとも……

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