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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第6話 観測者(ウオッチャー)の正体?

 全員の視線がヘリに集中した時、聞き覚えのある声がヘリポートに響き渡った。


「盛大な出迎えご苦労! 復活を遂げたプロフェッサーが到着したぞ!」

「あのバカ息子は……あの機体は使うなって言っておいたのに……」


 玲士の高笑いが響く中、怒りと呆れの入り混じった表情でレアがヘリを睨みつける。


「レアさん、すごく複雑な表情をされていますが……大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、冬夜くん。玲士の声を聞いたらちょっと頭が痛くなっただけだから……」

「レアさん、気分が良くなるまで少し休みますか?」

「メイちゃん、ありがとう。元気だから大丈夫よ、ただ……玲士とお話をしないといけないみたいね」


 心配する冬夜とメイになんとか笑顔で答えるレア。その間にも芹澤を乗せた機体は上空を旋回しながら着陸態勢に入り始める。


「レアさん、今度は私が結界を張らせていただきます」


 颯爽と全員の前に歩み出た言乃花が魔力を集中させるため、両手を体の前に突き出した時だった。


「言乃花ちゃん、その必要はないわよ」


 言乃花の隣に現れたレアがそっと左手を重ねて止める。


「ですが……このまま着陸したら危なくないですか? せめて私の風魔法で相殺しないと……」

「意気込んでいるところ申し訳ないけれど……何かおかしいと思わない?」

「おかしい? あっ! エンジンの稼働音がほとんどしていない……」


 レイスを搬送する際のドクターヘリはレアの結界のおかげで何事もなかったが、離陸時のエンジン音はかなりの轟音を響かせていた。しかし、上空に現れた機体からは稼働音が一切聞こえてこない。そして、ある異変に気が付いた言乃花。


「周囲の風が一切乱れていない? そんなことあるはずが……それにこの魔力の反応はいったい?」

「さすが言乃花ちゃんね。私は専門じゃないから詳しい説明はできないけど、あの機体は玲士の研究している技術を応用した試験機なの」

「副会長の実験テーマですか? そういえば魔科学とか言っていましたね」

「そう、古に封印されたといわれる技術『魔科学』よ。芹澤グループが総力を挙げて調査、研究しているけれど、いまだに大部分が謎に包まれたままなの……()()()()()()()()()()()()のかも……ね」


 ふいに物悲しげな顔をすると天を仰ぐように見上げるレア。光が当たると細められた瞳にうっすら涙が浮かんでいるようにも見える。


「レアさん? どうされましたか?」

虚空記録層(アカシックレコード)に施された最後の封印を解くには()()()()が必要。一つは魔科学の完成……そして、『()()()()()()』というルナの遺した言葉の意味は……」

「虚空記録層が封印されている? 鍵は魔科学?」

「えっ、あっ、なんでもないのよ!」


 言乃花の言葉で正気に戻ったレアは慌てて目元を拭い、わざとらしく大きな声で話し始める。


「うちのバカ息子が乗ってきたヘリはまだ開発途中の実験機なの。いろんな技術を投入していて、いざという時には少しの間なら無音・無風で運行ができるのよ。ただ、それには魔力が必要で……」


 冬夜たちが突如始まったレアの説明に耳を傾ける中、先ほどの言葉に引っ掛かりを覚える言乃花。


(魔科学と虚空記録層には明確な関係がある……でも、妖精たちが執拗に冬夜くんとメイちゃんを狙う意図は? クロノスが執拗にイノセント家を襲う理由がわからない……()()()()()()()()()()()()()()とはなんだったの?)


 様々な考えが駆け巡り、思わず動きを止めていた言乃花に優しい声がかけられた。


「また難しい顔をしていますね。もうすぐお友達も着きますし、笑顔で出迎えてあげませんか?」

「そうですね……あの、落ち着いたらまたお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「私のような老いぼれでよければいつでもお聞きしますよ」

「ありがとうございます」


 雪江の言葉を聞いた言乃花の表情が和らいでいく。すると、タイミングを見計らったように紫雲が声を上げた。


「さてと、無事に着陸できたようじゃな。わしのお土産……いや、玲士くんを迎えに行こうではないか!」

「師匠、本音が漏れてますよ」

「手厳しいのう。……ものすごく楽しみにしていたんじゃぞ! 誰かさんが忘れなければな」

「いや、それは本当に申し訳ありません……っていつまで言われ続けるんですか?」

「さあ、どうじゃろうな? ほれ、食べ物の恨みは怖いというじゃろう?」

「勘弁して下さいよ、師匠」


 冷やかすように話す紫雲に対し、肩を落としてうなだれるレア。


「冬夜くんのおじいちゃんって面白い人だね」

「そうだろ? ほんと甘い物には目がないんだ、じいちゃんは……」


 それぞれが談笑しているうちに、着陸したヘリの扉が開いて白衣に身を包んだ玲士が軽やかに降りてきた。


「盛大な出迎えを感謝する! 偉大なるプロフェッサーが参上したぞ!」

「何が『偉大なるプロフェッサー』よ……玲士、ちゃんと体は治ったんでしょうね?」

「もちろん完治した。そうだ、母さんがいつも通りお土産を忘れていくと思ったので追加で手配しておいたぞ」

「まさか息子にまで言われる日が来るとは……でも、追加のお土産を用意するなんてやるじゃない」

「もっと褒めてくれていいぞ?」

「調子に乗るんじゃないの! それになんで開発途中の機体に乗ってきたのよ?」

「早く合流したかったからな。それに新機能を搭載したから試運転も兼ねて動かしてみたのだ」

「新機能を搭載した? そんな話は聞いてないわよ!」

「おかしいな? 父さんが『俺が伝えておくから任せとけ』と言っていたのだが?」

「……ごめんさない、ちょっと翔太朗と連絡を取らなきゃいけないことができたわ」


 素早くスマホを取り出すとどこかへ連絡をするレアを横目に、冬夜たちに向き直る玲士。


「皆、心配をかけたな。じっくり休養を取ったので完全回復したぞ」

「元気そうで何よりです。お帰りなさい、副会長」

「お元気になられて良かったです、プロフェッサー芹澤さん」

「無茶だけはしないで下さいよ、副会長」


 笑顔で声をかける冬夜たちに笑顔で答える玲士。次の瞬間、紫雲と雪江を見つけると駆け寄って深々と頭を下げる。


「大変ご無沙汰しておりました。()()()()()()()()についてレポートが整いましたので、目を通していただきたいと思います。そして、ご意見をいただけないでしょうか、観測者(ウオッチャー)様」

「え? じいちゃんたちが観測者? どういうこと?」


 玲士の発した言葉に驚きを隠せない冬夜。

 紫雲と雪江が謎の観測者(ウオッチャー)なのか?

 二人の隠された一面が明らかになろうとしていた。

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