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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第七章 破滅の協奏曲(ペリシュ・コンチェルト)

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第22話 異変の始まりと謎の乱入者

 冬夜とメイの魔力が乗った矢が直撃し、空中で大爆発が起きる。


()()()()()()()()()()()()だと……しかも、椿家で見たものとは比べ物にならない威力だ。実に面白い研究対象が現れたな」


 二人の融合魔法を目の当たりにした芹澤が笑みを浮かべていると、冬夜とメイの声が聞こえてきた。


「ちょっと派手にやりすぎたかな?」

「思ったより威力が出たね、驚いちゃったよ」

「まさか……ここまで大きな爆発になるとは思ってなかった。少し前に言乃花の家で使ったときとは別物だ」

「そうなんだ。でも、クロノスさん大丈夫かな?」

「心配する必要はないと思うぞ。この程度でどうにかなるようなヤツじゃないからさ」


 煙の中を探り探り進む二人の様子を見た芹澤は小さく息を吐く。


(メイくんはさすがだ……冬夜くんの魔力をうまくコントロールしている。だが、敵の安否を気にするあたりはいつも通りか……さて、後輩たちを迎えに行くとするか)


 歩いている二人に声をかけようとした時、異変に気づいた芹澤が大声で叫ぶ。


「冬夜くん、メイくん! 今すぐその場に伏せろ!」

「え?」


 芹澤の声に驚きながら、二人は揃ってしゃがみ込んだ。次の瞬間、冬夜の頭上を何かがかすめ、数メートル後方で爆発が起きる。


「な……急に爆発した? なんで?」

「冬夜くん、大丈夫?」

「ああ、副会長の声が聞こえなかったら直撃していたかもしれない……」


 頭を伏せたまま会話する二人だったが、頭上から聞き覚えのある声が響いた。


「ちょっと様子を見に来たら……クロノスも油断しすぎだよ」

「こ、この声は……なんでお前がいるんだ、フェイ!」


 冬夜が勢いよく立ち上がり、まだ煙が立ち込める空を睨みつけて叫ぶ。


「おや? 誰かと思えば……こんなところで何をしているのでしょうか?」

「それはこっちのセリフだ!」


 フェイの声を聞いた冬夜が頭上に右手を掲げ、魔力を集約させる。空中を覆っていた煙が渦を巻き始め、徐々に晴れていく。


「そこだ! 穿て、陰陽の(インシュレット・)一輪花(ブレイク)!」


 冬夜が叫ぶと同時に右手から光の帯を纏った矢が、煙を切り裂くように一直線に飛んでいく。


「ふん、二度も同じ攻撃が通ると思うな。相殺(ブラスト)!」


 フェイが短く詠唱すると、冬夜の放った矢が空中で急停止した。


「先ほどと比べて威力も何もかもが不足している……こんな子供だましが僕に通用するわけがない。消失(デスペル)!」


 詠唱が響くと矢の先端から粒子が霧散するように消えていく。同時に空を覆っていた煙が完全に晴れ、フェイの姿があらわになる。見慣れた濃い緑のローブに身を包み、黄色い髪が風に揺れていた。冬夜たちを見下ろす表情には笑みが宿り、周囲には意識を失ったクロノスと響の姿も浮かんでいる。


「お、親父……それにクロノスまで?」

「バレてしまいましたか。ご安心ください、二人とも命に別状はありません。起きていられると面倒なので、()()()()()いただいているだけですよ」

「……なんだと? それなら話が早い。親父には聞きたいことが山ほどある……ここでお前を倒して、親父を奪い取ればいいだけだ!」


 響の姿を見た冬夜の全身が小刻みに震え、足元から黒い魔力が燃え広がるように円形に広がっていく。


「冬夜くん、ダメ! 落ち着いて!」

「メイ、口出しは無用だ。アイツとはいつか決着を付けなければならないんだ……」


 メイが止めに入ろうとするが、冬夜の耳には届かない。魔力はさらに勢いを増し、近づく者を拒むほどの圧を放ち始める。


「ふふふ……面白いですね。お会いするたびにどんどん強くなる……そうでなくては意味がない! お前に刻まれた屈辱は忘れていませんよ……さあ、僕を楽しませてくれ!」

「望むところだ! 副会長、今回は邪魔しないでくださいよ」


 冬夜が視線を横に動かすと、芹澤に釘を刺すように言った。


「前回のことを含めて相当恨まれているみたいだな……だが、こんな貴重なデータが集まる機会をプロフェッサーが止めると思うか? 答えはノーだ! 存分に暴れるがいい!」

「その言葉を聞いて安心しましたよ。以前のようなヘマはしませんから……」

「ふふふ……頼もしい限りだ! メイくん、近くにいては危険だ。これから起きる事象に巻き込まれたらひとたまりもないぞ」

「は、はい……プロフェッサーさん、大丈夫なんでしょうか?」


 芹澤の指示に従い駆け寄ったメイが心配そうに問いかける。


「何も心配するな。口で説明するより、見ていればわかる。すぐに理解できるはずだ」


 意味が呑み込めず首を傾げるメイの足元で、地面が唸るように震え始める。


「今日こそお前に引導を渡してやる、フェイ!」

「望むところです! さあ、私を楽しませてください!」


 フェイが右手を掲げると稲妻が十字に走り、三つ又の槍のような形に整えられていく。その様子を見た冬夜は笑みを浮かべ、両手を体の前に突き出して魔力を集め始める。黒く輝く日本刀のような武器が姿を現した。


「……一歩遅かった? いや、まだ間に合いそうですね」

「え? 誰?」


 地上で見上げていたメイの耳に、聞き覚えのない声が届いた。

 誰が介入しようとしているのか……?

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