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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第19話 嵌められた冬夜に迫る試練

「どう動くって……じいちゃん、いったい何を言っているんだ?」

「そのままの意味じゃ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 紫雲の言葉に冬夜が振り返ると、糸が切れたように座卓に突っ伏している三人。


「え……みんな、どうしたんだ? おい! メイ、しっかりしろ!」


 隣で左手を座卓の上に伸ばしたまま倒れ、電池の切れたおもちゃのように動かないメイ。冬夜が肩を揺らして声をかけても全く反応がない。


「じいちゃん! いったい何をしたんだよ……」

「はて? 何のことを言っておるのかさっぱりわからんのう」

「なんでみんな倒れているんだよ! さっきまで()()()()()()……ま、まさか?」


 自分が()()()()()()()()()()()()を三人が飲んでいたことに気付いた冬夜。


「何を入れたんだよ……じいちゃんだからといって返答次第じゃ許さない!」

「さっきばあさんに言われたたばかりじゃろ? 感情に流されるのではなく、()()()()()()()()()()()と」

「ふざけるのもいい加減にしろよ! 何が『冷静な判断をしろ』だ、さっきから意味が分からない……」

「やれやれ……まだまだ未熟じゃのう」


 感情を露わにする冬夜に対し、全く相手にする素振もなく、()()()()()()()()()()()紫雲。


「差し出がましいですが……師匠、ちょっとやりすぎじゃありませんか? さすがにこの状況で冷静になれというのは……」

「なんじゃ? いかなる時も冷静に状況を判断し、最善を尽くすのは基本中の基本じゃろうが。特に予期せぬ事態が起こった時はな」


 弥乃が苦言を呈すが、一向に聞く気のない紫雲。二人のやり取りを見ていた冬夜の体から黒いオーラのようなものがにじみ出してくる。


「そうか……()()()()()()()()()()のか……何を考えているのかわからないけど、教えてくれないのであれば力ずくで聞きだすしかなさそうだな!」

「冬夜くん、落ち着きさない! これには理由が……」

「弥乃、黙ってワシに任せておけ。冬夜、力ずくで聞き出せるものならやってみるがよい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 手に持っていたお茶を一気に飲み干して湯呑を置くと、紫雲を中心に灰色の魔力が広がり景色が一変する。


「え……ここはいったいどこなんだ? みんなは?」


 目の前にあった座卓やメイたちの姿が消え、灰色一色で覆われた何もない空間に困惑する冬夜。状況が理解できず、狼狽えながら周囲を見回していると紫雲の声が響く。


「全く……少しは冷静にならんか!」


 声のした方向へ体を向けると、胡坐をかいて床に座る紫雲が鋭い視線を向けていた。


「何をしたんだ、じいちゃん……俺はさっきまで座敷にいたはずじゃ……」

「お前が冷静さを失い、怒り狂って魔法を使おうとしたからじゃ。ちょっとお灸を据えてやろうと()()()()()()()()()()()()()()()()()

「は? 別の空間?」


 表情一つ変えず告げる紫雲に対し、先ほどまでの怒りは影を潜めて困惑している冬夜。


「状況の確認を怠って感情に身を任せ、勝手に怒りだした大バカ者はどこの誰じゃろうな?」

「……それは」

「無防備な状態の仲間を巻き込む可能性を少しでも考えていたのか?」

「……巻き込まないようにコントロールすればいいだけの話だろ」

「ほう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にそんな高度なことができるのか?」

「俺が未熟者かどうかわかるのかよ! 俺だってずっと努力してきたんだ!」


 メイたちを危険に晒したことを指摘された上、今までの努力を否定する言葉に怒りを露わにする冬夜。紫雲は気に留める様子も無く、わざと神経を逆なでするような言葉を投げ続ける。


「何をどう努力していたんじゃ? 魔法を使いこなすためか? 妖精どもに勝つためか?」

「どっちもだよ! 俺は……どうしても九年前の因縁を晴らさなきゃいけないんだ!」

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っておったことか?」

「なんでじいちゃんが知ってるんだ……いや、そんなことよりも俺は強くならなきゃいけないんだ!」


 強く拳を握ると大声で叫ぶ冬夜。


「そうか、自分なりに努力はしていたと?」

「そうだよ! 必死に自主練もしてきた、レイスさんに頼んで相手もしてもらって……」

「それがどうした? 結果に結びついておるのか?」


 心の底に秘めた苦しみを絞り出すような冬夜に、さらに鋭い言葉を投げつける紫雲。


「努力しているという事は大事なことじゃ。しかし、()()()()()()()()()()()?」

「それは……魔法の使い方とか、攻撃の仕方とか……」

「ただ力を強くしたところで無意味じゃ。まして、一番重要なことを見落としておるお前では誰一人として救うことなどできん」


 今まで冬夜が努力したことを認めるどころか、バッサリと切って捨てる。


「どういう意味だよ……俺がやってきたことは無駄だといいたいのか、じいちゃん……」


 紫雲の言葉に握りしめた拳を細かく震わせながら俯く。


「はっきり言った方がいいかの? お前のやってきたことは無駄ではないが、精神的な成長がまるで感じられん。このままでは女の子を救うことはおろか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そんなことやってみなければわからないだろ!」

「いいや、絶対に勝てるわけがない、何もできずに弄ばれて終わりじゃ。()()()()()()()()()()()()な」


 すると勢いよく顔を上げ、紫雲を睨みつける冬夜。全身から魔力が溢れ、黒い瞳が赤く染まり始める。


「じいちゃん、いくら何でも言っていいことと悪いことがあるよな……」

「ワシは事実を伝えたまでじゃ。感情のコントロールもできず、怒りに身を任せている未熟者にわかりやすく教えたつもりじゃがのう」


 胡座をかいていた紫雲が小さく息を吐き、ゆっくりと立ち上がる。それから冬夜の怒りを煽るように、さらに言葉を重ねる。


「そうじゃ、忘れておったわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かもしれんな」

「なんだって? メイたちに何を飲ませたんだ!」

「なに、気持ちよく夢を見てもらっているだけじゃよ。起こすのが遅くなると、どうなるかわからんがな」

「じいちゃん、いい加減にしろよ……やっていいことと悪いことがあるだろう!」

「早く助けたいならばワシに実力を認めさせ、この空間から脱出することじゃな。感情が乱れまくっておるお前にできるかのう?」


 怪しげな笑みを浮かべ、冬夜を煽り続ける紫雲。

 冬夜は湧き上がる怒りを抑え、紫雲に一泡吹かせられるのだろうか?

 タイムリミットは少しずつ迫っている……

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