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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第4話 お茶目な紫雲と明らかになる過去

「どうしたんじゃ? 二人とも何やら難しい顔をしておるが、困りごとでもあったかの?」


 言乃花とレアの前にいきなり音もなく紫雲が現れて声をかける。


「いつの間に……」

「師匠……私は慣れているので驚きませんが、冬夜くんたちが見たらビックリしますよ……」


 固まっている言乃花の隣で呆れた表情を浮かべているレア。目の前には子供のような笑顔を浮かべている紫雲。


「ほら、冬夜くんもメイちゃんも唖然としているじゃないですか!」

「いかんいかん、ちょっとやりすぎてしまったか? ちょっとした遊び心だったのじゃが」

「……今まで()()()()()()()()()()はありますか?」

「あるわけないじゃろう! ほんの少しいたずら好きな優しいおじいちゃんじゃぞ」


 悪びれる様子もなく答える紫雲。レアが助けを求めるように視線を雪江に向けるが、口に手を当てて困ったような笑顔で小さく首を左右に振る。


「……すっかり忘れていたわ……ほんとに変わってないですね」

「何を言うか! 『さぷらいず』と言う言葉を知らんのか? これだからお前も響も頭が固いと言っておるんじゃ。翔太朗くらい柔軟でぶっ飛んだ発想をもっておらんと人生を楽しめんぞ」

あのバカ(翔太朗)のせいでこれまで苦労してきたんですよ! 最近は息子の玲士まで一緒になって……」


 最後の方は聞き取れないくらい小声になり、大きなため息を吐きながらしゃがみ込むレア。その様子を見て我に返った言乃花が紫雲に問いかける。


「冬夜くんのおじいさん……いや、レアさんの師匠とお呼びするべきでしょうか?」

「紫雲で結構じゃよ。健太郎と弥乃は元気にしておるか?」

「ありがとうございます、両親ともに元気にしております」

「そうか、二人に伝えてくれんかの? 道場の経営で忙しいとは思うが、たまには顔を見せに来い、と。それにしても小さい頃は弥乃の後ろに隠れとった子がこんなに大きく立派になったとは……時が経つのもはやいのう」

「承知いたしました。……以前お会いしたことがありましたでしょうか?」


 紫雲は少し顔をあげると懐かしむように目を細め、遠くを見つめたまま黙ってしまった。言乃花がどう声をかけようか迷っていると、冬夜とメイと一緒に歩いてきた雪江が声をかけた。


「ビックリさせてごめんなさい。覚えていないのも無理ないわね、まだ冬夜が二歳になったくらいの時だったかしら? ご両親と一緒に来てくれたのよ」

「そうだったのですね、全く覚えていなくてすいません……」

「まだ小さかったのですもの、無理ないわ。幼かった冬夜と遊んでくれて本当に助かったのよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ、ばあちゃん! そんな昔に言乃花と会っていたのか?」


 雪江の言葉に驚きの声をあげる冬夜。


「あなたは小さすぎて覚えていないでしょうね。言乃花さんだけじゃなくて、レイスくんも玲士くんも一緒に遊んでもらったのよ」

「マジかよ……全く覚えていないんだけど……」


 次々と明らかになる出来事に鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まっている冬夜。


「そうだったんですね。あれ? 冬夜くん、どうしたの?」


 雪江の話を聞いていたメイが冬夜の様子に気が付いて声をかける。


「メイちゃん、大丈夫よ。ちょっとビックリしているだけだから。少し時間が経てば落ち着きますよ」

「そうなんですね、もっとお話を聞きたいです」

「お茶でも飲みながらみんなでゆっくり話しましょうか、瑠奈さんにもご紹介したいですから」

「冬夜くんのお母さんですね! ぜひご挨拶させてください」


 メイと雪江が楽しそうに話していると紫雲が大きく咳払いして仕切り直す。


「さてと、このまま立ち話をしていても何じゃからそろそろ移動しようかの。呼んでいたドクターヘリも到着するみたいじゃぞ」


 紫雲が視線を動かした東の上空にこちらへ向かってくるヘリが見えた。


「ようやく来たみたいね。危ないから結界を張るわ」

()()()()()()()……といいたいところじゃが、たまには弟子の成長を見守るとしようかの」

「師匠のお手を煩わせるわけにはいきません……」


 レアが全身に青白い魔力を纏うと両手を体の正面に突き出す。すると冬夜たちをドーム状の薄い膜が包み込んでいく。


「ほう、必要最小限の魔力に抑えながらも結界の強度と構造は手を抜いておらぬ。よく鍛錬している証拠じゃな」

「ありがとうございます。昔は魔力制御がうまくいかず、よく怒られましたから……」

「魔力がずば抜けて高いからこそ、無駄な動きが多くてオーバースペックな魔法に頼りすぎておったからな。その癖を直すのには苦労させられたもんじゃ」


 紫雲が懐かしむように話す様子に苦笑いすることしかできないレア。そのうちに医療チームを載せたヘリが無事着陸する。オレンジ色の作業服を着た四人組の男性が駆け寄ってきた。


「レア様、お待たせいたしました。患者様はどちらにいらっしゃいますか?」

「お疲れ様、あそこに寝かせているレイスくんよ。気になる点はさっき連絡した通りよ……できる限りの応急処置はやっておいたけど、念のためにレントゲンと精密検査をしておいてくれる?」

「承知いたしました。佐々木様からすべてご指示を頂き、病院も受け入れ体制を整えております」

「さすが佐々木ね、任せておいてよかったわ」

「それではレイス様を病院へ搬送いたします」


 一礼すると統率された動きでレイスを担架に乗せ、ヘリへ運び込む。するとリーダーらしき一人の男性がレアのもとに駆け寄ってきた。


「これからレイス様の搬送を開始します。検査結果が出るまで少し時間がかかりますが、随時ご報告を入れさせていただきます」

「頼んだわよ。何もないとは思うけど……」

「それから佐々木様よりレア様へご伝言を預かっております」

「佐々木から? 何かあったのかしら?」


 リーダーの言葉に不思議そうな顔で聞き返すレア・


「『レア様、保養所に厳重に梱包された箱がございましたが、お忘れ物ではないでしょうか? お伝えすることが遅くなり申し訳ございません、後ほどお届けに伺います』とのことです。それでは我々は失礼いたします」


 一礼すると他のスタッフが待つドクターヘリへ乗り込むリーダー。


「……ヤ、ヤバい……忘れていたわ……」


 滝のような汗を流しながら顔面蒼白になっているレア。その様子を見た紫雲が満面の笑みを浮かべながら声をかける。


「どうしたんじゃ? まさか頼んでいたものを忘れてしまったとかではないじゃろうな?」

「いえ、あの、その……」


 冷や汗が止まらないレアと目が完全に笑っていない紫雲。

 紫雲が頼んでいた物とは何だったのだろうか?

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