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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第8話 雪江のお説教と隠された謎

 フェイの絶叫が宮殿内に響きわたっていた頃、芹澤の発言により大混乱に陥っている冬夜。


「じいちゃんたちがレアさんの師匠で観測者(ウオッチャー)? そんな素振りは今まで見たこともないけど……いや、まてよ……」

「冬夜くん? どうしたの?」


 心配したメイが声をかけたが、何かをつぶやきながらその場にしゃがみ込みむと頭を抱えてしまう冬夜。


「まったく……仕方がないのう。玲士くん、早く報告したい気持ちはわかる。しかし、話の順番が間違っておらんか?」

「うっ……た、大変失礼いたしました!」


 ため息を吐いた紫雲の鋭いまなざしが突き刺さり、一瞬胸を抑えると慌てて頭を下げる玲士。そこに電話を終えたレアが戻ってきた。


「まったく翔太朗のバカは……って、なんで玲士が頭を下げてるの?」

「まあ……ちょっとやらかしたことがあったんじゃ。全くお前ら親子ときたら……」

「は? 師匠? 話が全く見えないのですが、なんで私まで怒られてるんですか?」

「自分の胸に手を当てて考えてみることじゃな。思い当たる節がないとは言わせんぞ?」

「……ですから、お土産の件はさっきから謝っているじゃないですか!」


 事態が混沌としてきた時、三人を撃ち抜く一言が飛んできた。


「いい加減にしなさい! おじいさんもいつまで続けるつもりですか?」


 先ほどの笑顔とは打って変わり、能面のような表情で冷たい視線を向ける雪江の姿があった。


「物事は順を追って説明しなくてはなりません。それそれが好き勝手に話を進めてうまくいくと思いますか?」

「……」

「うまくいくはずがありません。玲士さん、あなたの研究は多くの人の役に立つ素晴らしいものですが、自分のことを話そうとするときはきちんと相手のいう事を聞きなさいと言われていませんか?」

「はい……その通りです……」

「レアさん、いつも真っすぐで誰よりも熱い想いを持ち、全ての物事に全力で向き合っていらっしゃいます。しかし、時には勢いあまって突っ走ってしまうこともあり、少し落ち着いて物事を見るようにと言われていませんか?」

「おっしゃる通りでございます……」

「おじいさん、冬夜が帰ってきてうれしい気持ちはよくわかります。久しぶりにレアさんはじめ、響の同級生が集まるというので張り切っていたのも知っています。だからといって、いつまでも子供のようにすねているのはいかがなものですか?」

「し、しかたないじゃろうが……バカ息子はいないが皆と顔を合わせる機会はそうそうないんじゃし……」

「おじいさん? いい加減にしないと……わかっていますね?」

「も、申し訳ない……」


 雪江から静かに立ち上るオーラに圧倒され、直立不動になるレアと紫雲。三人の顔をゆっくりと見渡すと、再び優しい笑顔に戻り、冬夜とメイに声をかける。


「冬夜、ごめんなさい。ちゃんと説明するべきだったのに、なかなか言い出せなくて……家についたら順を追って説明しますからね。メイさん、いつも冬夜を支えてくれて本当にありがとうございます。よければ学園での様子など教えてくれませんか?」

「ばあちゃん……わかったよ」

「私こそいつも冬夜くんに助けてもらってばかりで……はい! お話させてください!」


 冬夜が立ち上がるとメイと顔を見合わせて微笑み合う様子に安堵する雪江。すると、それまで無言で様子を見守っていた言乃花が口を開く。


「雪江さん、先ほど気になる事をおっしゃられていたようですが……()()()()()()()も集まると……私の両親もこちらに向かっているという事でしょうか?」

「あらあら……私も人のことを言っていられませんね。そうですよ、あいにく響はおりませんが明後日は全員が集合する予定です。もうすぐ瑠奈さんの命日ですので……」

「そうでしたか。両親からは何も聞かされていませんでしたので……」

「驚かせようと思って言わなかったのではありませんか? 学園のお友達と一緒に楽しんでいるあなたに余計な心配をかけさせたくなかったのでしょうね」

「……そう……でしたか……余計な心配?」


 考え込む様子を見せる言乃花に、雪江の言葉が重なる。


「久しぶりの帰省を楽しんでほしいという親心ですよ。そういえば、もう一人男の子が来ていると聞いていたのですが……たしか名前は……」

「あ、えっと……そうでした、急用ができたとか言ってどこかへ行ってしまいました!」


 慌てた言乃花が雪江の話を遮るように言葉を被せる。


「いや、一布さんは用事があって出かけたんじゃなくで言乃花がぶっ飛ばし……」

「冬夜くん、どうしたのかしら?」

「いや、だから一布さんは……」

「いい? 冬夜くんは何も見ていないの。用事があって出かけて行った、いいわよね?」

「ハイ……デカケテイキマシタネ……」


 笑顔で語りかける言乃花からの無言の圧力に棒読みで答える冬夜。


「ほんとに皆さん仲が良いのですね。さて、玲士さんも合流しましたし家に向かいましょうか。佐々木さんもご一緒にいかがですか?」


 少し離れたヘリの近くでこちらを見守っていた佐々木に声をかけた雪江。


「お気遣いいただきありがとうございます。大変恐縮ですが、まだ業務がありますので……後日、翔太朗様とご一緒に伺わせていただきたいと存じます」

「そうですか、お引止めしてしまってすみませんでしたね」

「いえいえ、お気になさらないでください。皆様をお見送りいたしましたら、私も出発させて頂こうと思います」


 雪江に対し、深々と頭を下げる佐々木。


「そうですか。それでは皆さん行きましょうか」

「そうじゃな、はやくお土産をチェックしなければいけないからのう」

「……おじいさん?」

「冗談じゃよ、真に受けることはないじゃろう……気は進まぬが、説明しないわけにはいかんじゃろうしのう……」


 紫雲が呟いた一言に場の空気が重くなり始め、慌ててレアが口を開く。


「ま、まあ詳しいことはお土産のおやつでも食べながら話しましょう。みんなの学園生活のこととかいろいろ聞きたいでしょうし……」

「そうじゃな、家まで五分も歩けば着くからのう。さて行こうかの」


 レアの言葉に合わせるように紫雲と雪江がヘリポートの出口に向かって歩き始める。


「じいちゃん、ばあちゃん……いったい()()()()()()()()()……」


 歩き始めた二人の姿を見つめ、誰にも聞こえないように呟く冬夜。


 なぜ親世代まで全員集合する事態になったのか……

 紫雲と雪江はいったい何を語るのであろうか?

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