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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第9話 幕を開ける新たな試練

 ヘリポートを後にし、冬夜の実家へ向かい歩き始めた一行。


「家までは一本道じゃから迷うことなどないぞ。昔はよく冬夜を連れて途中にある公園まで散歩しておったのう」

「じいちゃん、そこって家の近くにあった公園のこと?」

「そうじゃ、小学生の頃は学校が終わるといつも遊びに行っておったからのう。家に着くなり、ランドセルを放り投げてよくばあさんに怒られて……」

「じ、じいちゃん! 昔のことは言わなくていいから!」


 懐かしそうに語り始めた紫雲を顔を真っ赤にして慌てて止めようとする冬夜。


「なるほどね、好奇心が旺盛なのは昔からという事かしら?」

「ふふふ、昔から元気いっぱいだったんだね」

「そうじゃぞ! 冬夜は遊びに行ったら夕飯まで帰ってこないなんてのは日常茶飯事だったんじゃ。自分から勉強をするところなぞ見たことがないくらいでな、毎晩わしらに怒られて泣きながら宿題をやっておったぞ」

「へぇ……勉強嫌いは昔からだったのね」

「ちょ、ちょっと! じいちゃん、それ以上は言わなくていいって!」

「なんじゃ? 懐かしい昔話をしているだけじゃが? まったく……そんな動きでは儂を止められんぞ」


 冬夜が慌てて紫雲の口を塞ごうと背後から近づき手を伸ばすが虚しく空を切る。そのまま勢い余ってバランスを崩して転びそうになった。


「まったく見ておれん……もう少し落ち着いて行動せんか」


 顔から地面に激突する直前で紫雲に抱きかかえられる冬夜。


「あっぶね……じいちゃん、ありがとう。それよりもなんでみんなの前で俺の黒歴史を暴露し始めるんだよ!」

「はて? 何のことかさっぱりわからんのう……ワシは孫の成長が嬉しくてつい昔話をみんなに聞いてもらいたくなっただけなんじゃがのう」


 冬夜が詰め寄ると、目元を右手で覆いながらわざとらしく泣きまねをする紫雲。


「おじいさん、もういい加減にしてはどうですか? ()()()()()()()()()()も見苦しいですよ。それから冬夜も少し落ち着きなさい」


 ヒートアップしていく二人の様子に、見かねた雪江が釘を刺す。


「ばあさん、ちょっとからかって遊んでいただけじゃろうが……そんなムキにならんでも……」

「お・じ・い・さ・ん? そんなにお望みでしたら数々の黒歴史を映像付きで皆さまにお見せしてもよろしいんですよ?」

「ちょ、ちょっと待て……なんで映像に残っておるんじゃ!」

「あまりにイタズラばかりするからでしょう。何度言っても聞かないから皆さんに見て頂いて判断をゆだねようと思いましてね……」


 腕を組むと呆れた顔で大きなため息をつく雪江。すると今度は紫雲が真っ赤な顔をして詰めよる。


「そ、そんな映像を撮っているとは聞いておらんぞ! そもそも見せる必要なんてないじゃろうが!」

「そうおっしゃるなら普段からきちんと注意を聞いていれば良いのではありませんか?」

「いや、まあ、そうなんじゃが……」

「紫雲師匠、もう負けを認めましょう。相手が悪すぎますから……雪江師匠、その映像をこっそり見せて頂くことは可能でしょうか」


 紫雲のあまりの慌てぶりを見たレアが笑顔を浮かべながら二人の間に割って入ってきた。


「おい、レア! 師匠を裏切るのか!」

「何をおっしゃいますか? こんなチャンス……いえ、芹澤財閥の総力を使って師匠の黒歴史を永久保存しようなんてことは思ってませんよ?」

「こりゃ! 本音が漏れておるぞ! ばあさん、絶対コイツに渡すんじゃないぞ!」

「さて……どうしましょうか? おじいさんの態度しだいとしておきましょうか」


 黒い笑みを浮かべながら紫雲を見返す雪江。二人の様子を見て、お腹を抱えて爆笑しているレア。


「ほんとうに紫雲さんたちって面白いね!」

「ああ、あの二人は昔からあんな感じなんだよ。ばあちゃんには絶対逆らっちゃダメなんだ……」


 冬夜のもとに歩み寄ってきたメイと言乃花が話しかけてきた。


「へえ……そうなのね。面白いことを聞けたから、新学期が始まったら楽しみだわ」

「ちょっと待て、言乃花! それはどういう意味だよ!」

「あら、悪いようにはしないわよ。リーゼと共有しておくだけ……よ」

「猛烈に悪い予感しかしないんだが……」


 眼鏡越しに光る黒い瞳を細め、薄ら笑いを浮かべる言乃花に対し、天敵に睨まれた小鳥のようにぶるぶると震える冬夜。そして二人の意図が読めず、不思議そうに首をかしげているメイ。すると先ほどまで言い争っていた紫雲が話を打ち切るように大きな声をあげた。


「もうこの話はおしまいじゃ! ほれ、玲士くんが呆れて黙ってしまっておるではないか!」


 玲士が放った言葉を聞いた全員の視線が一斉に集まる。六人から少し離れた位置で俯き加減になり、右手を顎にあて考え事をしているように見える玲士。


「ん? ああ、申し訳ない。少し()()()()()()を感じたから全く話を聞いていなかった」


 顔を上げると奇妙なことを言い出した。


「気になる反応? 玲士、何を言っているの?」

「なんだ、母さんは気が付いていなかったのか? 上手く気配を消しているようだが、この先の公園を通り過ぎる時は気を付けたほうがよさそうだぞ」

「公園? 何のこと? 別に何の変哲もない……わけじゃないわ。向こうはやる気満々のようね」


 玲士の言葉を聞いたレアが公園の方角を振り返ると、すぐさま冬夜たちに向かって声をかける。


「言乃花ちゃん、いつでも動けるように準備して! 私と一緒に先陣を切るわよ。冬夜くん、メイちゃんが怪我しないように守ってあげてね。玲士、状況の分析と指示は任せたわよ」

「わ、わかりました……メイ、俺の後ろに隠れているんだ」

「うん、冬夜くんこそ怪我しないでね……」


 メイが冬夜の背後に隠れると言乃花たちに状況を伝える玲士。


「公園の中央付近に二人、動きはまだない。先に仕掛けるなら今がチャンスだ!」

「よし……言乃花ちゃん、先手必勝で行くわよ!」

「はい!」


 言い終わると同時に数十メートル先にある公園へ駆け出したレアと言乃花。



「……()()()()()()じゃろうかの?」

「どうでしょうか? 言乃花さんにとって厳しい試練になるとは思いますが……乗り越えて頂かないといけませんからね」


 飛び出していった二人を見つめながら話す紫雲と雪江。

 公園で待ち受ける人物と言乃花の試練とは?

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