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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第七章 破滅の協奏曲(ペリシュ・コンチェルト)

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第5話 明かされ始めた謎の計画

「べ、ベリシュークリーム? なんだ、そのよくわからない計画は?」

「……ペリシュ・コンチェルトですよ」


 豆鉄砲を喰らった鳩のような顔で聞き返す冬夜に対し、額に右手を当てて大きく息を吐くノルン。そのまま呆れた声で話し始める。


「ハァ……わかりやすく言えば『破壊への協奏曲』でしょうか」

「なんだそりゃ? お前たちの考える名前はわかりにくいというか、ちょっと拗らせた感じがするというか……」

「……言っておきますが、私が付けたわけじゃないですからね!」


 説明を聞いた冬夜が冷めた視線を送りながら話していると、大声で遮るように否定するノルン。


「だいだいこんなアホなことを考えるのはバカ(クロノス)しかいませんよ。だいたいナルシストなんですよ! 『ふっ、仕事ができる俺はカッコイイな』とか口に出すんですよ? ほんと気持ち悪い……私はこんな名前つけるのは反対なんです! どうやって創造主(ワイズマン)様を丸め込んだのか知りませんが、以前も……」

(しまった……またやってしまった……)


 再び地雷を踏み抜いたと冬夜が気付いたのは、すでにノルンがヒートアップした後だった。両手を握りしめて身振り手振りを加えて怒り出したかと思えば、悲しげな表情で大きくため息をついたりと普段の余裕たっぷりな態度からは想像できない。


「……冬夜くん、どうしたらいいんだろう?」

「もうそろそろ止めないといけないよな……」


 ノルンが語り始めてからすでに十分近くになろうとしていた。最初は静かに聞いていた冬夜とメイだが、一向に止まる気配がない様子に困惑の色を隠せない。ここで、意を決した冬夜が恐る恐る話しかける。


「……あのさ、ノルンさん。ちょっとお話をしてもいいかな?」

「あのアホども(クロノスとフェイ)の相手をするのは疲れるんです! この間もアビーが……あら? そんな畏まった口調でどうされたのでしょうか?」

「いや、お前の日々の苦労と苦悩はすごくよく分かった。でも、俺たちを呼び出したのは別の目的があったんじゃないのか?」


 冬夜の指摘を受け、顎に手を当ててしばらく考え込むノルン。


「そうでしたね。私としたことが失念しておりました。それでどこまで説明いたしましたか?」


 ノルンのすっとぼけた返答に崩れ落ちそうになりながら語気を強める冬夜。


「どこまで説明いたしましたかじゃねーよ! ペリなんとかかんとかって計画があるってことしか聞いてないぞ」

「ふふふ、ちゃんとわかっておりますよ。この程度で語気を強めるとは、少し冷静さが足りていないのではないでしょうか?」

「ふざけんな! お前の愚痴を延々と聞かされる身にもなってみろ!」

「あらあら、ずいぶんストレスが溜まっているようですね。少し体を動かしてスッキリするというのはどうでしょうか?」


 大声で訴える冬夜をさらに煽る発言を繰り返すノルン。怪しげな笑みを浮かべると周囲の木々が揺れ始め、葉が擦れる音が響き始める。


「やはりそうなるか。メイ、俺の後ろから動くなよ」

「う、うん……」


 ノルンを睨みつけながら魔力を高めていく冬夜。


「実に素晴らしいですよ。最初に迷宮図書館で対峙した時とは、別人のようです」

「お前に褒められてもうれしくないな。何を企んでいるのか、力尽くで聞き出すしかなさそうだ!」

「面白いことを言いますね。できるものならやって見せてください」

「ああ……思いあがったその態度を後悔させてやる!」

「ふふふ……私を楽しませてくれるというのですね。さあ、始めましょうか!」


 冬夜の足元から黒い魔力が立ち上り、一触即発の状態になった時だった。


「冬夜くん、ちょっと待って!」


 後ろに控えていたはずのメイが、火花を散らす二人の間に割って入る。そして、振り返ると両手を広げて冬夜の前に立ちふさがった。


「メイ、危ないからそこを退くんだ!」

「いや! 退かないよ」

「危ないって言ってるだろ! ここまでバカにしたあいつ(ノルン)を一発ぶん殴って……」

「落ち着いて私の話を聞いて!」


 制止を振り切って冬夜が一歩前へ踏み出そうとした時、メイの叫びが響く。今まで見たことも無い怒りに満ちた表情で止めに入る彼女の様子に驚き、思わず動きを止める冬夜。


「やっと止まってくれた……冬夜くん、無茶しようとするのは止めてって前に言ったよね?」

「いや、ああ、うん……」

「今までいろんなことがあったから怒りたくなる気持ちはわかるよ。だけど……もう二度と前みたいな目にあってほしくないの」


 目に涙をためて必死に訴える姿を見て、冬夜の脳裏に蘇ったのはアビーとの一戦。気を取られた一瞬の隙を突かれ、メイの前で瀕死の重傷を負ったのだ。


「ごめん……もう二度と悲しませないと約束したんだった」

「思い出してくれてよかった……あのね、もう一つ聞いてほしいことがあるんだ」


 先ほどまでの悲しげな表情は消え、真剣な眼差しで冬夜を見つめるメイ。


「どうしたんだ? 何かおかしなことでもあったのか?」

「うまく説明できないけれど……冬夜くんがあのまま魔法を使おうとしても、うまく発動できなかったと思うよ。もしかしたら()()()()()()かもしれないの」

「は? そんなはずは……魔力も普通にコントロールできていたし、ましてや暴発なんて……」


 話を聞いた冬夜は目を見開き、その場に立ち尽くす。その様子を見たメイが振り返り、笑みを浮かべているノルンへ問いかける。


「ノルンさんは気が付いていらっしゃいましたよね?」

「メイさん、素晴らしい洞察力に驚きました。なぜ魔法が使えないとお気づきになられたのでしょうか?」

「ありがとうございます。自信はありませんが……理由は二つあります。一つめはこの公園には不思議な力が溢れていること。二つ目は最初から私たちと争う気がないからです」

「なかなか面白い解答ですね。それでは、お聞きしましょう。なぜ私が戦うつもりがないと思われたのでしょうか?」

「はい。ノルンさんから以前は感じた黒っぽいオーラが見えなかったんです。たぶん、この不思議な力も関係しているのかなと……」


 メイの指摘にノルンの目が一気に開かれる。

 公園を満たしている不思議な力には何の関係があるのか?

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