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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第21話 冬夜の試練と悪夢(ナイトメア)(中編)

「そんなに怖い顔で睨まれると悲しくなりますね……()()()()()()()()()()ですよ?」


 空中に現れた人物は右手を頬にあてるとわずかに首を傾げる。


「何が『少し手元が狂った』だ! あからさまに狙っていただろうが!」

「ふふふ……あなたにそう見えたのであればそうかもしれませんね」

「ふざけるな! どこの誰だか知らないが、よくも……じいちゃんを!」


 女性から放たれる言葉に悪意は感じられない。しかし、明らかに見下したような態度に冬夜の怒りは頂点に達した。目は紅く光り、全身からあふれ出た魔力が火柱のように天高く立ち上る。


「と、冬夜……ワシのことなら心配するな……」

「じいちゃん! 動いちゃだめだ! 俺がアイツをぶちのめして……」

「バカモン! あれほど()()()()()()()()と言ったことを忘れたのか!」


 地面に倒れていた紫雲が片膝を付くと冬夜を怒鳴りつけた。


「何言っているんだ? じいちゃんがそんな目にあって冷静になれるわけがないだろ!」

「だからお前は未熟者だといったのじゃ! 実力もわからぬ相手に対し、手の内を明かすヤツがどこにいる?」

「でも、まだ矢が刺さったまま……」

「ワシのことは気にするな、自分で何とかするから心配せんで良い。それよりもこの状況をお前自身で打破してみせろ!」


 言い放つと力が抜けたように地面へ崩れ落ちそうになり、冬夜が慌てて抱きとめた。


「じいちゃん、大丈夫か?」

「大丈夫じゃ……それよりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようじゃぞ?」


 紫雲が視線を向けると、顎に右手をあてながら二人の様子を見つめる女性の姿があった。


「お話は終わりましたか? もう少しお時間が必要ならばお待ちしますよ?」

「その必要はない……この代償はきっちり払ってもらうぞ! じいちゃん、すまないがここで待っていてくれ」


 紫雲を静かに地面に下ろし、立ち上がると女性を睨みつける冬夜。先ほどまであふれ出ていた魔力はすっかり落ち着き、うっすらと全身を覆うほどに抑えられていた。


「おや? ずいぶん落ち着かれたようですね。先ほどまでの荒れ狂っていた魔力が穏やかな波長へ変わりましたね」


 感心するように言う女性に一切反応を示さない冬夜。


「あら? ずいぶん嫌われてしまったようで悲しいです……もう少しおしゃべりを楽しんでおきたかったのですが」

「なんでお前と話す必要があるんだ?」

「一理ありますね。私が何者なのか気にならないのでしょうか?」

「気にならない……と言ったら嘘になるな。だが、素直に答えてくれるわけないんだろ?」

「よくわかっていらっしゃいますね、天ヶ瀬冬夜」


 冬夜を見下ろしたまま女性が満足げに答える。フードと仮面のせいで表情を伺い知ることはできないが、口元がわずかにほほ笑んでいるように見えた。


「なぜ俺のことを知っているのか……素顔を暴いた後でゆっくり話してもらうぞ!」

「素晴らしい解答です! さあ、自らの力で勝利をもぎ取ってみなさい!」

「あとで後悔しても知らないからな!」


 冬夜の魔力と呼応するように首から下げられたロザリオが赤く光りはじめる。


「……これでよかったんですよ。冬夜が覚醒しなくては()()()()()()()()()()()()()から……」


 地上で魔力を集結させていく冬夜を見ながら、小声で呟く女性。わずかに首を左右に振ると声を上げた。


「さあ、はじめましょう!」


 女性が右手を掲げると何もなかった上空に黄金色をした無数の槍が出現した。


「マジかよ……」


 鮮明に思い出されるのは、霧の立ち込める森の中で初めてフェイと対峙した時のことだった。驚いた冬夜の様子に女性は首をかしげる。


「おや? どうかされましたか?」

「何でもない……大丈夫だ、対峙しているのはアイツ(フェイ)じゃない」

「まあいいでしょう。頑張って全て避け切って下さいね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から」


 言い終えると同時に女性が手を振り下ろす。すると黄金色をした槍が向きを変え、冬夜に向かって一斉に降り注ぐ。


「チッ……この場所にいたらじいちゃんを巻き込みかねない」


 勢いよく地面を蹴り横たわる紫雲から離れると、まるで追尾機能でもあるかのように槍が追いかけてくる。紙一重で躱すと、次々に地面に激突して爆発が起こる。轟音と土煙が冬夜の視界と聴覚を奪い、徐々に追い詰められていく。


「くそっ……一か八かやるしかない!」


 呟くとロザリオの中心が大きく輝き、冬夜の動きが一瞬止まる。その隙を見逃すはずもなく、再び槍が速度を上げて襲い掛かる。地面をえぐり取るような爆発と目が眩むほどの閃光が包み込み、万事休すかと思われた。


「なにか考えがあったようですが……ずいぶん呆気ない終わり方ですね」


 爆発が収まり、女性がゆっくり地面へ降り立った時だった。


「お見事です……まさか()()()()()()()()()とは思いませんでした」


 煙の中から先ほど放った槍が現れた。反射的に身を翻して避けると、別角度から今度は黒い槍が襲いかかる。咄嗟に身体をのけ反らせたが、わずかにフードが引っ掛かる。


「そう簡単にはいかないよな……」


 立ち込める煙の中から黒いオーラに身を包んだ冬夜の姿が現れた。服や髪の毛に少し焦げたような跡がある以外、ケガをした様子はない。


「爆発に巻き込まれたと見せかけ、分散した魔力を再利用して私を欺くとは……」

「実践でやるのは初めてだったけど……え? 黒髪? それにこの魔力は? なんで?」

「そんなに驚くようなことでしょうか?」

「……なんで俺と同じ魔力(闇の魔力)を感じるんだ?」


 冬夜の目の前にいたのは、同じ魔力を纏ったセミロングの黒髪をした女性。


 彼女から闇の力を感じ取ったのは偶然か?

 そして、目の前に立ちはだかる女性の正体は?

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