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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
幕間⑥

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閑話 ぬいぐるみ戦争「夏の陣」④

「リーゼちゃん、どうしちゃったのかな?」


 ソフィーと美桜の手を握ったまま、涙を流して固まっているリーゼのもとにソフィアが駆け寄ってきた。


「ソフィアちゃん、大丈夫なのです。みんながお出迎えしてくれたことに感激しているだけなのです」

「そうだったんだ。そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいな」

「私たちもびっくりしました。また皆さんに会えてうれしいです!」

「二人ともありがとう!」


 ソフィアが感激のあまりその場で飛び跳ねて喜びを爆発させる。


「そうだ! ソフィーちゃん、美桜ちゃん、ちょっと近くに来てくれるかな?」


 手招きされた二人が不思議そうな顔をしながら、ソフィアの近くに歩み寄る。すると二人と目線を合わせるようにしゃがみ込み、両手を広げて二人を抱き寄せた。


「うわぁ、ふわふわでもふもふなのです! ……ほんとはもっと一緒にいたかったです」

「ほんとだね! ソフィアちゃんとずっと一緒にいられたらいいのに……」


 抱きしめられた二人が思わず寂しそうに本音を漏らしたとき、ソフィアが優しく声をかけた。


「わたしももっとみんなと一緒に遊びたいよ……だけど、二人の帰りを待っていてくれる人たちがいるんじゃないかな? 私はいつでもここにいるからね! 今日来られなかったお友達と一緒にウォーターアイランドに来てほしいな。その時はまた一緒に遊んでくれるかな?」

「もちろんなのです! 言乃花お姉ちゃんも一緒に来るのです!」

「今度はメイも一緒に楽しみます! こんなに可愛いうさぎさんとお友達になったことをたくさん話して絶対遊びに来ます!」

「うんうん! 楽しみに待っているからね!」


 二人が元気よく返すと周囲が温かい空気に包まれていく。


「じゃあ、次はリーゼちゃんとお話してくるね」


 ソフィアが抱きしめていた手を離し、二人の頭を軽く撫でて立ち上がるといまだ放心状態のリーゼのもとへ歩み寄った。


「リーゼちゃん、お話しても大丈夫かな?」

「え? はい! 大丈夫です!」


 いきなり目の前に現れたソフィアに驚き、慌てふためくリーゼ。両手を大きく動かして、必死に何かを訴えようとしていると急に身動きが取れなくなった。


「リーゼちゃん、落ち着いて深呼吸しようね」

「え? 何かふわふわしたものに包まれて……あれ?」


 抱きしめられていることに気づいたリーゼが再び慌てだした。


「あわわ……いったい何が起こっているのかしら? 落ち着くのよ、これは夢なんだわ!」

「リーゼちゃん、大丈夫だよ。夢じゃないから安心して! 大きく深呼吸して、落ち着いたらお話を聞いてくれるかな?」

「は、はい……」


 慌てふためくリーゼに優しく声をかけるソフィア。促されるように大きな深呼吸をすると、すこしずつ落ち着きを取り戻していく。


「リーゼちゃん、遊びに来てくれてありがとう。本当にたくさんの笑顔をもらえてうれしかったよ」

「私もソフィアちゃんと出会えて幸せです! たくさんのお土産も……」

「うんうん、それならすごくうれしいよ! あのね……リーゼちゃんに()()()()()()があるんだけど聞いてもらえるかな?」

「え? 私にできることならなんでも言って!」


 ソフィアから告げられた言葉に驚くリーゼ。


「ありがとう。近い将来にどこか別の場所でリーゼちゃんたちと再会することになると思うの」

「え? どういうこと? 別の場所?」


 困惑するリーゼをよそにソフィアは話し続ける。


「その時、私以外の子……()()()()()()()()()()()()()()()と思うの。だから、一緒に助けてほしいんだ。お願いできるかな?」

「ソフィアちゃん、いったい何のことを言っているの? そんなことをする奴がいるなんて絶対許さないわ!」

「ありがとう。そんな未来が来ないといいんだけどね……」


 リーゼを抱きしめていたソフィアの力が一瞬強くなるが、すぐに包み込むような優しさに変わる。


「ソフィーちゃんたちにもお話ししたけど、今度はお友達と一緒にウォーターアイランドに遊びに来てくれるかな?」

「もちろんよ! 学園のみんなを連れて遊びに来るわ!」

「楽しみにしているね! たくさんお土産も用意しておくから……約束だよ!」


 言い終えるともう一度強く抱きしめあう二人。その後、ソフィーたちと一緒にソフィアたちに挨拶を済ませると佐々木の先導でヘリポートへ向かう。到着していたピンク色の機体に乗り込み、窓から大きく手を振る三人。やがて大空に飛び立つとソフィアたちの姿が少しずつ小さくなっていった。


「あーもう終わっちゃうのね……またすぐに戻ってくるわ……」

「リーゼお姉ちゃん、遊園地は逃げないので大丈夫なのです……」

「すっごく楽しかったですよね! 今度はみんなで来ましょう!」


 三人が名残惜しそうに窓の外を眺めていると、運転席に座る佐々木の声がスピーカーから響く。


「皆様楽しんでいただけたようで何よりです。冬夜様のご実家近くのヘリポートまでは二十分ほどで到着いたします。それまで空の旅をお楽しみください」

「「「はーい!」」」


 三人は大きく返事をすると夢のような旅行の話に花を咲かせていた。



「間もなく着陸いたします。再度シートベルトの確認をしていただき、お立ちにならないようお願いいたします」


 数十分後、佐々木の案内とともにゆっくり着陸する。搭乗口の扉が開き、先頭のリーゼがヘリポートに降り立った時、思わぬ人物から声をかけられた。


「おかえりなさい。玲士くんが用意した袋がずいぶん大きいようだけど……そんなにお土産がたくさんあるのかしら?」

「な、なんでママがここにいるのよ!」


 リーゼの前に現れたのはお土産の入った袋へ鋭い眼光を向けるエミリア。

 先ほどまでの笑顔は吹き飛び、冷や汗が滝のように流れ始めるリーゼ。

 親子の熾烈な攻防戦が始まろうとしていた。

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