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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第20話 冬夜の試練と悪夢(ナイトメア)(前編)

「どうしたんじゃ? ()()()()()()()()()()()()()()()というのに何もできんのか?」

(冷静になるんだ。じいちゃんはわざと怒らせるようなことをしているだけ……このまま襲いかかっても勝ち目はない)


 湧き上がる怒りを必死に抑え込もうとする冬夜だが、紫雲の煽りは止まらない。


「そうか、何やら気持ちに迷いが生じているみたいじゃな」

「……」

「何も答えないところを見ると図星か……仕方がない、()()()()()()()()()()()()()しかしかないようじゃな」


 何も言い返さない冬夜に向けて、両手を胸の前で合わせると何やら唱え始める紫雲。


「我、禁忌の扉を開かん。天界より示されし虚空の次元にて、災いもたらさん……」

「じいちゃん……何を始めるんだ?」


 紫雲の体が青白い光に包まれ始める様子に、戸惑いを隠せない冬夜。


「我が持つ闇の魔力よ、ここに宿れ!」


 言い終えると同時に雷を帯びた暗雲が出現した。次の瞬間、目もくらむような稲妻が黒い空を裂いて紫雲を直撃する。


「じ、じいちゃ……」


 完全に意表を突かれ、落雷による閃光と轟音に包まれた冬夜の視界が真っ白に染まる。


「いったい何が起こっ……」


 目を開けることもできず立ち尽くしていると、いきなり背中を蹴り飛ばされた。完全な不意打ちに防御することもできず、そのまま数メートル先まで吹き飛んだ。


「……ゲホゲホっ、いきなりなんなんだよ……」

「情けない……視界を奪われたとはいえ、いつ何時敵が襲いかかってくるかわからない状況で警戒を解くとは言語道断じゃな」


 地面に片膝を付き、ゆっくり目を開けた冬夜。先ほど自分の立っていた位置には灰色の道着を身に纏い、黒いオーラに包まれた紫雲が現れる。


「俺を蹴り飛ばしたのはじいちゃんか……どういうつもりなんだよ!」

「何を寝ぼけたことを言っておる! いかなる時も警戒心を持ち、周囲に気を配っておれば防げたはずじゃ」

「それは……」

「なんじゃ? 言いたいことがあるならハッキリ言わんか!」

「いきなり訳の分からない空間に放り込まれて、メイたちが眠らされて……いったい俺にどうしろって言うんだ! いきなり『ワシを倒せ』と言われたって意味が分からないんだよ」

「言いたいことはそれだけか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っておるのか?」

「……」


 必死に反論しようとした冬夜だったが、ド正論すぎる紫雲に返す言葉がない。


「そんな甘い考えでこの先どうやって生き延びていくんじゃ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はその程度だったのか?」

「だから、なんでそのことを知っているんだよ……」

「教えてほしいか? ワシが素直に言うと思うか?」


 再び体を震わせながら怒りのオーラが増していく冬夜を見た紫雲は、口角を吊り上げながらさらに畳み掛ける。


「のう、冬夜? お前がこうしてくだらない質問を繰り返しているうちにどんどん時間は過ぎ去っておるぞ」

「そんなことはわかっている!」

「声だけは一人前じゃな。こうしてお前がくすぶっている間にも仲間が危険に晒されておるというのに。しょせんは口だけ……」


 言い終える前に冬夜が一気に間合いを詰め、渾身の右ストレートを紫雲の顔面へ向かって振り抜く。目にも止まらぬ速さで拳は紫雲の左頬をかすめる。


「ほう、なかなか良い踏み込みからのストレートじゃな。相手が視線を外したすきを見逃さず、間合いを詰めるとは……しかし、怒りと殺気が乗りすぎておるわ」

「そんなことはお見通しだ。踏み込んだ時点でじいちゃんの影が消えていたからな……本命はこっちだ!」


 冬夜が言い終えると同時に地中から無数の光の糸を纏った黒い矢が背後に出現し、数メートル後方の何もない空間を取り囲む。


「そこにいるのはわかっているんだ! 撃ち抜け、陰陽の(インシュレット)一輪花(・ブレイク)

「ほう……まさか光の魔力を纏う矢を出現させるとは……」


 冬夜が右手を振り下ろすと次々に黒い矢が取り囲んだ空間に向けて放たれる。だが、中心に到達する目前で何かに阻まれ、次々と爆散した。


「やはりそこにいたか。この程度で貫通するとは思えないけどな」

「面白い魔法を使うようになったのう。しかし、まだまだ魔力の練り、精度も足りておらん」

「位置を割り出すためにわざと雑に放ったんだよ!」


 言い終えた冬夜の姿が揺らぐと爆発の煙が左右に割れ、ガラスが割れるような音が響く。直後に金属を叩きつけ合う様な甲高い音が何度も聞こえた後、真っ白な空間に黒いオーラを纏った二人の姿が現れる。


「見事じゃぞ。先ほどまでの迷いが消え、的確に相手の行動を読んで攻撃を仕掛けてくるとはな」

「どの口が言っているんだよ。俺の攻撃を全て片手で捌いて無効化しているくせに……」

「孫の成長を喜ばない祖父がいないと思うか? じゃが、()()()()()()()()()()()()()()()?」


 悔しそうに唇をかみしめて睨む冬夜に対し、清々しい笑顔をうかべる紫雲。


「クソ……完璧に弄ばれてる……」

「まだ迷いが生じておるな。全力でかかってこん……」


 紫雲の動きが突然止まり、言葉が遮られた。いつの間にか右胸に黄金色の矢が刺さっており、膝から崩れ落ちるように倒れる。


「じいちゃん!」

「あら? ()()()()()()()()()()()()()()()……」

「誰だ!」


 矢の飛んできた方を冬夜が睨みつけると、黒色のローブに身を包み黒い仮面のようなもので目元を覆った人物が空中に浮いていた。声色から女性と分かるが目深くかぶったフードと仮面で表情を伺うことはできない。


「何をそんなに慌てる必要があるのでしょうか? 天ヶ瀬冬夜」


 突如現れた謎の人物による攻撃に倒れた紫雲は無事なのか?

 冬夜のことを知っているようだが、いったい誰なのか?

 別次元の空間に閉じ込められた冬夜の運命はいかに……

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