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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
幕間⑥

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閑話 ぬいぐるみ戦争「夏の陣」①

 紫雲と学園長の策略によって冬夜が実家でのびていた頃、ホテルのエントランスホールにリーゼの声が響いていた。


「決めたわ! この子たちを全員お迎えする!」

「リーゼお姉ちゃん……いくら何でも多すぎなのです」


 リーゼが意気揚々と指をさして宣言した先にあったのは大小合わせ五十体以上あるぬいぐるみの山。等身大のソフィアとマロンはもちろん、様々な動物をモチーフにしたキャラクターが鎮座していた。二人が話している隣で一体のぬいぐるみを見つけたソフィーが首をかしげていた。


「あれ? このぬいぐるみって……」

「どうしたの、ソフィーちゃん? 気になる子でもいた?」

「はい! このぬいぐるみがすごく気になって……私がこの子をお迎えしてもいいですか?」

「こ、これは!?」

「え? な、なんで?」


 ソフィーが目を輝かせていた先に置いてあるぬいぐるみを見た二人は同時に声を上げる。なぜなら、ソフィーとうり二つの大きさをしたうさぎのぬいぐるみが置かれていたからだ。


「あれ? リーゼさんどうしたんですか?」

「リーゼお姉ちゃん? ……あーダメなやつなのです」


 驚いたソフィーが声をかけるが目と口を見開いたまま棒立ちで固まっているリーゼ。美桜が手を引っ張ったり、体を揺らしたりするが一向に反応は返ってこない。


「……これはリーゼお姉ちゃんが元に戻るまでしばらくかかるのです。ところでソフィーちゃん、どうしてこのぬいぐるみが気に入ったのですか?」

「うーん、よくわからないんだけど()()()()()()の。なんか他人とは思えないというのかな?」

(そりゃそうだと思うのです。どこからどう見てもソフィーちゃんそのものなのです)


 笑顔で話すソフィーとぬいぐるみを見比べて小さなため息をつく美桜。


「それはよかったのです。大きさもソフィーちゃんとそっくりなのです」

「そうなんだよね! おそろいの服を着せてあげたいな」

「……あっ、いいこと思いついたのです! さっそく怜士お兄ちゃんに連絡しなければいけないのです……」


 美桜が怪しげな笑みを浮かべながら独り言を呟く。


「美桜ちゃん、どうしたの?」

「何でもないのです。くっくっくっ……ソフィーちゃんは気にしなくても大丈夫なのです」


 首をかしげて不思議そうなソフィーを横目にこみ上げる笑いを押さえきれない美桜。


「それよりもソフィーちゃん! お気に入りのぬいぐるみを自分たちの荷物がある場所に避難させておくのです!」

「え? どうして?」

「リーゼお姉ちゃんが全部のぬいぐるみをお迎えしたいと言っていたのです。一緒に持って帰ると後で探すのが難しくなるかもしれないのです」

「そうかな? リーゼさんなら大丈夫だと思うけど……」

「リーゼお姉ちゃんがというわけではないのです。無用な()()()()()()()()()()()のは避けるのが鉄則なのです」

「無用なトラブル?」


 美桜の言っていることがまったく理解できず、キョトンとしているソフィーに畳みかける。


「細かいことはどうでもいいのです! 美桜もこの子を持ってみたいのです!」

「じゃあ一緒に運ぼうよ! 引きずっちゃうとかわいそうだから……」

「もちろんなのです! 美桜がお手伝いするのです!」


 笑顔でうさぎのぬいぐるみを運び出す二人。自分たちの荷物が置いてある場所に置くと美桜が勢いよくダイブした。


「はわわ! すごいのです! もふもふ、モッチモチで吸いこまれてしまうような柔らかさなのです! ソフィーちゃんも触るのです!」


 ぬいぐるみに顔を埋めながら手招きする美桜。ソフィーが駆け寄ると優しくぬいぐるみに触れる。


「すごくふわふわで柔らかいね!」

「そうなのです! ずっとこのまま抱きついていられるので……はっ! 殺気!?」


 ぬいぐるみから飛びのいて、美桜がソフィーを守るように立ちはだかると鬼の形相をしたリーゼが立っていた。


「ちょっと! 私がソフィーちゃんに渡すはずだったのに! それに誰の許可を得て抱きついているのよ!」

「そんなこと言われても知らないのです。気絶していたリーゼお姉ちゃんが悪いのです」

「そう……これはちゃんと教育することが必要なようね!」

「ふふふ……美桜がそんな簡単に屈するとは思わないほうがいいのです!」


 不敵な笑みを浮かべてリーゼを煽る美桜。火花が飛び散りそうな視線が交錯し、今にも飛び掛かりそうになった時だった。


「もー二人とも! ケンカしたら、『めっ』ですよ!」


 右手を顔の前に突き出して怒りをあらわにするソフィーが割って入ってきた。


「ソフィーちゃん、ごめんなさいです……っておかしいのです!」

「ソフィーちゃん、ごめんなさ……え? ソフィーちゃんが二人? ああ、なんて神々しい……ここは天国なのかしら……」

「リーゼさん? リーゼさん、しっかりしてください!」


 二人がソフィーに向かって謝ろうと顔を向けたとき、驚きの光景が目に入ってきた。先ほどまで荷物にもたれかかっていたうさぎのぬいぐるみがソフィーと並んで立っていたのだ。


「ソ、ソフィーちゃん? 何でぬいぐるみが立っているのですか?」

「あ! ほんとだね」

「どういうことなのですか? まさか、ぬいぐるみが?」


 慌てた美桜がソフィーの裏側に回るとその謎はすぐに解明された。


「そういうことですか! お土産のステッキが支えになっていたのです」

「だから立っていたんだね。ぬいぐるみさんも動いたり、お話ができたらいいのに……」

「ソフィーちゃん? その願いは叶うかもしれないのです!」


 自信たっぷりに胸を張る美桜。

 彼女はいったい何を企んでいるのか?

 この後、リーゼが起こす騒動に巻き込まれることなど知る由もない二人だった……

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