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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第七章 破滅の協奏曲(ペリシュ・コンチェルト)

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第6話 クロノスの策略と謎の襲撃

「まさか気が付かれていたとは……計画を少々変更しなければなりませんね」

「計画? 何の話だ?」

「いえ、たいしたことではないのでお気になさらず。それよりも聞きたくないのですか? あなたのお父様が()()()()()()()()という計画について」


 呟きを聞いた冬夜が怪訝そうに聞き返すが、ノルンはまるで何事も無かったかのように話を続ける。


「……あのクソ親父が関わっているだと?」

「ええ、その認識であっておりますよ。そのためにクロノスと行動を共にしていると言っても過言ではありません」

「何か裏があるとは思っていたが……いったい二人は何を企んでいるんだ? そしてお前は何を知っているんだ?」

「ずいぶん落ち着きがなくなっていらっしゃいますがどうしたのでしょうか?」


 食い入るように聞き返す冬夜を見て、腕を組んで笑みを浮かべるノルン。


「冬夜くん、落ち着いて! 感情に身を任せて聞いても相手の思うつぼだよ」


 わざと返答を焦らすノルンに対し、苛立ちを隠そうとしない冬夜。そんな二人のやり取りにメイが割って入る。


「う……たしかにメイの言うとおりか……」

「うん、お父さんのことだから仕方ないよね……でも、このまま話を進めても肝心なことは聞けないと思うの」

「……」


 メイに痛いところを突かれて何も言えず、顔を背ける冬夜。


「焦っちゃう気持ちもあるよね、不安なこともたくさん……だから、今は私を頼ってほしいんだ。一人で抱え込まないで!」


 その言葉に冬夜は真剣な眼差しをメイに向ける。


「ごめんな、メイ……」

「大丈夫だよ。ちょっと落ち着くまで待っていてね」


 落ち込む冬夜に優しく声をかけると、ノルンのほうへ向き直る。


「あら? 冬夜くんではなくメイさんがお話相手になっていただけるのですね」

「はい、どこまでお聞きできるかわかりませんが……」

「かまいませんよ。ご質問があればどうぞお話ください」


 必死に立ち向かおうとするメイに対し、笑顔を崩すことなく答えるノルン。


「ありがとうございます。お言葉に甘えてお聞きします……冬夜くんのお父さんが関わっている計画とおっしゃいましたが、ノルンさんたちも詳細な内容はご存じないのではないでしょうか?」

「ふふふ……ずいぶん面白い視点をお持ちですね」


 メイの質問を聞いたノルンの表情が一瞬凍り付く。そして、引きつった笑みを浮かべて質問を返す。


「どうして私たちが詳細な情報を知らないと思われたのでしょうか?」

「確信はありませんが、ノルンさんは慎重に物事を進められる方だと私は思うのです」

「メイさんからお褒め頂けるとは光栄です。たしかにあのバカども(クロノス・フェイ)とは違い、計画的に進めますよ」


 メイの賞賛にまんざらでもない様子のノルン。


「そうですよね。だからこそ違和感が拭えなかったんです。ノルンさん自身も魔法が使えない空間と知っていながら、私たちに手の内を明かすようなお話をされたことが……」

「……なるほど、そういう事ですか」


 メイの指摘に対して目を細め、口元を吊り上げながら答えるノルン。


「違っていたらすいません……」

「いえ、間違ってはいませんよ。アホが考える計画に一ミリも興味はありませんが、()()()を利用するなど言語道断……ですから、すべてを潰して差し上げようと考えたわけです」


 話し終えると同時に黒いオーラのようなものがノルンからあふれ始める。


「ヤツの計画を成功させるには本物の虚空記録層(アカシックレコード)が必要不可欠……しかし、封印されている場所へたどり着く条件を正攻法でクリアはできないのです」

「正攻法ではダメ……? どうしてクロノスさんには無理なんですか?」

「ええ、なぜかということをお答えすることはできません……そんな時、白羽の矢を立てたのが、響さんです。ヤツは虚空記録層の一部と偽った資料を片手におびき出したのですよ、失った人を取り戻せると言って」

「失った人を取り戻す……ま、まさか!」


 後ろに控えていた冬夜がノルンの言葉を聞いて、メイを押しのけるように前に出る。


「響があなたを置いて行方をくらませたのは、全てクロノスの策略です。まさか自分が見せられたのが偽物で、計画に利用されているとも知らず……実に滑稽なものです。しかし、ここにきて予想外の問題が発生したため、表に出てこなくてはならなくなったというわけですよ」

「予想外の問題だと? その話は本当なんだろうな?」

「この期に及んで間違った情報を話して私にメリットがあると思いますか? 予想外の問題とは……」


 ノルンが話を進めようとした時、黒い矢のような物が三人の間を駆け抜ける。そして、地面に着弾すると土煙を巻き上げ、全員の視界が遮られた。


「メイ、大丈夫か?」

「う、うん。冬夜くんが前にいてくれたから……」


 何が起こったのかわからない二人が困惑する中、慌てることなく矢が飛んできた方角を見つめるノルン。


「なるほど……これ以上は話すなということですか」


 半歩先も見えない視界の中、ノルンの首筋を目掛けて一筋の光が走る。すると、まるで最初から知っていたかのように華麗に身を翻して躱すと楽しそうな声を上げる。


「ふふふ、私に気配を悟られずに攻撃を仕掛けるとは……さすが深淵の(アビス・)暗殺者(アサシン)の名は衰えておりませんね」

「お前さんに褒められてもうれしくはないのう。それにあまり余計なことを話されても困るんじゃよ」

「え? じいちゃん? いったい何が起こっているんだ……」


 この場にいるはずのない紫雲の声に驚きを隠せない冬夜。煙によって視界は遮られ、数メートル先にいるはずのノルンの姿をとらえることすらできない。


「冬夜が近くにいたとは……少し計画が狂ってしまったな」

「どうされたのでしょうか? 楽しい時間はこれからですよ」


 いまだ姿の見えない紫雲に対し、心から楽しそうに話しかけるノルン。

 彼女が語ろうとした内容と紫雲による襲撃の関係とは……

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