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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第13話 隠れたリズの思惑

 緑と水色の閃光が駆け巡り、金属がぶつかり合う様な音が公園内に響き渡る。


「やっぱり……腕をあげたわね、言乃花ちゃん?」

「リズさんこそ病み上がりとは思えませんよ……」


 言葉を交わすと公園の中央付近に降り、数メートルほど距離を取る二人。


「あら? ずいぶんスッキリしたような顔をしているじゃない」

「そうですね、おかげさまで()()が見つかりましたので」

「そう……私も少しは役に立てたということかしら?」

「はい、自分の中にあった迷いが吹っ切れました」

「それならよかったわ。じゃあ、心置きなく全力を出しても問題なさそうね?」


 憑き物が落ちたような言乃花を見たリズは無邪気な笑みを浮かべるとゆっくり目を閉じる。すると体に纏っていた水色のオーラが一気に濃くなり、電流が走っているかのような黄金色の魔力が見え隠れする。


「いよいよ本気を出してくれるという事ですね……」

「ちょっとヤバい感じだからね。素直に負けましたというわけにはいかないのよ」


 表情は先ほどと変わらぬ笑顔のままだが、細められた瞳からは例えようのない冷たい視線が言乃花へ突き刺さる。


(これはちょっとマズいわね……過去に何度か手合わせはしているけれどリズさんの魔法を見たことは一度もない。レイスの話では()()()()()()()()()使()()()とか……)


 リズのオーラに警戒を強めていた時、思わぬ指摘に驚く言乃花。


「ずいぶん楽しそうだけど、そんなに嬉しかったかしら?」

「え?」


 言乃花が右手を頬にあてると、頬の筋肉が持ち上がり笑みを浮かべたままであることに気が付いた。


「私……笑っていたの? なんで?」

「……呆れた、自覚していなかったの?」


 ため息を吐くと左右に頭を振って言乃花に向き直る。


「まあ、ここまでとは言われてなかったけど……どうせなら徹底的にやらせてもらうわ。安心してね、病院送りになったとしてもレアがいるから大丈夫よ」

「何を安心しろというのですか……その言葉そっくりそのままお返ししますよ。病院でゆっくり親子のコミュニケーションを楽しまれてはいかがですか?」

「もう寝てるのは飽きちゃったのよね、それにレイスに何か言ったところで聞かないでしょ? 変なところだけシリルそっくりなんだから……クロノスにやられたときも、大丈夫だから気にするなって言ったのに……」

「それはリズさんの言い方にも問題があったんじゃ……」


 頬を膨らますリズに対し、肩を落として話しかける言乃花。


「だ、だってしょうがないじゃん! 深刻な顔してみんなが見てるし、寝不足とか疲労とかマックスだったのよ? それにクロノス(アホ)はナルシスト丸出しで自分語りを始めるし……ほんと、万全の体調だったら一撃で殴り倒せてたっての!」

「……レイスから聞いた話とずいぶん違うのですが……」

「最初に言ったじゃん、まずは味方を欺くんだって! それにシリルもシリルよ! 目が覚めたらレイスとギクシャクしてるとか……まったくうちの男どもは……どれだけ周りが気を使ってやってると思うのよ」


 次から次へと飛び出してくるリズの愚痴に呆然として動きが止まる言乃花。


「あーもう、思い出しただけでイライラしてきたわ。あとでシリルはきっちり締め上げてやるんだから!  ああ、話が脱線しちゃったけど……そういう事だから言乃花ちゃん、レイスに説明しておいてくれない?」

「丁重にお断りしますね。親子の問題は自分たちで解決してください。それに……お話しする時間はたくさんありますよ? 勝つのは私ですから!」


 再び腰を落として言乃花が構えをとると、緑色だったオーラに変化が現れた。徐々に明るさを増していきやがて黄緑色に変わると、空まで立ち上っていた魔力が消えた。同時に周囲の景色が陽炎のように揺らぎ始める。


「ふふ、そう来なくっちゃ面白くないわ……勝負を長引かせるつもりはないから一撃で終わらせましょう」

「望むところです! 後悔しても知りませんよ?」


 言い終えると一切の音が消え、張り詰めた空気が結界内を支配する。しばらくにらみ合っていた二人の間に木の葉が落ちてきた時、不意にリズが口を開いた。


「……言乃花ちゃん、迷宮図書館にノルンが侵入できたのは仕組まれたことだとしたらどうする?」

「え? いったい誰が……」

「隙あり!」


 思わず問い返してしまい、出来た隙をリズが見逃すはずもなかった。即座に懐に潜り込まれ、魔力を纏った拳が躊躇なく脇腹に向けて振り抜かれる。


「しまった……なんて言うと思いましたか?」


 真っ二つに切断された言乃花の姿が煙のように消えるとリズの背後に現れ、お返しと言わんばかりに黄緑のオーラを纏った左手が背中を貫く。


「やられたわ……なんてね」


 貫いたはずのリズの姿が霧散すると即座に後ろに飛ぶ言乃花。すると大きな音とともに先ほどまで立っていた地面が陥没し、二人の周囲を避けるように円形に土煙が舞いあがる。


「さすがです……が、私も簡単にやられるわけにいきません」

「このくらいは避けてくれないと話にならないわよ、椿流の後継者としても」

「イノセント家史上最高の実力者と言われる方からお褒め頂き光栄です。さて……そろそろ決着を付けませんか?」


 言乃花の言葉にリズも不敵な笑みを浮かべる。


「そうね……次の一撃ですべてを終わらせるわ、私の勝利という形でね!」

「勝つのは私ですから!」


 睨み合いながら両手に魔力を込める二人。呼応するように木々が揺れ始め、葉が次々と舞い落ちる。ついには地響きをあげながら揺れ始める地面を苦もなく蹴り飛ばす。二人の拳がぶつかり合う寸前、制止する声が響く。


「そこまで!」


 ガラスの砕けるような音が公園内に響き渡り、金縛りにあったように二人の動きが止まった。


「な……動けない? どうして?」

「この拘束は……()()()()()()()しかしないんだけど……」


 何が起きたのかわからず困惑する言乃花に対し、額から尋常でない汗が吹き出しうろたえ始めるリズ。


 はたして誰が結界を破り、二人を拘束したのか?

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