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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第22話 冬夜の試練と悪夢(ナイトメア)(後編)

 呆然と立ち尽くす冬夜に対し、女性は意味深な笑みを向ける。


「ずいぶん驚かれているようですね?」

「いや、そんなはずはない。()()()()()()()()()()なんて……」

「あらあら、そんなことで悩んでいたのですか? 戦いの最中にいちいち気を取られていては命とりですよ?」


 言い終えると同時に女性の気配と姿が跡形もなく消える。


「え? しまった! 魔力が追え……ない……?」


 女性の声で我に返った冬夜だったが、反応が一瞬遅れてしまう。慌てて相手の居場所を特定するために魔力を探ったが、姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


(ど、どういうことだよ? 気配ならまだしも魔力まで完全に消えた?)


 焦った冬夜は周囲を見渡したが、視界に映るのは真っ白な空間と地面に横たわる紫雲のみ。


「バカモン! どこを見ている? 後ろじゃ!」

「え? 後ろ?」


 紫雲の言葉を聞いた冬夜が驚いて振り返った時だった。


「よそ見をしているとはずいぶん余裕ですね?」


 不自然に背後に伸びた影の中から飛び出すように女性が姿を現した。そのまま左手に黒い魔力を纏い、冬夜の背中を思いっきり殴りつける。


「しまった……がはっ」


 無防備な背中を殴られ、吹っ飛んだ冬夜が地面を二度三度と跳ねる。そのまま滑るように地面を転がった。


「うう……」

「あっけない幕切れですね……()()()()()()()()()()()()()()()()ので少し期待していたのですが」


 女性は小さくため息をつくと、がっかりしたように肩を落とす。その言葉に地面に片手を突き、起き上がろうとしていた冬夜が声をあげる。


「シ、シリルさんや健太郎さんを知っているだと……?」

「チッ……余計なことを口走ってしまいましたね」

「いったいお前は誰なんだ!」

「さて、誰なんでしょうね? 私の口を割らせたければどうすれば良いかわかりますよね?」

「言われなくてもわかっているさ! それに準備は全て終わったからな」


 静かに立ち上がった冬夜の表情は余裕に満ち溢れていた。先ほどまでの困惑した様子は一切消えている。


「ずいぶん強気な発言ですね。この状況で何か手を打つことができるのでしょうか?」

「ああ、そのためにわざと吹き飛ばされたんだよ! いでよ、黒き鎖(ブラック・バインド)


 冬夜が声を上げると同時に女性を中心に黒い円が地面に広がり、中から伸びてきた鎖が女性の足首と手首に巻き付いて動きを封じ込める。


「いつの間にこんな罠を……しかし、この程度で私が捉えられるわけがないでしょう」


 手足に巻き付いた鎖を引きちぎろうと女性が魔力を込め始めた時、異変が起こる。


「な、魔力が思うように溜まらない? なぜ?」

「一か八かだったけどうまくいったな」

「……いったい何をしたのですか?」

「魔力を再利用することを応用しただけだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってな」

「なるほど……理論上は可能ですが、こんな罠を仕掛けているとは……」

「自分より上手な相手に無策で突っ込むほどバカじゃないってことさ!」


 言い終えると同時に天高く柱のような魔力が冬夜から立ち上る。


「そんな力をまだ隠していたとは驚きました……いいでしょう! 私に力を存分に見せてください!」

「後悔しても知らないぜ! さあ、決着を付けよう! 行くぞ、陰陽(インシュレット)の黒龍(・ドラグナー)


 冬夜が両手を重ねて体の前に突き出すと、光を纏った黒龍が出現する。その光の帯がまるで黒龍を守るかのようにまとわりつきながら、女性に向かって一直線に駆け抜けた。


「ふふふ……これは想定外でしたね。まさかここまで奥の手を隠しているとは思いませんでした」


 迫りくる黒龍を見ながら笑みを浮かべ、呟く女性の表情はどこか晴れ晴れとしていた。


「やれやれ、()()()()()()()()()()()()()()。ちょっと邪魔させてもらうぞ」


 女性の前に紫雲が割り込むと両手を前に出した。虹色に輝く防護壁のようなものが出現し、黒龍と勢いよくぶつかる。


「む! これはちょっとマズいかもしれぬ……いいか? もうすぐ大爆発が起きる。()()()()()()()()()()()()()()!」

「え? あ、はい、わかりました」


 紫雲の意図がわからないまま女性は、慌ててうつぶせの状態で地面に倒れこむ。その直後、鼓膜が破れるほどの轟音が響き渡る。真っ白な煙が辺り一帯を包み、周囲の様子が全く分からなくなる。


「ちょっとやりすぎたか?」


 煙が立ち込める中、遠くから冬夜の声が聞こえてくる。


「まったくお前と言うヤツは……ちょっとは加減をせんか!」

「え? じいちゃん?」


 駆け寄ってきた冬夜の前に現れたのは胸に黄金色の矢が刺さったままの紫雲。何事もなかったかのように振る舞う様子に戸惑いを隠せない。


「じいちゃん、動いちゃダメだって! さっきまであんなに苦しそうだったじゃないか!」

「お前がアホみたいな魔法を放つからゆっくり寝ておれんわ!」

「そうじゃなくて、胸にまだ矢が……」

「なんじゃ? これのことか? ()()()()()()()()()()()()()()()


 唖然とする冬夜を横目に胸に突き刺さった矢を右手で引き抜いて見せた。


「は? え? どういうこと?」


 目の前で起こった光景が信じられない冬夜。


 全て紫雲の思惑通りだったのか?

 冬夜のタイムリミットも少しずつ近付いていた……

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