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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第七章 破滅の協奏曲(ペリシュ・コンチェルト)

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第4話 ノルンの苦悩?

「ふふふ……そんなに怖い顔をしなくても大丈夫ですよ」

「お前の言う事を信用できるわけないだろうが!」


 噛みつくように言う冬夜に対し、笑みを崩さないノルン。両手に持っていたビニール袋をベンチに置くと立ち上がり、ゆっくり冬夜たちのほうへ歩みを進める。


「ここまで信用がないとは……悲しいことですね」

「お前らが今までやってきたことを考えれば、当然の結果だろ。メイ、俺の後ろから動くんじゃないぞ!」

「うん、冬夜くん」


 メイを守るようにノルンの前に立ちはだかる冬夜。


「優しいのですね、冬夜くん……しかし、ここまで言われるのは少し心外です。私とアビーは自分の信念に基づいて動いているだけですよ。アホのクロノスのように後先考えず、行動するような愚かな真似はしません。ちゃんとお話もせず、いきなり攻撃を仕掛けたりは」

「一理あるが……もう一人いるだろ?」


 ノルンの理論に納得しかけた冬夜だったが、因縁の相手ともいえる存在を思い出す。


「ああ、フェイのことですか。アレは何も考えてない正真正銘の単細胞(バカ)ですよ、本当に……もう少しない頭を使って動いてくれたら、こちらとしても動きやすいんですが……」


 冬夜の問いかけに足を止め、額に手を当てて大きなため息をつくノルン。そして、何かを思い出したかのように肩を震わせながら語気を強める。


「だいたいあのバカが勝手にお菓子を食い尽くしたことが原因なんですよ! あれほど勝手に食べるなときつく言っておいたのにもかかわらず、私たちが大切にとっておいたチョコレートまで……なかなか売っていないんですよ? 制裁を加えた後に買いに行かせれば、指定したお菓子とは全く違う物を買ってくる始末! 『箱の色が一緒だし、チョコレートならどれも同じじゃん』とか言い出すんですよ?」

「……」


 ノルンの止まらない愚痴に唖然とする冬夜。後ろから顔を覗かせていたメイも困惑した表情のまま固まっていた。そんな二人の様子を気に留めることも無く、決壊したダムのように止まらない。


「そもそもですよ? あのバカが勝手に食べなければ何の問題も無かったのです。いつも『考えて行動しろ』と言っているにもかかわらず、無鉄砲に突っ走る……私たちがどれほど教育してあげたと思っているのでしょうか。全く懲りずに同じことを繰り返して……まあ、今回は私よりもアビーのほうが激怒しておりましたし、お仕置きと再教育は任せてきました。これで少しは……おや? どうされましたか?」


 我に返ったノルンが口を半開きにしたまま固まっている冬夜たちを見て、不思議そうに問いかけた。


「あ、いや……フェイならやりかねないと思ってな……」

「勝手に食べちゃうのは良くないと思います……」

「さすが賢明なお二方です。理解が早くて助かりますわ」


 二人の同意を得られ、満足げな笑みを浮かべるノルン。ここである事に気が付いた冬夜が恐る恐る問いかける。


「ず、ずいぶんご機嫌な様子だが……なんでお前は()()()()()を着ているんだ?」

「いいところに目を付けましたね。普段の私たちの服では少々目立ちすぎてしまいます。そう、私たちのように美しさが際立つ存在ですと」

「……」


 ノルンの自信たっぷりな発言に言い返す言葉が見つからない冬夜。


「自然に立ち回るためには、この服(学園の制服)を着用するのが最適なのです。全く怪しまれることなく行動できますからね」

「……いや、真夏にジャケットを着るのは逆に目立つんじゃ……」

「まあ、いいでしょう。お目当ての物は確保できましたし、非常に種類が豊富で満足です。用事の大半を無事終えたので、私はこれで帰るとしましょう」

「ちょっと待て! お前は何のためにわざわざ俺たちを呼び出したんだ!」


 一方的に話を終わらせ、背を向けて歩き出すノルンに冬夜のツッコミが公園に響く。すると何かを思い出したように振り返り、二人に微笑みかける。


「そんなに大きな声を出さなくてもちゃんとわかっておりますよ」

「いや、絶対そのまま帰ろうとしたよな?」

「不思議なことをおっしゃいますね? ちょっとしたジョークもわからないなんて……」

「何がジョークだ……こっちのほうが本題だろうが」


 肩を落として項垂れる冬夜の様子に腕を組み、目を細めて微笑んでいるノルン。


「ずいぶんお疲れの様子ですが、大丈夫でしょうか?」

「誰のせいでこうなったと思ってるんだよ! さっさと本題を話せ!」


 顔を上げると冬夜は鋭い眼光を飛ばす。


「あらあら、そんなに大きな声を上げなくても聞こえています。もっと冷静にならないと大切なことを見落としてしまいますよ?」

「冬夜くん、落ちついて」


 振り返ると左腕を引っ張りながら、メイが不安そうな目で覗き込むように見上げていた。その様子を見た冬夜は頭を振り、深呼吸をする。


「ふぅ……メイ、ありがとう」

「良かった……さっきも話したけど、ノルンさんから敵意みたいなのは感じないから大丈夫だと思うよ」

「そうなのか? 俺にはいまいちわからないが……」

「うん、もし危なくなったらすぐ教えるからね」

「メイがそこまで言うなら……わかった」


 メイの言葉を信じた冬夜は、ノルンへ向き直ると話しかけた。


「話してもらおうか? 俺たちを呼び出してまで伝えたかったことをな」

「ようやく話ができそうですね。あなた方は創造主(ワイズマン)様の計画とは別に動き始めた事案があることをご存じでしょうか?」

「は? 創造主とは別の計画だと?」

「そう、その計画の名は『破滅の(ペリシュ・)協奏曲(コンチェルト)』です。あなたのお父様も深く関係しておりますよ」


 ノルンの口から告げられた計画、破滅の(ペリシュ・)協奏曲(コンチェルト)

 誰が何の目的で動かし始めたのか……

 そして、響が深く関係しているとは?

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